プロローグ:第零席
お好きな芸人さんの掛け合いをイメージしてお読みください。
「【航】、いよいよ俺たちデビューだな」
「緊張するわー」
「ネタ合わせも完璧だし、大丈夫だよ」
「【拓】の度胸だけは満点だよな」
「行くぜ!」
「どもー、異世界 航です」
「ナツキルノーだ」
「あースバルじゃなくてね、ってお前なぁ、どうしてそう要らんアドリブぶっ込んでくるかな。何が『ネタ合わせも完璧』だよ!それに全然受けてねぇし」
「受けが悪いのは客のせいだろ」
「お客様を敵に廻す暴言が酷い。しかも一流企業と現代日本の暗黒神殿・玉打ち賭博のお手付きキャラに喧嘩を売るとは」
「ヤバイか?」
「あぁ、どんな刺客が送り込まれて来るかわからんぞ」
「でもスバルって言ったのはお前――」
「相方がボケたらそれがどんなに詰まらなくてもツッコむのが私の仕事だろうが。私は悪くない!」
「クッ、これは無かったことにするしかないか」
「どうした?なにをして――そ、そのごついナイフは!?」
「そう、アレだ。――死に戻り!」
「うわっ、危ねぇ!お前、あのとき失くしたって言ってたくせに!」
「さっき楽屋で見付けたんだ」
「白々しいわ」
「まぁ落ち着けよ。ちょっと時間を戻すだけだからさ」
「だいたい死に戻りってのは自分が死んで戻る方法だろう?」
「こいつの権能は殺した相手の死に戻りに乗れることだからな。著作権的にもイケるんじゃないか?」
「どの口がコンプライアンスを語ってんだ!」
「痛くしないからおとなしくしてろ。テアッ!」
「うわっ!刺されば痛いに決まってるだろ!」
「二人で幸せになろうぜ。セイッ!」
「くっ!しかしこいつ的確に私の心臓を狙ってくるな。もしかして初めてじゃないのか?」
「俺の失言癖は知っているだろう?」
「まさかその度に!?何回殺したぁ!」
「お前は自分の尻を拭いたトイレットペーパーの数を憶えているのか?」
「なんてヤツだ――ガハッ!」
「よし、殺った。安心しろ、実績はある。これで六回目だ」
「ちゃんと憶えてるじゃねぇか。いい加減に……し…………ろ」
「合掌」
――幕――