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第二席:チート能力を貰おう

「どもー、異世界 航(いせかい わたる)です」

異世界 拓(いせかい ひらく)ですぅ」


「二人合わせて」

「「ワタル&ヒラクです!」」


「なぁワタル、主人公が転生するとき色んな力を貰えるじゃんか」

「チート能力、ってやつか」


「そう。特に神様の手違いで死んだときは、その弱みに付け込んで強力なヤツを沢山付けるように強請(ゆす)るよな」

「強請るかどうかは知らないけど、そういうイメージはあるわな」

「じゃぁ俺もやってみよう」



「まだ納得いきませんか、ヒラク様」

「昨日間違いで死んで一日放置され、今日迎えに来たから予定通りってどう考えてもおかしいだろが」


「そう言われましてもねぇ。今日の大食い大会はカブトムシのヒラク様が優勝され、後に喰い過ぎでお亡くなりになりましたので、何とか世界の調和は保たれましたし」

「カブトムシがどうやってステーキ喰い過ぎたんだよ」


「神の力は偉大なのです」

「それなら俺を生き返らせるくらいのことはできただろうが」


「神の力にも限界はあります」

「自分たちに都合のいいことばっかり言いやがって」


「しかし、ここで私とこんな話ができるのもスサノオ様の恩情ですよ。普通なら問答無用でデフォルト対応です」

「脅すつもりか?俺の方は出るとこ出てもいいんだぜ?」


「とはいえ二名のイセカイヒラク様は予定通りトラック事故と大食いで死んだので帳簿上は何の問題もない状態ですし、あまり騒いでも益はないかと」

「人間とカブトムシが入れ替わってるのにか!?」


「神にとっては虫も人間も変わりません。どちらもただの魂の容れ物ですから」

「究極の上から目線」


「それに女に振られた末に大食いで腹を壊して死んだ方が良かった、などと声高に主張するのもアレでしょう」

「な、なんて黒い笑顔なんだ……」


「まぁこちらにも引け目があるのも事実ですし。スサノオ様からもある程度望みを叶えてやれとは言われていますから、お話くらいは聴きましょう」

「ちっ……まずそのデフォルトでの対応ってのを教えてもらおうか」


「死亡者は記憶と魂を分離され、記憶はエネルギーに変換されて世界を支える力となります。記憶=功績が大きいほどその魂の価値は上がり、より大きな功績を立てられるような地位に立つ者に転生できるでしょう。あなたの魂は……とりあえず倉庫に放り込まれて出番が来るまで待機ですかね。次はトンボくらいにはなれるかも」

「扱いが雑すぎる。他のオプションは何がある?」


「神の誤りといっても一日違いだし、そもそもその神の予定にすらなかった信号無視が原因だし、あまり大したことはできませんよ」

「なんとか記憶を保ったまま転生させてください」


「いきなり土下座されましても。そうですね、地球に戻るなら森の王者ヒラク様の後継者としてはいかがでしょう?」

「大層な二つ名で呼んでるけど、それってカブトムシに転生だよな?」


「はい、大食い大会優勝のネームバリューもありますし、身体能力や外骨格の強度を三倍にするくらいの加護は付けられますので無双できますよ」

「昆虫界最強でもカラスやタヌキに喰われるようじゃ意味ないし、何とか人間にしてくれよ」


「贅沢ですねぇ。スサノオ様の管理しているエリアでは……ここはどうです?文明進度は中世ヨーロッパ並みの世界で魔族の侵攻をギリギリ凌いでいるもののいつ崩壊してもおかしくないという、なかなかのハードモードですが」

「なるほど、そこでチート能力を持った俺が世界を救う勇者様ってわけだな!」


「いえ、単なる村人Aです。まぁ何を目指すのも自由ですけど」

「うぅ、せめて魔法を使えるようにしてください」


「面倒くせぇな。今日は忙しいってのに」

「だんだん態度が尊大になってきやがった」


「これでどうです?カースシリーズ、しかも四種類」

「呪いの術か。なんだか凄そうだぞ」


・カース オブ ティース

  食事や会話をするときに高確率で唇・頬・舌を噛み、口内炎ができる


・カース オブ コーナー

  障害物を避けて通過するとき高確率で足の小指をぶつける


・カース オブ パスト

  戦闘中に高確率で黒歴史を思い出し、恥ずかしさのため行動が鈍る


・カース オブ ディッシュウオッシング

  常に指先や手にササクレやアカギレが発現し、特に水仕事に支障が出る


「破格の提案ですよ?」

「……いくらなんでもショボすぎないか?」


「ま、余りものだし」

「え?なんて?」


「いえ、別に。でも外れスキルだと思われていたものが実は大当たり、って転生ものの定番でしょう?」

「ということは、この能力には隠れた力が?」


「ふふっ」

「失笑された!?」


「失礼しました。お詫びとして特別ボーナスの言語の理解をお付けします」

「詫びが必要なほどの失笑だったのか」


「もう時間がありません。さぁ倉庫行きか、カブトムシか、異世界転生か、すぐに選んでください。はい、サン、ニィ、イ――」

「わ、わかった。転生で頼むわ」


「承知しました。それでは行ってらっしゃいませ。……ま、あの世界じゃ長生きはできそうもないし、これで私とスサノオ様の立場は安泰かな、と」

「今なんて言った!?てめぇ騙しやが――」

「よき異世界ライフをお祈りしております」


――幕――

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