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不器用な片想い  作者: 長月マコト
【本編】 第4章 - 5/29
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side Daichi - 18

「ねぇねぇ、開発部ってどんな仕事してるの?」

永野が聞いてくる。

「オレはプログラマーだったからな。SEが作ったプログラムの設計図を見て、その通りにプログラムを書くのが仕事だったんだ。それが担当のSEによって設計図がわかりやすいとかわかりにくいとかあってさ、結構大変だったんだぜ?」

「文章が下手で、何を言いたいのかよくわからない、って感じ?」

「んー、まぁそんなもんだ」

さすがに、プログラム仕様書の話をしてもわかんねーもんな。

それよりも、今は、永野といることを楽しみたい。

「ふーん……。河合君も同じような仕事してたの?」

「あ、正紀はそのSEだよ。一緒のプロジェクトになったことはねーけど」

「河合君は、そういうの書くの上手そう」

「らしいな。正紀と同じチームだった他のプログラマーが言ってた」

「やっぱりねー。几帳面そうだもん」

「そうなんだよ。性格出るんだよな」

オレの言葉に相槌を打ちながらも、永野はサラダを口に運ぶ。

まったく。器用なヤツだ。

いつもと同じ自然体の永野。

2人っきりっていう状態に、内心緊張していたオレの気持ちが解れて行く。


そんな風に思いながら話をしていると、店員がまた新しい料理を持って来た。

入れ替わりで、空いた皿を永野が店員に渡す。

細っせぇ腕。

「お前、そんな腕でよくあんなに強いショットが打てるな」

もちろん、テニスの話だ。永野のテニスは上手すぎて、とてもじゃないが敵わない。

女性ならではの技巧ももちろんだが、パワーテニスもできるのがコイツの強みだ。

「私、結構、筋肉あるんだよねー」

そう言いながら、永野はテーブルの上に腕を伸ばした。

オレは、つい、その二の腕あたりを掴んでしまう。

やっぱり、細せぇ。もうちょっとで、オレの親指と中指が一周しちまう。

「細っせぇな。こんな細ぇのに、どこにあんな力があんだか」

「こないだ、電器屋さん行ったんだけどね。ほら、ああいうところって、健康グッズコーナーってあるじゃない。なんとなく、体脂肪率量ったんだよね」

永野が自分の腕を眺め、思い出しながらのように言う。

「おぉ」

「そしたらね、体脂肪率、15パーセントだった」

「マジで? それって男性並みじゃね?」

「そうなの?」

永野の目が丸くなった。

「一般的な成人女性は、20~24パーセントだって聞くけどな。男で10~15パーセント」

「そーなんだ」

「まぁ確かに、柔らかくはねーな」

オレは掴んでいた手で、永野の腕を揉んでみた。

女性独特の柔らかさってヤツはほとんど感じない。それでもオレは全然かまわねーんだけど。

「うるさいなぁ」

永野が慌てたように腕を引っ込めた。オレはつい笑ってしまう。

腕を掴まれた時点で気づけ。

「何よ?」

「いや、なんでもねーよ」

永野の目線が、オレの手元を捉えた。

「浅倉、まだ飲むでしょ?」

「ん? おぉ」

オレのグラスはほとんど空だ。

永野が暖簾から顔を外に出した。店員を呼んでるんだろう。

そんなん別に気を使わなくてもいいのに。

それよか、永野と話してたいのに。

っつーか、オレを酔わせたら自分自身が危なくなるかもしれないとか、全然考えてねーよな?

オレはメニューを開いて、さっさと自分の飲む酒を決めた。

「お前も、何か飲む?」

ソフトドリンクのページを開き、永野にメニューを渡す。

永野のウーロン茶も空になってるからな。飲めねーヤツは、やっぱりちょっと可哀想だ。


永野がメニューを見ながら考えている間に、店員が来てしまった。

とりあえず、オレは自分の酒を注文する。

店員はオレの注文をメモに取ると、永野の方を向いて待った。でも、永野は顔を上げない。

コイツ、もしかして気づいてねーとか?

「永野は?」

オレは声をかけた。永野が、え? という表情で顔を上げる。

やっぱり気づいてなかったな、コイツ。疲れてんのかな。

「あ、ごめん。じゃあ……この『柚子水』っていうの、お願いします」

永野が告げると、店員は笑顔で会釈して、暖簾の向こうへ消えた。

オレは永野を窺うように覗き込む。

「お前、大丈夫か? 疲れてんじゃね?」

「ううん、そんなことないよ。だいじょーぶ」

永野は笑顔で言った。

屈託のない笑顔だけど……、本当に無理してるんじゃねーだろうな?

「ならいいけど。お前、ただでさえ仕事が忙しそうだからな。いろんなヤツにいろんなこと頼まれてるだろ? オマケに、今度は鈴木さんの2次会受付まで」

「それは浅倉だって一緒じゃん」

「それは……」

オレが口を開きかけると、さっきの店員が飲み物を持って戻って来た。

オレたちの前にそれを置くと、再び暖簾の向こうへ消える。

永野は嬉しそうに柚子水のグラスに口を付けた。


オレが鈴木さんの2次会の受付を引き受けたのは、お前がやるって言うからだよ。

鈴木さんのことが好きなお前が、辛い思いするってわかってるのに、一人にしておけねーんだよ。

放っておけねーんだよ。

それくらい、わかれよ。


オレは、新しい酒を一口だけ飲むと、口を開いた。

「――お前さ、本当に、いいのか?」

「何が?」

永野がキョトンとした顔で聞く。

「いや、だから、鈴木さんのヤツ」

「え?」

「2次会の受付。本当にやるのか?」

「は?」

お前なぁ……いい加減、オレの言わんとすることくらい、気づけ!

「だから、大丈夫なのかって」

オレ自身がだんだんワケわからなくなってきた。

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