クッキーと新しいお友達1
雑貨屋に到着して扉の鈴がカランカランと音が鳴り響くと同時にバタバタて勢いある足音が響き、店に着いた時に降ろされた私を見つけたライナリアから突進されて抱きつかれた。
少々勢いが良すぎて壁に衝突するものの、フォーカス先生も奥から現れて補助してくれたのか衝撃は緩和された。
店の中はお客はいないことを安堵しつつ、ライナリアにただいまと言った矢先に思いっきりぎゅうと力を込められた。
「うおーーーお姉ちゃん、力を緩め...緩めとくれーーちぬーー。」
窒息できるほどの力量で締められたら昇天できます。
「ライナリア嬢、無事帰還したんですから緩めないと窒息死しますよ。」
「あっ!! ご、ごめんアル!!」
スッと力を抜いてくれて危うく三途の川見るとこだったわと安堵しつつ、まったくなんでここまで心配してるのかが不思議だった。
「お姉ちゃん心配しすぎ!」
「うっ、だって近くで魔物事件あったなんて耳に入ったんだよ! それも出現したのがアルの向かった市場なんて聞いたら心配だったんだもの!!」
あーやっぱり事件うんぬんは耳に入るよねーー。
それに外もまだざわざわと喧騒で騒いでるし。
ライナリアの表情を見る限り絶対に私の場所に行こうとしたけどフォーカス先生やセーラさんに止められたと思う。
カナリアちゃんとセーラさんも奥から出て来てライナリアの焦った表情で止めてくれたと推測できた。
「それに.......双子なんだよ! 感じちゃうんだよ! 不安や恐怖とか、うっうううーー。」
ポタポタと泣くライナリアの雫に、心配させたこと双子ならではの思いが伝わってヨシヨシと背中を撫でておいた。
少々貴重なライナリアの涙を出させたことに反省して慰めてたとき、カナリアちゃんもパタパタと近づくなりピタッと無言で抱きつきヨシヨシとライナリアを撫でていた。
「ところでゲルフィンまで一緒にいたのかい! ほんとフォーカスだけじゃなく2人が一緒てのも珍しいねえ。」
「今回はお二方の護衛もあるからな。それより最近ここら付近で不審な輩が出没しているようだ。セーラも戸締りとかして気をつけておけよ。」
「はいはい、気をつけておくよ。」
「セーラの家には私の特有魔法をかけておいた。今回は何が起こるかわからないからな、事件のこともあるし。」
フォーカス先生はカウンターに小さな護符を置く。
「セーラ今回は緩く物事を考えないでください。これはそれぞれ貴方とカナリア2人分守れるように早急に作ったものです。身を離さずに身に着けておくださいね。」
「ははは、あんたがそこまで言うんだ何か理由があるんだろうさね。わかったよ、カナリアおいで。」
カナリアはコクンと頷きセーラの側に行くのを私は見届けたあと、ライナリアは落ち着いたようだったのでフォーカス先生達の側に移動した。
近くに到着した頃にはフォーカス先生から渡されたのだろう護符つきでもおしゃれなアイテムを着けていた。
カナリアちゃんは首から紐でかけるタイプで、ブローチはセーラさんが着けていた。
「へえーおしゃれなんですのね。」
「だね。可愛いー良かったねカナリアちゃん。」
「うん。」
少しだけの笑顔が可愛いくて、あーほんとスマホあったら撮って保存したいよ!
などと思ったときだった、一瞬頭に激痛が走って映像がフラッシュバックする。
深夜の帷が映えた夜に大きな音とガラスが割れる音に、部屋ではセーラさんがいて近くにカナリアちゃんが泣いている。
フォーカス先生が渡している護符のアクセサリーの恩恵は発動しているのにセーラさんは大怪我し虫の息になりつつもカナリアちゃんを守っている。
「カナリア、私の大事な娘...大好きだよ。逃げるだーー早く!!」
「いやーーーーお母さん、お母さん!!!!!」
泣き叫ぶ声が響くと黒服の連中がカナリアちゃんを切り付ける。
「アル!! ねえーアルってば!!」
ハッとライナリアの声がして我に返ると、さっきの映像が消えていて現実へと戻ってきていたのだと気づく。
「あはは、ごめん。えっと何?」
さすがに頭が混乱して聞いたら、ライナリアにセーラさんにゲルフィンさんフォーカス先生まで心配する表情で見られて誤魔化すように苦笑してしまう。
「何って声かけたらジッと固まってたのよ。」
「そうだよ、じーっと一点見つめて何事かと思ったよ。」
「そうなの? えーっとたぶんクッキーの構想思い出したせいかも。」
「あらあら、そういやあークッキー作ってくれるんだっけねえ、今から作るかい?」
「......アルがなーんか誤魔化してる気がするけど、お腹なっちゃったし、私も手伝うからね!
「うんうん行こー、カナリアちゃんキッチン案内お願い。」
「うん、コッチだよ!」
ライナリアに誤魔化しが気づかれたけど、クッキー食べたい欲求に負けてくれたおかげでキッチンに向こうことに成功した。
だけどフォーカス先生とゲルフィンさんが渋い顔でいたことを私は知らずにいた。
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「アルセイヌ嬢は何か見たようですね、瞳の色が変わってましたし。」
「......ああ、誤魔化してたが物見の可能性が高いと思う。」
「やはりそうですよね。アルセイヌ嬢はつくづく魔力影響も高いし、頭もキレる......物事も状況把握も優秀ですか。」
「そこが危うくもあるんだ、見てただろう...あの戦闘の時に。」
フォーカスはアルセイヌの状況を見て気づいてはいた。
訓練中は魔力コントロールが不安定なのに、戦闘中に見せた魔力は確実にゲルフィンの身体強化と他のスキルを上昇させていたのだ。
無意識のうちに傷も治す系統など見たことがない。
「見てはいたが、他にも色々ありそうではあったな。」
「幼い身体にある影響、彼女自身のスキルも......ある可能性が高いと踏んでいる。」
父親の影響とするには.......か。
彼女達の父親は優れてはいるが、ここまで娘に影響がでてるとは思ってはいない。
ただ今回のこの仕事は長く続けるつもりはなかった。
アルセイヌ嬢とライナリア嬢の属性に魔力コントロールができたら辞めるつもりだったが、今回の事件で見せたアルセイヌ嬢の力と人柄に惹かれてる自分がいた。
「変わってはいますね。」
「ああ......だが、それだけじゃないところもあるぞ。」
「ほうーそうなのか?」
「見て気づくさ、おまえもな。」
ふっと小さく笑みを浮かべるゲルフィンに驚く。
ゲルフィンは暗殺家系で感情を殺して動くタイプであり、感情を動かさないことからグライハイムの右腕、通り名は氷の月光騎士って呼ばれている。
そんな存在が表情を崩すほどとは、アルセイヌ嬢はすごいですね。
「まあー気づくのはさておき、後で追及しておかないとな。絶対秘密にしてやがるからな......あいつは。」
「そうですね、それだけは同感です。」
素を出してるのに面白がるゲルフィンに苦笑しつつ、アルセイヌ嬢のいるキッチンに移動した。




