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不動産の夢と人情

ある静かな午後、私はアパート賃貸の窓口で日々の業務をこなしていた。様々な事情を抱えた人々が、私のもとを訪れ、部屋を探していた。その中には、物件のオーナーとの関わりが深い、特別な出来事が待っていた。


U井さんは50代の男性で、私たちの管理する物件のオーナーの1人であった。彼とのお付き合いは長く、私が入社する前から続いていた。彼の親の代からの関係であり、私たちにとっては非常に貴重な存在だった。


数年前、U井さんは先代から代替わりし、オーナーとしての道を歩み始めた。しかし、どうにも自営が向いていないのか、当店の社長と頻繁に面談を重ねている姿を見かけた。彼の顔には不安の色が浮かんでいた。金銭的な困窮が伺え、彼の心に重くのしかかる問題が隠れているようだった。


個人で所有するアパートのオーナーには、年に一度、確定申告を行う義務がある。しかし、U井さんはその手続きをスムーズに行うことができず、申告漏れや未申告の状態が続いていた。その結果、税金や様々な費用が未納となり、彼は首が回らなくなってしまった。

そして彼は当店の社長に相談に来たのだった。


社長はU井さんの苦境を知り、彼の当店では未管理の物件を買い取ることで、生活の立て直しを手助けすることを決めた。大きなお金が動くため、社長は自営に必要な知識や手続きについて、丁寧に説明していた。U井さんの未来を見据え、彼を支えるための計画が練られていく。その中には、今回、売買で得る収入では足りない金額は個人的に貸す事を提案しており、U井さんが得る家賃収入からの少しずつ返済していく。という案も含まれていた。


私は、その面談の様子を横耳で聞きながら、U井さんの困難を理解し、彼の経験から多くを学んでいた。アパートのオーナーとしての責任は重く、必要な手続きを把握していなければ、思わぬ負債を抱えることになりかねないのだと痛感した。


U井さんは、本来であれば先代から受け継いだ何棟もあるアパートで不労所得を得て、悠々自適な生活を送るはずだった。しかし、無知が彼を苦しめていた。彼の未来に良い方向へ進むことを願いながら、私は自身もいずれアパートオーナーになるかもしれないという夢を抱くようになった。


社長の懐の深さに触れ、彼が入居者だけでなく、オーナーに対しても人情を持って接していることを改めて実感した。

彼の背中を追い続けたいと思った瞬間だった。


不動産を自身で持つことの難しさはまだ理解しきれていないが、私はこれから勉強を続けていく決意を固めた。U井さんの経験を胸に、夢の実現に向けて一歩ずつ進んでいこうと思った。

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