新生活の始まり
春の陽ざしが心地よく差し込む中、アパート賃貸の窓口は今日も賑わっていた。様々な事情を抱えた人々が訪れ、夢の住まいを探し求めていた。
その日は特に私にとって特別な日だった。D本さん、20代の若者が、親元から独立し新しい生活を始めるために、私のもとにやってきたからだ。彼の隣には、温かい笑顔を浮かべたお母様がいた。D本さんは少し緊張した面持ちで、母親の傍に寄り添っていた。
私も初めての契約を進めるということで緊張していた。上司が遠目から見守る中、希望の地域にある物件をいくつか紹介した。D本さんの目が輝くのを見て、私も嬉しくなった。間もなく、彼の心に響く部屋が見つかると、安心感が二人の間に流れた。
契約に移ると、上司があらかじめお客様に私が初めて契約を進行することを説明してくれた。D本さんもそのことを理解してくれたのか、温かい目で私を見守ってくれた。彼とお母様の優しさが、私の緊張を和らげてくれた。
必要な書類にサインをしてもらい、保証人としてお父様の同意を確認するために電話をかけた。お父様の声が受話器越しに聞こえたとき、安心感が私を包み込んだ。後日、契約書にサインをしてもらうことを約束し、無事に契約は完了した。
入居日は2週間後。引っ越しの日程も当店で手配することになり、必要な手続きの説明をして終わった。D本さんは新生活への期待と不安が交錯した表情で、私の話に耳を傾けていた。
退店の際、D本さんが振り返り、笑顔で言った。「対応ありがとうございます。お疲れ様でした。これからも頑張ってください。僕も頑張ります。」その言葉は、私の心に温かな光を灯してくれた。
大人も子供も、何事も初めてのことは一年生だと、私は改めて思った。D本さんの新生活が素晴らしいスタートを切ることを願いながら、私も自身の成長を誓った。新たな一歩を踏み出す彼の姿を見送りながら、私は自分自身ももっと精進しなければならないと強く感じた。