アルセイヌの父は美丈夫?
はーい誰です? とドアの向こうにいるであろう人物に声をかけると一瞬咳払いをしてから、ゆっくりと扉を開ける音に視線を向ける。
そこにはアルセイヌの父であり、私からすれば初対面だけど。彼女の記憶と自分がアルセイヌであることを自覚した私は何故か父を少し怖いと思ってしまう。
ゲームでは私を守ってくれる存在ではあるのに、バッドエンドの時に私を殺したことがあるからだ。
冷酷で見つめる瞳は諦めを滲ませ剣を振るうんだ。
あのバッドエンドはつらい気持ちになってたっけ。
今は幼いから、あんな出来事は起きないけど。
厄介な記憶でちょっと警戒して見つめていると、父は一瞬チッと舌打ちした。
ええええ!? もしかしていま何か父の癪に触ったのかと掛け布団をぎゅっと握り締めてたとき、私の様子を見て近寄ってくる。
薄暗いから表情は見えなくて警戒心が高まってたんだけど。
側に来た父の表情は月の明るさでハッキリ見えてきて優しい顔と美丈夫な父にクラクラする。
なに、このリアルダンディな美丈夫、側にきたら目の毒なほど綺麗なんですけどーー!!
ゲームでは冷酷な表情とアルセイヌへの罵倒とか声しかしなかったけどさあ、殺してくる時にチラッと見える瞳の描写しかなかったから知らんかったけど。
まあ自己紹介プロフィール画像にはあったよ。
でもさあーリアルで見てみいーめっちゃ月に当たる光・影と整っている顔に子供2人いるとは思えない。
そんなもんが私の目の前に見えるんだぞ、萌えます。
ありがとうございます。
「......どうかしたのか? 私をまっすぐに見つめたりするなど珍しい。」
「あ、えっと、そのー。」
うー何を言えばと言葉に詰まってしまう。
思考の中で暴走気味に悶えてなど、理解しがたいだろうし。
きっとアルセイヌを心配してきたんだとうし。
.......ん? 父をまっすぐ見れてないって、どういうこと?
私は忌み嫌われてる存在で、お父様に迷惑をかけたくない!!
トクンと叫ぶ声が脳内に聞こえて、これは恐れからだと理解する。つい思考回路に中にいたまま固まってると、優しく頭を撫でる感触が現実に戻り父をみる。すると父は穏やかな表情で笑みを浮かべる姿にホッとする。
「気を失って目を覚ますのが、このタイミングとは神は本当に意地悪だな。」
「えっと、どう言うことですか?」
「ふふ、なんでもないさ。それよりもアルセイヌ、体調の方は大丈夫か?」
ちょっと気になる物言いが気になったけど。
「......大丈夫。」
「ふむ。そうだアルセイヌこちらを向いて手を出しなさい。ふふ、そんな不安そうな顔をするな、今回はちょっとお洒落な魔道具だ。今日はアルセイヌの誕生日だしな。」
ほえ? 誕生日ですと!!?
内心驚くも自分の誕生日まで私は寝こけとったんかい!
いや実際は記憶の混乱で気を失ってたんだけどね。
って言うか。私が気を失ってたのがいつで、目が覚めてたのがいつなのか把握してないのが不安はあるんだけどね、うん。
私は心の中を混乱しつつ表の自分は慌てることもなく静かに手を差し出している。
父は私の反応に対していつも通りなのか無言のまま金色のブレスレットが右腕に嵌められる。
とても精密で装飾は細かく菊の花が彫られている。
やば! アルセイヌの事を思って素敵なプレゼントとか嬉しいじゃんか!!
グシグシと止まらない涙に父親は動揺していたが、ぎゅっと身体をだきyいるように抱きしめて誕生日おめでとうとだけ呟いていた。