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新たな一歩

朝の静けさを破るように、事務所の電話が鳴り響いた。受話器を取ったのは、担当の私だった。電話の向こうには、シェルターの職員がいた。「ご主人からの暴力で避難してきた方がいらっしゃいます。これからそちらに伺ってお部屋を紹介していただけませんか?」


その言葉に、事務所内は一瞬ざわめいた。心が重くなるような緊張感が漂う。急いで部屋の確認をし、必要な契約書類を準備する。私たちの会社は、当日入居が可能で、保証人がいなくても社長との面談を通じて契約ができるという、少し風変わりなスタイルを持っている。


数分後、A子さんが事務所に現れた。彼女の顔は痛々しいほど腫れていて、見るからに辛い状況がうかがえた。心の中で息を飲みながら、彼女の目を直視するのがつらかった。


「離婚を前提に部屋を探しています。生活保護も申請するつもりです…」彼女は小さな声で話し始めた。保証人を頼むことができない事情があることも、私にはすぐに理解できた。


数件の物件を紹介し、彼女はようやく部屋を決めた。賃貸契約を結んだ後、社長との面談が始まる。A子さんは、涙を流しながら自らの悲しい過去を語った。親兄弟はすでに亡くなり、夫以外の人とは関わりを持たず、日常的に夫の暴力に悩まされていたとのこと。命の危険を感じ、シェルターに避難し、相談員の助言で部屋を探す決断をしたという。


社長は彼女の話を静かに聞き、穏やかな声で言った。「人生の立て直しに、頑張ってほしい。」


その言葉を聞いたA子さんの表情が、一瞬で安心に満ちたものに変わった。「ありがとうございます」と彼女は深くおじぎをし、涙をこらえながら微笑んだ。


こうして、A子さんは無事に新しい部屋を借りることができた。この新たな一歩が、彼女の人生を前向きに変えていくことを心から願った。彼女には、もう一度自分の人生を取り戻す機会が与えられたのだ。


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