勇者は待ってくれない
魔王: 「……フハハハハ!勇者よ!我を倒したければ、魔王城まで来るがいい。我はそこで貴様が来るのをのんびり待つことにでもしよう。まぁ、それまでこの世界が無事であればの話だがな!」
そう言い放ち、俺はマントを翻して魔力を解放し、空中に魔王城へのワープゲートを出現させた。すると、その光景を目にした勇者たちが、必死に斬りかかってきた。しかし、俺はその攻撃をかわしながらゲートに飛び込み、勇者たちを残してゲートを閉じた。
勇者: 「待て!……くっ、逃げたか…貴様は必ず私の手で倒してみせるぞ!」
魔王城にて
魔王: 「……あっぶねぇぇえ!普通さ、悪役が帰ろうとしてる時に斬りかかってくるか!?なんなのあいつら、全然空気読めないじゃん!」
思わずマントを確認。ふぅ、なんとか無事か。もし一張羅のマントが斬られてたら、泣くところだった。
???: 「いや、一張羅なんですか?まぁ、それは仕方ないでしょう。勇者たちからすれば、魔王が目の前で逃げようとしてるんですから。」
暗がりから冷静な声が響く。ベリアルが、どうでもいいような顔で立っていた。
魔王: 「うわぁ!いつからそこにいたんだよ、ベリアル!ってか、見てたなら助けてよ!ほんとに斬られるかと思ったぞ!」
ベリアル: 「最初から最後まで見ていましたよ、私の魔眼で。」
ベリアルは、いつも通りの無表情で淡々と言う。こいつ、ほんとに助ける気なかったんだな。
魔王: 「あのさぁ、魔王が勇者に斬られて死ぬとか、超カッコ悪くない?」
ベリアル: 「そうですね、史上初かもしれません。」
ベリアルは少しも動じず、むしろ面白がってるような雰囲気を漂わせていた。
魔王: 「ま、まあ、今回のことは良しとしよう。でも、次は助けろよな!」
ベリアル: 「もし私が魔王様の首を虎視眈々と狙っていても、そう言えますか?」
ベリアルがじっとこちらを見て、少し不敵な笑みを浮かべた。
魔王: 「おいおい、怖いこと言うなよ!」
こいつの名前はベリアル
我が魔王家に代々仕える魔族の一族
左目に宿る魔眼で、相手の思考を読み取ることができる