2.王子の策略
「いいえ、違いますよ。ソフィア嬢の護衛だと思ってたんですが、その口ぶりだと違うみたいですね。」
ええっ!
それって、暗殺者の可能性、あるじゃん。
てっきり、殿下の側近が会話が聞こえない程度の距離で護衛してると思ってた。
あそこに、私か殿下の命を狙っている人がいるかもしれないんだよね……
否、決めつけるのは良くないか。
お父様が私のためにつけてくださった護衛かもしれないし。
殿下の関係者かもしれない。
殿下があったことないだけで。
……な訳ないか。
つい、現実逃避してしまいそうになった。
はぁ、厄介なことになったなぁ。
「どうなさいます?あの方」
私の問いに殿下は目を大きく見開いた。
どうしたんだろう。
「君は、どうしたいんですか?」
にい、となんだか楽しそうに笑われてしまった。
? どうゆうこと。
私が決めていいの?
「どうするのがベストなのですか?……そもそも彼はそうゆう人間なんです?」
略:本当に悪い人?
唇を読まれてるかもしれないし、遠回しの言い方で聞く。
「でなければ、なんだというのですか?」
殿下は何言ってるんだこの人って感じの目で私をみている。
うぅ、いたたまれない。
そりゃ、そうなんだけど……
「味方の可能性は、ないんですか?」
一応、聞いてみる。
だって、もし味方とか訳があってきてる人だったら、申し訳ないもん。
「ないでしょうね。」
わぁ、バッサリ。
やっぱ、そうだよね。
味方なら、隠れる?必要ないもんね。
ん?
ちょっと待って……
これ、おかしいよね。
なんで殿下は気づいてたのに、今まで黙ってたの?
……私の護衛だと思ってたんなら、注意深く観察する必要はないはず。
さっき、少しだけだけど気にしているそぶりがあったんだよね。
信じ切ってるなら、そんなことしないでいい。
公爵家の人間を信じてないはずがないから。
もし、聞かれたら困るんだったら、私に言って離れさせればいいし。
それとも、何か他に理由が……
えっ、もしかして、私に気づいて欲しかった、とか?
だからわざと、わかりにくいヒントを与えたの?
だとすると、殿下の目的は、私を見極めること?になるよね。
そんなの……(記憶が戻る前の)アイリスが気づくわけないじゃん!
うんん、これはまだ仮定だ。
殿下が私にそれとなく伝えて、逃げる隙を伺ってもらう可能性だって捨てられない。
まぁ、(前世でいう)小学生くらいの年の子供相手に、こんなこと託す可能性は限りなくゼロに近いんだけれども。
それを知るために、証拠…というか、確信を得たい。
それと、あの人に気づいてしまったのは仕方がないから、ここから私への興味を失くす為の作戦も立てなくちゃね。
殿下の目的が前者だった場合、私はギリ合格レベルくらいだと思うから。
「でしたら、殿下の護衛の方に伝えてくださいな。私達がどうこうできる問題でもないですし。」
まぁ、これが一番安全で、自分の身が大事な令嬢の選択。
これで殿下は、私に対しての興味を失うはず。
「あいにく、別件で今この場を離れているんですよ。最悪の場合、私達だけで対処しなければなりません。あの方もそろそろ護衛が不在のことに気づくかもしれませんし。」
ふふっ、ビンゴ。
やっぱり、殿下の根回しだったんだ。
だって、唇を読まれてるかもしれないし、盗聴だってされているかもしれないのに、護衛がいない、なんて簡単に口に出してしまうなんて失態、殿下がするはずない。
これも、私へのヒント?
もしくは、根回しの人間(味方)だから、そこまで気が回らなかった、とか。
まぁ、どちらにせよ、味方だってわかったのなら、心配する必要はないか。
でも、このままじゃ終わらないんだから!
見てなさいよ、殿下。
この挑発的なゲームに少なからず腹が立っていた私は、殿下に仕返しをすることにした。
「まぁ、なんということ……!でしたら、屋敷に帰るふりをして、門にいた方を呼んできましょうか?」
このままだと、一度捕まってしまうかもしれないよ?……あなたの味方が。
さぁ、どうする?
