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運命の風と絆ーゲルフィン視点ー

夜の静けさの中で蠢く陰謀とは良く言ったものだと思う。

アルセイヌが寝てる間により周囲に探索範囲を広げ警戒すれば、あちこちに侵入してこようとする輩がいる。

まったく主は敵が多い人だと呆れている中、侵入した者は俺も使い魔に排除して捕まえておく。


後で色々聞き出さねえとな。

それにしても今日が月が綺麗だね。


空を見上げていると月は下に向き金色の光よか入り混じり輝いていた。


ゲロウの白亜か。


ふとアルセイヌをみる。

黒髪にしているが月に当たると僅かに煌めく白銀の髪。

ゲロウの狼と白亜の髪の聖女の伝説の書物に似てるな。


近くにシオンが寄り添う姿に微笑む自分に驚く。


「俺にもこんなふうに 笑えるようになるとはな。」


だが悪くないと感じる。


コンコンと部屋の音に俺は静かに開けると、そこにはエリカ・ヴァンシールのメイドが立って俺を見るなりニコッと微笑む。

営業スマイルなのだが、たまにこちらを牽制と警戒を滲ませては言葉に棘を感じる女性だ。


「ゲルフィン様いらしてたのですね。」

「ああ、アルセイヌお嬢様の警護しておかないといけないでね。」

「......そうですか。ですがアルセイヌ様が人がいるのに眠れていることが珍しいです。」

「珍しい?」


エリカさんはコクンと頷くと、魔力暴走があった期間以前は1人で寝てることに対し寂しがり屋で誰か側にだけでも欲しいとか、ただし人見知りが激しいようで信頼できる人にしか側においていなかったと聞き思い出す。


そういえばライナリア嬢も同じようにアルセイヌが人見知りが激しいと言っていたなと。


「それにアルセイヌ様をよく思わない者も屋敷の中にはいるんです。畏怖のそうちょうのように存在を嫌悪し、陰で文句を言っていた者も。だからアルセイヌ様は僅かでも自分の身を守るすべを持ち眠れないこともあったので。」

「そう...なのか。」


アルセイヌをみれば、話しとは裏腹に熟睡している姿に苦笑してしまう。


「信頼してるのはありがたいが、困った方だ。」

「ふふ、ゲルフィン様。困ったと言いつつ口元が笑んでますよ。」

「...そこは見ないふりをエリカ嬢。」

「ふふ、はい。」


エリカさんも俺の横からアルセイヌをみている姿は大事に思っている証だろうな。


「エリカ嬢...一つお願いがあるのだが、こっそりで良い...裏で文句や嫌悪している輩の所在をの資料として作ってくれないだろうか?」

「え? 私がですか?」

「ああー頼めるとありがたい。」


本来なら俺が動くと良いのだが、人それぞれを選別、判断をするにも時間がかかる可能性がある。

もうすぐ王子のお披露目の晩餐会も近い。

今日訪れた王子は秘密裏ではお連れしていたが、本当なら晩餐会にて紹介されるはずだった。


あの者が王に誑かされなければ、アルセイヌに合わせたくないのにと主が愚痴ってたしな。


そのための準備をしている中、俺がいない間に信頼できるものを多く確保し、周囲を固める必要があったのだ。


主も動いているがまだまだ裏にて何処と繋がるかわかったものではない。ならばエリカ嬢に頼む形となる。

エリカ嬢はアルセイヌの専属侍女だが、先程の物言いに僅かながらの情報を得ていると判断した。

探るように見つめ承諾の意志を持つエリカ嬢は考えるような素振りのあと、俺を真っ直ぐ見つめるグリーンの瞳には強い何かの決意を感じる。


「はい、承諾します。アルセイヌ様の御心が安静になれるならば。」

「ありがたい。書類の日時は一週間ぐらいで頼む。」

「はい。出来上がり次第お持ち致します。」


互いに握手を交わし、互いに悪い笑みを浮かべる。

エリカ嬢は少し俺に似てるような気がする。


****


朝になり本来ならアルセイヌ様の側にいるべきだが、主より任務をかせられ動いていた。

任務の内容は主に我々の身辺でウロチョロしている蝿の一斉摘発に必要な情報収集だ。


そんななか情報収集をしているとき、裏通りの路地裏にて怪しくも風変わりのような人物がいた。

黒い髪に隻眼をし、服装は異国風だろうか?

見たこともない格好をしている。


「.......蝶は...ここもか。」


澄んだような声が発せられた【蝶】というキーワードに一瞬アルセイヌがよぎる。


まさかな。


アルセイヌの回りには良く蝶を見かけることが多い。

季節的には......まだ舞う季節でもない不思議な現象。

だからこそ気にしないでいたのだが、黒髪の男は気配を消している俺の方向を向いた瞬間、奴と目が合ってしまう。


な!? 気配は消してたはず!

何故に目が合う!


驚愕と嫌な汗が背中をつたい落ちていく。

さっきまで普通な変わった人物と邂逅していたはずなのに、異質なモノと対面しているような感覚がしていた。


「へえー暗殺者って職の人って気配消すの上手いのに、僕の存在だけで取り乱すとかプロとしてダメダメだよ。」


クスッと笑った瞬間、素早い動きで俺へと近づく男に、咄嗟に後方へと避けた瞬間、ザシュッと髪が僅かに切れる。


「ふーん素早いね。でもさあーこれなら...どう!」


彼の両手には小型のナイフがあり、前方を見据え2、3撃を繰り出し俺が受け止めるとスピードを上げ攻撃する。

一撃一撃が素人ではなく重く、放たれるスピードは研鑚された威力を醸し出す。


「ふーん、面白いな。僕のスピードに追いつけるなんて。」

「冗談はよせ!! お前は実力の半分も出してないだろう!

「ふふ、バレてら! まあいいか、それより僕なんか観察していいわけ? あんたって俺の敵?」

「敵ではない、俺は俺の信念で探るものの途中に君を見かけただけだ。」


ふーんと彼はつまらなさそうに言うと後方に飛び......何故か笑顔になる。急に攻撃が止むも先制して攻撃した相手に警戒したまま見て何故に笑顔になってるのか疑問が湧く。


理解しがたい状況に剣を構えてると彼は何か気づいたようにニヤリと笑む。


「敵じゃないなら、一つ忠告! 近々...大きな花が咲き乱れ蝶は眠る。守るモノがあるなら早めに対処しておくと良いよ。」

「な!? それはどういう。」

「それは自分で考えな、じゃあね!」


おい!! と俺が叫ぶも彼は風のように姿を消す。

瞬間移動.......こうとうなスキルだよな。

ケインさんが使うものを。


「...何者だ、彼は。一応...主には報告しておく必要があるな。」


ズキっと気づけば傷があるのを見つけ簡易的に応急処置をし、彼のことを頭の隅に置き任務へと戻っていった。

その様子を彼に見られていたとも知らずに。


「風と蝶が交わる時が運命の始まりだ、時計の針が刻んでいく。アルセイヌと彼女...僕と凛子君との絆試させて貰うよ。」


屋根に立ち怪しくも笑う姿は風のように静かに消えていった。



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