若さゆえ2
ある晴れた午後、私はアパートの賃貸窓口で日々の業務をこなしていた。毎日、さまざまな事情を抱えた人々が訪れ、私のもとに新たな物語が持ち込まれる。その中でも、特に印象に残ったのはL香さんという若い母親だった。
彼女は20代の女性で、先日、母娘で新しいアパートに契約を交わしたばかりだった。お引越しも無事に終わり、彼女たちの新生活が始まった頃、同じアパートの入居者から苦情の連絡が入った。心配しながら、私はその内容を聞くことにした。
どうやら、契約時に懸念されていた騒音トラブルが早くも現実のものとなったようだ。連日、深夜に友人たちを呼んでのどんちゃん騒ぎが行われているという。お子さんのことも心配だったが、まずはL香さんに連絡を取り、状況を確認することにした。
電話がつながった瞬間、彼女は少し驚いた様子で応答した。「友人が遊びに来ていただけで、うるさくはしていないんです。」
私は頭から決めつけて話すわけにはいかないと考えた。まずは、集合住宅の夜間のお約束について再度説明し、やんわりと注意を促した。彼女も理解してくれたようで、その後の様子を見守ることにした。
しかし、数日後、再び同アパートの入居者から「相変わらず夜中にうるさくて寝れない」との苦情が入り、両隣や2階の入居者からもお叱りを受ける始末だった。私はどうしたものかと悩みながらも、当店のルールを思い出した。集合住宅の約束事を守れない場合、近隣トラブルを避けるためにお部屋の契約を解除することもある。
できれば、縁あって選んでいただいた物件で長く住んでほしい。その思いから、再度L香さんに注意を促したが、数日経つと再び苦情が入った。何度もお願いしたが、約束事を守ってもらえないため、私はこのままでは規約違反になりかねないことを、厳しく伝えざるを得なかった。
その瞬間、彼女の声には明らかにムッとした様子が感じられた。「わかりました。じゃぁ今月で退去します」と彼女は言い放った。その言葉に、心のどこかで痛みを感じた。数日後、彼女は淡々と部屋を開け渡し、どこか別の場所に引っ越していった。
結局、彼女の入居期間はわずか3ヶ月ほどだった。お子さんを抱え、安定した生活を送ってほしかったが、まだ若いL香さんには当店のルールが煩わしかったのかもしれない。彼女とお子さんが、どこかで落ち着いた生活を送れることをただ祈るばかりだった。新たな物語が始まることを願いながら、私は窓口で次の訪問者を待つのであった。