水巻龍歌①
「じゃあな龍歌。またなんかあったら連絡する。あと、昼飯ちゃんと食えよ大きくなれないぞ。」
「はいはい。またね。」
もう飽きたといった表情で龍歌は神瀬のいじりを受け流す。
テキトーに大学で時間潰して虎太郎たちと合流しようかしら。まだ授業やってるわよね。
水巻龍歌は神輿谷大学の2年生であり【レンタル大学生】の一員である。
【レンタル大学生】とは神輿谷大学の生徒たちで作られたグループであり、神瀬の探偵業を助ける組織だ。言わば神瀬探偵事務所の2軍組織である。
仕事内容のほとんどは神瀬ではできない潜入捜査や、多忙な神瀬の代わりの調査などである。
【レンタル大学生】は2年前に多忙な神瀬のためにと寺坂が発足した組織である。
メンバーは【レンタル大学生】のメンバーによる推薦と寺坂による厳しい審査によって決まる。その審査は思った以上に厳しい。そのうえ勧誘は強引だ。【レンタル大学生】は暗躍する組織のため審査は秘密裏に行われ、合格したら問答無用で組織入り。
また神瀬の命令は絶対であり、休日だろうと深夜だろうと指令があれば強制出勤である。
それもこれも寺坂の神瀬の役に立つためならという思いによるものだ。
水巻龍歌もそんな被害者のひとりである。
ここまで【レンタル大学生】のブラックな面を伝えてきたがメリットも当然ある。高額な給料に加え神瀬のコネにより大手企業への就職も可能だ。
龍歌に目立ったスキルというものはない。正直勉強も運動も中の下といったところだ。そんな彼女が【レンタル大学生】に入れた理由。それは圧倒的な可愛さ、その一点に尽きる。
子猫の様な顔立ちに艶やかな髪、引き締まったボディーラインと男を引き寄せる天性の美貌を持つ。なんなら右目はルビー、左目はダイヤのようなオッドアイというおまけつきだ。
龍歌を神瀬たちは交渉の切り札として使っている。こんな美少女に上目遣いでお願いされたら大抵の男は断れない。いまや龍歌は神瀬たちにはなくてはならない存在だ。
とりあえず大学の図書館でも行こうかしら。
水巻龍歌は大学に向かって電車に乗り込んだ。