私が私である限り
白い世界は回りに何もないけれど、目の前には陽炎の炎が青く光。ユラユラと波打つように不知火は仰ぎ、私の側に寄り添うように近づいていた。
触れると火傷してしまうようだと惹かれ触れた瞬間!
それは鳥となり私の手に止まる。
姿はアルセイヌというより前世の自分で藤崎凛子になっていた。
「私は貴方にあったことあるの?」
【ああー我は其方の近しい存在なのでな、本来は隠蔽工作スキルを施すだけ済ませておきたいが今後の為にも対話を用いたまでだ。】
「どういう.......あ、アルセイヌの?」
【フッ理解が早いな、その者の運命は過酷な星にある。凛子、お前が知らないアルセイヌとの運命を救う為には其方が必要なのだ。】
アルセイヌの?
私が知らないアルセイヌの運命。
もしかして続編にアルセイヌの物語があるアナザーストーリーに関わってる?
目の前の聖霊は真っ直ぐに私を見つめる瞳は肯定しているように感じる。
「私が必要って、私が彼女に転生したことで運命は変わるの?」
【......否、其方の行動と運命に契約せし者、そして何よりこの世の理に叛意した存在を打ち負かす必要がある。】
「この世の理に叛意? それって...うっ! 頭が!」
【すまぬ。まだこのことは其方に明かす時期は早すぎる。ただ...覚えていて欲しい、アルセイヌの闇に呑まれるな。】
それってと思った瞬間、意識は現実へと戻る。
淡い光が私を包んで吸収した。
「上手くいったようですね。ん? どうかしましたか? なんだかぼんやりしてるような表情ですが」
「......え? あ、うんん。なんでもない。」
チラッと鳥の精霊をみると...アレ? と違和感を感じてしまう。青い鳥だったはずなのに炎の陽炎が混じってるように見える。
だが今は触れるべきではないと警鐘がなる。
「そうか、ならいいんだけどな。」
ゲルフィンさんは青い鳥の精霊に礼を感謝を述べた後、精霊は私を一瞬見ると【またな】と言って消えた。
またがあるのは何故か普通に受け入れてしまう自分自身の不可解さを感じながらも、ゲルフィンさんから本当に隠蔽されているか確認させてほしいと言われた今は頭の隅に考えを置いておくことにした。
手を私の頭に置いた後に呪文を唱えると少しの沈黙のあと、手を離すと静かに「成功してますね。」と教えてくれた。
「ねえ......ゲルフィンさん。」
「なんだい?」
「...えっと、あのね。もしも...脅威的な敵がいて立ち向かうにはどうしたらいいと思う?」
ちょっと変なこと聞いちゃったかなって思ったのに、ゲルフィンさんは少し驚きつつ考えてくれてるようで、ちょっとの沈黙の中。
「もしもと言う仮定としてならば、まずは出来る範囲で考えての行動が良いと思いますね。私ならば...そうすると思います。」
「そっか、出来る範囲だね。うん。」
ゲームでの知識はあるけど、表だってのいまのリアルは私でありアルセイヌの人生、自分が自分である限り進まないといけないから。
まだ小さな手だけど、わからないことは少しずつ気づいていこう。
「アルセイヌ。」
「ん? なに?」
「いや...なんでもない。」
「????」
意味なく呼ぶなんてどうしたのかな?
小さく首を傾げてる私に対し、何故か思いっきりため息をつかれたのだった。
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夜にはゲルフィンさんはいつもの定位置で私の護衛してくれてるようで壁に寄りかかり目を瞑って腕組みしての体勢。
たまーにゲルフィンさんっていつ寝てるんだと疑問がわくも、聞いた時はきちんと寝てますよと言われるしまつ。
ふむ。私が寝てる間に立ったまま寝てるのかね、君!
とツッコミたいが気にすると負けな気がして布団にて紫苑を抱きしめ窓の外をみる。
今日は下弦の月のようで綺麗、空に浮かぶ透き通るような雲の月に僅かに翳り出す。
「ねえ紫苑、月ってね不思議な魔力があるんだって。」
前世で読んだラノベもそうだけど、大好きだった作者の個人で出してるツイートがあって良く見てたんだよね。
その人は小説家であるのに、ツイートはいつも月ばかりで色々な月の表現を写真に写す姿が大好きだった。
そこでリプして月の魅力ってなんだと思いますかと。
返事はすぐに帰ってきた。
『月には陰と陽の影があるんです、月の形には不思議な魔力があり人は気づかないですが、その恩恵をもらってるんですよ。』
私は衝撃的で、その魅力があるんだと思って。
それからは良く眺めてたんだよね。
ふふふと思い出してたら、月の片隅に青い蝶が舞った気がして普通に綺麗だと感じていた。