記憶した彼女の記憶 1
ピーポー、ピーポーと耳に救急車のサイレンが聞こえ、熱いアスファルトには私が大好きでいつも良くやっていた乙女ゲームの続編のソフトと予約限定でしか貰えないクリアファイルが袋から散乱して地面に散らばっている。
手を伸ばしたいのに動かすのも憚り、激痛が走る。
せっかく予約までしてまで続編楽しみにしてたのに、なんで動かないのよ!
地面なんかと仲良くなりたいわけじゃないんだから、この後帰ってゲームして幸せになるグッドエンドやキャラクター攻略して楽しむはずだったのに。
あー目が霞むし悔しいし、地面には大勢の足や叫び声、早く起こしてほしいのに。
ダメだ.......ねむ...い。
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ユサユサと身体が揺さぶらせる、誰かが自分を呼んでいる。
「......お嬢様.......アルセイヌお嬢様。」
声が異様に優しいから看護師さんと思ったのに、アルセイヌって誰かいな?
私はそんな外国人みたいな名前じゃないので寝ます。
それにしても気持ち良い病院のベッドですね。
昔に入院してた頃は病院のベッドなんて硬いし辛かったんですけどね。
では二度寝をと再び寝ようと布団を被り直したのに、またもや安眠への道を邪魔される。
「アルセイヌお嬢様、起きないと突撃されますよ。」
またもや見知らぬ名前で呼ばれて、あーもしかして横に外人さんが寝てるんだろうし私には関係ないかも。
何が突撃されるかは知らないけど、ご愁傷様です!
では寝ようと目蓋を閉じようとした時、バンッと勢いあるドアの音と駆け寄るような音が聞こえ......そして!!
ん!!? 何故に私に衝撃があああ!!
「もう! アル......いつまで寝てるんですの! もうお昼ではありませんの。一緒にご飯食べますわよ...でないと大きくなれませんのよ!」
えらく可愛いボイスに呻きと痛みで我慢して、のそりと布団を捲り布団の上にいる人物を見た瞬間。
あれ? この子見たことあるんだけどy
金髪の髪に青い瞳、幼い面影なのに将来は絶対に美人になる素質は醸し出しているような美少女顔、ライナリア。
《蝶の花に愛された藤蕾を貴方に》の主人公友人になり、アルセイヌ・ローランドをバッドエンドに突き落とした人物。
何故に貴方が私の上でニコニコして見下ろしいるのでしょうか?
生ライナリアに目をパチパチして瞬いて驚いていたら、プクーと頬を緩ませてから、エイ! と言い私の頬をぷにぷにと摘み上げて、引っ張ったりぷにぷにしてくる。
あーもしかして私は病院ではなく、あの世に行って。
神様が死の淵に見せてくれてるのだろうか、あの乙女ゲームの生きてるキャラクター達の邂逅を。
うん、絶対そうだ。
ありがたいです。こんなイキイキしてるのは美味しいです。
コクコクと納得してジッとライナリアを見つめてると、ライナリアはモミモミを止めて私を見て首をかしげるも、ニヤッと笑みを浮かべ。
「ねえアルセイヌ、どうしても起きる気がないわね。しょうがない、これも姉としての教育ですもの覚悟!!」
えいって感じで私の脇腹やお腹をこちょこちょしてくるもんだから、こしょばゆくて死にました、チーン!
次の話は25日0:00に更新してます。