不知火の青との出会い2
紫苑との交流は眠気のせいで私の途中リタイアの惨敗で終わったけど、夕方からはもっと遊んであげようと意気込んでたらエリカさんが急に予定が入ったことを教えてくれた。
どうにも私より二つ年上の子がお父様来客に同伴していたらしく、私の話題とかライナリアの話題をしていたようで、ならばと互いに子供同志の交流もいいのではとなったらしい。
えええええーーせっかくの紫苑との遊びがあ!
ガクシとショックを受けたら紫苑がヨシヨシって感じで擦りよってはボフボフと軽く当ててくる。
クッ可愛いーー!!
「ありがとう、少し行ってくるね紫苑。」
「ワン!」
ベッドからおりてエリカさんに身支度を整えてもらう。
髪色は最近、お父様に黒髪にして貰ってるので忌みのある忌緯な眼差しは向けられないだろう。
それに瞳も変えて貰ったので安心だ。
「アルセイヌお嬢様、こちらが今回の手袋です!」
白い絹の中に淡いピンク色の桜模様が手首辺り螺旋模様が編み込まれている。
綺麗ーー。
手袋に模様があるだけで、ちょっとしたお洒落とは嬉しい気持ちで口元が綻ぶ。
「エリカさん、手袋可愛いくて綺麗ね。」
えへへと上からや近くの模様を見てお礼を言ったら、エリカさんからクスクスと微笑み、どうにも私が無地の手袋を着ける時に少し寂しげな表情して見てた事をエリカさんが気づいたようで、ならばとわざわざ私のために時間ある時に刺繍をしてくれたんだって。
心こもる贈り物を貰ったことが嬉しくて、もう一度お礼を言うと。
「アルセイヌお嬢様の貴重な笑顔...嬉しい顔をみれるだけで感無量です!」
そこまで表情筋死んでるほどに無表情だったんだね。
自分じゃ笑顔になってる姿見れんからよくわからないけど、お互いに笑い合えるには良いよね。
互いにのほほんな空気の中で、最後まで身支度を終えた。
ゲルフィンさんは私の身支度が終わった頃に部屋へと入り、お客様の子供が待つという庭のテラスに案内してくれた。
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庭に着くとテラスのテーブルの近くにある椅子に誰かが優雅にカップを持ち上げ飲んでる姿が見えた。
ふむ、金髪...優雅、お子様なのにちょっと大人びているような姿。徐々に近づくと鮮明に見えてくる姿に.......私の記憶がゲーム知識が頭に画像が蘇る。
そうだ......確か、今日ってアルセイヌと幼い王子との初対面の日じゃないかな?
乙女ゲームでアルセイヌが扇子を口に当てて、思い出したようにヒロインに熱弁してたんだよね。
わたくしは殿下とは幼い頃から出会い愛を育んでいたのですわ! とーーーっても仲が良かったのですわよと。
パチンと扇子を閉じてヒロインを嘲笑う姿は見事なまでの悪役令嬢であり、自慢げだったなあーー。
って思い出してる場合じゃなくない!!
ここで会うってことはだよ、下手して仲良くなったりするのって未来的に同じ結末おくるんじゃない?
いやーでも、あのアルセイヌって実際問題、殿下とは本当に仲良かったかも怪しんだよね。
殿下ルートじゃ、アルセイヌの幼い頃から警戒心とプライドかな? 良く話しはしないけれど睨んだり、近づこうよして殿下を避けつつ傲慢になってたんだよねえ。
そこんところエピソードが妙に中途半端だったようなのな。アルセイヌが何故あすこまで殿下に執着してたのかとかの疑問。愛して欲しいと死ぬ間際まで言ってた言葉。
謎ばかりが残って、けしてあかされずにヒロイン視点になるからモヤモヤしてた記憶があるんだよね。
「お嬢様...急に立ち止まったりしてどうしました?」
「え? あ、うんん。ちょっと考えごとしてて。」
エリカさんの声で思考から戻されて、まさか止まって考えてたのかと、ちょっと恥ずかしい。
王子の前まで移動してから、淑女らしく挨拶した。
「ローランド家次女、アルセイヌ・ローランドです。少し遅れてしまいすみません。」
少しばかり待たせてしまったお詫びもかねての発言に王子はキョトンとしたように私を見てくる。
ん? どうかしたのかな?
少なからず、相手への礼儀とした挨拶はできたと思うんだけど。
「えっと、どうかしました?」
「あ.......いや、うん。なんでもないかな。」
王子は頬を何故かポリポリかいて誤魔化してるような感じに見える。
ふむ、アルセイヌの髪とか風貌が変なのかな?」
よくわからない王子の態度に首を傾げてると、エリカさんに向かい側もソファーに座るように言われ、立って話すのもと座ることにした。
互いに沈黙。
静かな沈黙が2人を包む、うーむ?
何か話すべきなんだろうけど......ぐぬぬーーお見合いじゃないのにーー何故に沈黙!
子供らしい何か話題でもチラッと王子をみると、王子も私を見てたびっくりする。
もしかして観察されてる?
いやいやーー王子で、この畏怖の念があるけど髪も瞳も偽りでバレないはずだよ。なのにーー何故みるの、みつめるのーー!!
「えっと、あのー貴方の名前は?」
一応ゲームで知ってるけど、私も挨拶したので王子からもと思い話題振りをしてみたら、王子がハッと気づいたようで挨拶してくれた。