空舞う蝶の残滓
ペラペラと捲っていく絵本は、わかりやすくて育成方法は主に犬の世話とお世話と変わりはなく。
適度な散歩と餌のタイミングなどある。
しつけのうんぬんもあり、ふむふむと納得してると不意に止まる文章で私の目に入る。
餌が普通の食事でも良いけれど、主の魔力供給を得るときもあるんだって。微弱な容量を食べるため余り気づかないらしい。
ゲルフィンさんにも確認したら、少し考えつつも私が不安にならないように今の現状的には契約がなされていない状況もあり、その心配はなく。
普通に人間の食べている料理とかで良いみたい。
ひと通りのお勉強会が終わったお昼ごろになっていて昼食食べに行って、部屋に戻ったあと私は疲れて眠ってしまう。
静かな小波、青い空に私は立つ。
死ぬ前に前世の姿だとわかる、当たり障りのない普通の外見が地面の綺麗な透明の湖に映っている。
透き通るような空は......現実見があるはずなのに不思議と夢であると思えた。
だって私の目の前にはアルセイヌの姿が立っているんだもの。
周囲には青い蝶と赤い蝶、アルセイヌ自身には黒い蝶の羽根。黒い羽根は本当なら綺麗な金色の羽根だったと何故か思う。
近づいて話しかけたのに、私は動けず彼女をみるしかできない。
ねえアルセイヌ、貴女は何故泣いているの。
涙を伝う綺麗な雫は地面に落ちると波が立ち波紋が揺らぐ。
『わたくしが、いない方がいいの。でも......助けて!! いやああああああ!!』
叫びは悲痛で、突如! 黒い羽根が散り、周囲に蝶が集まりアルセイヌを包み込んだ瞬間に霧散してアルセイヌの姿が消える。
残っているのは蝶の残滓。
消える! その思った時には私はかけて残滓を掴む。
すると私の手には温もり包まれる。
「アルセイヌ......消えないで、私が貴女を!」
ぎゅうっとつつみ何故かそう叫んだ瞬間、夢から現実に覚醒していた。
「...夢? えらくリアルっぽいような?」
手を上げてみると、手はアルセイヌのそれで変な気分でぼんやりしていた。
起き上がり外をみると夜空が綺羅星となって煌めきが散りなめれる。テラスの窓に近づいて良く見ると月は丸くて満月のようだ。
「綺麗だね。」
日本で星を眺めて通るような星の煌めきは、ここまで綺麗には見るなんて田舎ぐらいじゃないかな。
電気はないけど、僅かに光る街灯。
魔力装置、家庭や街並みにそれぞれ設置されてるのに。
星をここまで綺麗にみれるのは嬉しい。
コンコンとノック音がして振り向くと扉を内側からしていたようでゲルフィンさんが立っていた。
「起きたんですね?」
「うん、妙な夢見ちゃって眠れなくて。」
ゲルフィンさんはこちらに近づくと隣に立ち、そうですか。と短く言うだけで空を見上げている。
「ねえゲルフィンさん、星がいつか散って流れて行くとき消えると思いますか?」
夢で見た彼女の悲しみが...まるで星の一瞬の煌めきが散るように思えて聞くと、ゲルフィンは何か寂しげな表情を浮かべていたけど、次にはいつもの無表情になって私を見つめる。
「消えることは思います。星は散り霧散していようと残滓は残ります。その煌めきが僅かであろうと...。消えません。」
「.......そっか。」
うん、そうだよね。
アルセイヌ自身が何を思い何を感じたのか?
それはまだ...ほんの僅かな残滓かもしれない。
知らなくちゃ、あんな悲鳴みたいな涙なんて私がさせたくない。
「うん、頑張らない。」
ついポツンと呟く言葉は、まるで嬉しいように空に残滓の幻が見えた気がした。