記憶した彼女の記憶 2
事故に遭い目を覚ました後の生ライナリアのとの邂逅し、こしょぐりの刑に処された私は、ユサユサと揺さぶられて意識が戻った瞬間に、彼女は大丈夫?! と私に慌てた風に詰め寄るもんだから。大丈夫! 大丈夫です!!と声を出して驚いてしまう。
だって私の声こんなに甲高いもなく、可愛い声じゃないんだよ! うーーん、理解できないんだけど!
「...アル? 大丈夫なの、本当に?」
ん? まあ事故にあって病院に入ってるはずだから、大丈夫ではないかなーーって思ったら、生ライナリアの揺さぶりで上半身おきあがっているせいか周囲を垣間見ること数秒。
生ライナリアとメイドさん見ること数秒。
ん? んんんんん!!??
この面影が幼いけれど特徴あるオッドアイみ髪は黒いけれど僅かに灰色の銀髪を見て。
ふみゃああああああ!!!!! と叫ぶと生ライナリアが、え!? アル!! と驚きと心配する声がしたが私の脳内は大混乱と私ではない記憶が流れてくるもんだから脳内処理が追いつくことなんてできるわけもなく。
プシュウーと頭がオーバーヒートを起こし湯気が出て私は意識を再び手放したのだった。
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記憶......それは私であった頃、ずっと趣味で乙女ゲームをして楽しい一時の擬似恋愛を楽しませてもらってたんだけど。
あり時に出会ったんだよね。
悪役令嬢がヒロインを虐めて地獄に落とされるゲームを。
当初はライバルが悪役令嬢とかわかってなくて、友人に勧められたものがソレで見事にハマってしまいのめりこんだ。
金持ち学校で貴族履行主義が強いが、学校に入れば身分制度など関係なく過ごせる制度があり。
貴族・平民は互いの一致で仲良くなってもおかしくないのだが。
こここはゲーム、学校には王子がいて攻略対象者がいて、美青年達と恋をする恋愛要素がある。
ある時に平民のヒロインが入学して王子や攻略対象者と仲良くなってハッピーエンドを迎えるのだが、ここに必ずライバル令嬢が絡んでくるんだよね。
でも1番絡むのはアルセイヌ。
魔力が高くて黒髪のオッドアイを持ち、手には手袋をつけているがお洒落な感じで、けして誰にも触れられないように目つきはキツく、態度は傲慢な性格をして怖がられていた。
だが王子と婚約者に無理矢理になってからは自分のプライドで周りにも沢山人を傷つけては鼻で笑っていた。
そしてある時、ヒロインが王子と仲良くなっていった瞬間にプライドを傷つけられたようで、手袋を外しヒロインの命を奪おうとしてしまうが、王子によって魔物扱いされて殺された。
アルセイヌは大概は魔物扱いになるんだよ!
何処のルートでも、ヒロインがハッピーエンドの裏でアルセイヌは死ぬ。
私は当初はライバル令嬢のアルセイヌが憎らしいから邪険にしてたんだよね。
だってヒロインのピュアさが可愛いじゃんと。
あんな風に甘えられたらきゅんきゅんしてたんだよね。
だけど続編出てアルセイヌの実体を過去に映す物語がアフターストーリーで出ることになって、つい興味本意で調べるも主にヒロインとその後のアフターストーリーになっている。
そうググるとそればかりだった。
悪役令嬢アルセイヌ・ローランドの情報はないのかと、のってない人は調べたくなるんだよね。
で、予約して買った後事故で......思ったらコレだし。
目を覚まして天井を見ると高そうなシャンデリアと暗くて月明かりだけがベッドに差し込んでこんいた。
「私の記憶、そして彼女の記憶思い出しちゃったよ。」
手を上げて小さな手をグーパーと動かすと違和感があるけど自分の手で動いている。
「ねえアルセイヌ...あんたさあーーつらい思い私に押し付けるために記憶を見せたの?」
私の記憶をつらつら思い出したけど、言葉にできない感情や憤りや悲しみの記憶が僅かに頭に流れてきたんだよね。
調度品を魔力暴走で苦しみで壊してメイドさん達に白い目で見られているんじゃないか?
両親は優しい、お姉様も優しいけど。
実は私を怖がってるんじゃないの?
ねえ! ねえ!!
縮こまる思いが張り裂けんばかりに心にきて痛い。
「こんな思い感じてたんだ。だから攻略対象者や王子にあんな風に突き放した態度や自分を強く見せようと傲慢な態度とってんだんかな?」
そう思うとアルセイヌ可哀想じゃん。
まあ同情してなんになるって思うけど。
アルセイヌ本人になっちゃってるし、どうにかしないとだね。
しかし悪役令嬢ねえーあんな未来もどうにかしないとだよね。
ガバッと起き上がると暗いのに月が綺麗でぽかぽかと暖かく感じる。太陽ならまだしも月見てそう思う自分が変な気分でいた時、コンコンとドアをノックする音がした。