魔力暴走事件の真意 後編ーグライハイム視点
ぎゅっとグライハイムの服の裾を掴み不安そうに見てるライナリアに、アルセイヌを心配していたことを思い出し安心させるように屈んで頭を優しく撫でてやる。
「ライナリア、アルセイヌは大丈夫だ。ソルトの処置はうまくいっている。必ず無事に助かるからな。」
「...ほんとに?」
「ああ。」
暴走状態の収束はどうにか切り抜けることが出来た。
不思議なあの者の、おかげではあるが。
いまはまだ......。
無意識に手を握りしめて決意を新たに心に決めていた。
そこ後はソルトにはアルセイヌを医務室へと連れて行かせ、ライナリアには部屋へとケインを同行させたあと、グライハイムは教会にある女神像を静かに眺めていた。
アルセイヌの暴走状態で女神を貶すような発言には後悔はないが、自分自身の力が及ばぬところの不甲斐なさに溜息しか出ないことが悔しいと思っていた。
「助けると約束して我が身の力のなさよ。なあー女神よ! 私はアルセイヌを守れるのだろうか?」
【我との約束を守って見せよ】
不意に思い出す、あの青年との邂逅。
そうだったな、まだ期限もある。
ここで挫折などしては守れるものも守れん。
しっかりしろグライハイム!
女神像に騎士の礼をし誓う。
私は必ずアルセイヌ身、命を守る!
どうか我が娘アルセイヌに女神の加護があらんことを私の命をかけて守ると誓おう!
宣啓の誓いを述べたとき一瞬ではあるが青い蝶が舞って見えたが、自分迷いを見せることのない思いと共にグライハイムは教会を後にした。
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グライハイムは一息ついたあと奇襲をかけてきた者の足取りを整理していた。
思いふけってしばらくしたあとにはゲルフィンが奇襲に紛れ侵入した報告をルーテンハイドから聞いたときは、やはりかと思ったものだ。
こうも容易く私の策を練った場所ばかりに潜伏している侵入者がいるのだからな。
だがここに襲撃してきた者達の情報を吐かせたときに判明したのは、アルセイヌの力を利用するために拐う目的でもあった。
どこで情報をと問いただせば、予測は外れて欲しいものだが屋敷にはアルセイヌの力を畏怖する輩が僅かなりにはいる。
探しだすもと思案していたのだが、表じゃ表面上の態度を取り裏では何を考えているかはしれぬ。
改めて選び直すか?
いや、ゲルフィンに調べさせておこう。
あやつなら色々と調べがつき報告も早い、さて...これからが忙しくなるだろう。
一つ一つ片付け対策を練らねばならぬ。
拐おうとしていた輩に国への至らぬ情報を流されては困るんでな。
ニヤリと不敵に笑んだとき、側にいるケインが悪どさが出てますよと指摘され、鋭く指摘するなと注意した後に引き出しより束に纏めている書類を出す。
「まだまだ証拠物を纏めておかねばならぬ。」
「そうですね、きっともうすぐ...国よるパーティーが主催されます。強要ですし心強くもっていかねば食われますよ。」
「...ああ、わかっている。国知られぬように動くさ。協力者はより多く欲しいのでな。」
国王の目論見など、自身の王子のお披露目目的だろうが。
貴重な人材貴族を探すに最適な場所だ色々と探さねば足元を掬われぬ、慎重かつ情報私引き出させてもらうさ。
「ケイン、捕らえた者達には何処から依頼があったか、じっくり調べておけ。」
「御意。」
ケインが去った後、静かな執務室には月明かりが注ぐように照らす。グライハイムは一息ついたあと、背もたれに寄りかかり目を瞑る。
×××年、◯◯月に娘がか。
これからの年月からが私の試練となるのだろう。
娘を助けられるか、それとも死か。
揺るぎない運命、けして私は負けぬ。
必ず。