「いや…怪しい行動をとって、君まで狙われてしまったら大変です。なので、できれば内密に……」
なるほど、あくまで私の身の安全を守るために、やめさせるんだね。
筋は一応通っている。
でもね、それじゃああなたが狙われてるって、最初からわかってるみたいになってるよ?
私の護衛だと思ってたのなら、私が到着したのと同じようの時間帯に来たってこと。
なら、殿下が狙われてるとは限らない。
それなのに、あの人を知らなかったなんてことないよね?
うーん、わざとなのか、これもヒントなのか……。
「確かにそうですわね。でも安心してください!これでも私、演技は得意なんです。なので、怪しまれずに門までなんて、楽勝ですわ!」
まっ、崩すけどね!
私は、悪役令嬢なんだから。
今更イメージを変えようだなんて思ってない。
多少のわがまま的なことは言っても許される。
自分に自信があり、殿下の役に立ちたいと思っている横暴な令嬢。
そんな子に、殿下の今の言葉だけじゃ、不十分じゃない?
殿下は、キャラを保つために、やんわりとしかやめさせられないんだから、それを全部無……気がつかなかったふりをしてしまえば、ゴリ押しでもいける!!
もし、ストレートに言ってきたら、それはそれで殿下のプライドに傷をつけることができる。
これなら、どっちにしろ、仕返しができる。
あっ、あと、もう一つあるか。
殿下が事実を私に伝えて試していたんだと告げること。
これに関してでも、殿下の作戦が私によって打ち砕かれるんだから、まっ、いいのか。
ん?ちょっと待って、そもそも殿下の作戦って……
そして私は自分がおかしてしまった重要なことに気づいたんだ。
そうだ、殿下の目的は私を見極めること(仮定)なら……
「……でも、やっぱり怖いですぅ。もし、失敗してしまったらと思うと……。今回は(犯人を)見逃してしまったらどうでしょう?その方がいいかもしれませんよ。」
ふぅ、かなり無理があるけど、これでいっか。
これなら横暴なイメージをキープしつつ、殿下の試験(仮)に合格にはならないだろう。
茂みにいる人に気づいたのは良かったけど、この後の行動は、王妃としては最低だからね。
「ハハハッ……面白いですね。私の、君が言う試験にここまで正確に対処したのは、今回が初めてですよ。」
なっ……!
どうして私の考えてることがわかるの!?
「すみません。少し心の中を読ませてもらっていました。王族の特殊な魔法で、ね。でも、素晴らしかったですよ。あなたの言動といい、頭の回転の速さといい。流れが速すぎて、読むのが大変なくらいでしたよ。まぁ、所々聞いたこともない単語も出てきていましたが。」
「……っ」
はぁ、すべてお見通しだったってことね。
じゃあ、今まで考えていたこともすべて筒抜け……
なんて不敬なことを考えてたんだろう、私。
「殿下は、どうしたいんです?」
私の心を読んでまでしたかったことって、なんだろう。
私は、自分の失態よりもそっちの方が気になった。
「それに関しては安心してください。あなたを不敬罪で突き出したりはしませんから。それよりも、君の思っていることに関して、気になる点がいくつかあったんですが……」
理由は教えてくれないんだ。
「気になる点……ですか。」
前世のことだろうな〜きっと。
この時代の人からしたら、興味のあるようなことばっかりなんだろう。
知らない世界の様々な文化。
ここにはない技術だって、たくさんあるんだから。
殿下には、一番必要なことなのかもしれない。
この国の発展・国民の幸せこそが、王たるものの勤めのようなものだもんね。
あっ、こんなこと考えて、また心を読まれたら大変だって?
まさか!
私がそんなへまするわけないでしょ?
ちゃーんと対策してあるんだよ。
神様からもらった能力の中に、自分で考えたことを魔法にできるっていうのがあったから、それで、魔法をガードするバリアのようなものを貼ったんだ〜
「はい。まずは、“転生”って単語です。」
あっ、やっぱりそれが気になるんだ!
ま、一番大事なワードだよね〜