魔力暴走事件の真意 中編ーグライハイム視点
アルセイヌの魔力に効用するかのように体内の魔素を吐き出そうとしてるのか散り散りと蝶が羽ばたき出す。
その光景は綺麗だがグライハイムには血飛沫にしか見れず、女神像に向かい願う!!
我が娘を連れて行かないでくれ!!
アルセイヌの成長を見せてくれ!!
女神、頼む!
願い続けるもアルセイヌの魔力暴走は収まることはなく、赤と青の蝶が周囲を囲み飛ぶ!
くそ!! 私には何もできないのか!?
その時だった、アルセイヌがか細い声で何か呟いていることに気づく。
教会の天井に向かい手を伸ばしているかのように。
グライハイムは焦る、このままでは女神に我が娘を奪われてしまうと!
側に近づきアルセイヌを握り締め願いを込めて叫んだ。
「娘を奪うんじゃねえーーー!!」
教会の祭壇に寝てるアルセイヌは先程とは違い顔色も良くなり蝶は消え去りアルセイヌは静かに寝息をたてていた。
ホッと肩を撫で下ろし安心していると、青い蝶がグライハイムの前に飛んだとき、白い長髪をゆったりと肩で結んで青年が現れたのをみて驚く。
こいつはアルセイヌが見せた男の姿に似ている。
だが唯一違うには異国の服ではなく、どちらかといえば神域の法衣を纏っている。
怪しくも綺麗な青年に目を細めて問う。
「誰だ。」
敵ならばと腰の剣に手を添えて睨んでたんだが、青年はクスリと小さく笑い、アルセイヌを指差した。
「我は女神の使徒、彼女を迎えいれる者なり。主よ、何故に彼女を守ろうとする?」
女神の使徒だと。
疑いの心をざわつかせるが、今...この問いに応えねばならぬ気がする。
「我が娘を大事に思っているからだ、呪われた身の娘だが最愛かつ揺るぎなき私の娘、誰よりも守りたい! 女神だろうと渡さぬ!」
「良い返答よ、ならば守れ。行く歳月、この者には試練の蝶の如く、その時に黒と光どちらが咲くか楽しみだ!」
「...どういう意味だ。」
さあなと言うなり、青年はアルセイヌ側に近づくとボソッと何か呟いたあとグライハイムを見て。
「刻限は七年後、彼女は発作を起こして死ぬ。それでも守れる努力をしろ、良いな人間。」
真剣な表情を向ける青年に、グライハイムは言われぬともと言う意志を込めて頷くと青年はフッと笑み消える。
ユサユサと肩を揺さぶられ、意識が元に戻るような錯覚に目の前にはソルトが医療用バッグを持って立っている。
近くにはライナリアが心配そうにグライハイムを見ていた。
「え?...ああ、ソルト来てくれたんだな。」
「来てくれたんじゃねえよ! どういう状況なんだよ、アルセイヌ嬢ちゃん発作起きてねえじゃねえか!? 魔力も安定してるし、体の血脈も安定してるし呪いのも緩和してるしよ!」
「...すまん...ちょっと色々ありすぎて私も混乱しているんでな。あとで説明する。それよりアルセイヌは大丈夫なんだな。」
「ああ...来てそうそう、おまえはぼんやり突っ立ってる間に診察と最小の治療は済ませておいた。」
「...そうか。お前が見て大丈夫ならば安心だ。さて、ありがとうよ。」
突っ立ってたということは先程のは幻だったか現実だったのか、自分にとっての頭の整理が追いついてないこともあり礼を言ったのだが、どういうわけかソルトから怪訝な表情をされる。
「どうした。」
「いやー礼を言う割には不機嫌だったからよう。それにグラムも横舞ってる蝶が気になってな。普通の蝶とは違うような......っておい! そんなに距離おかなくて良くないか?」
バッっと近くにいる蝶を見ようとしたとき、蝶よりクスリと笑う声がしたせいもあり距離を置いてしまう。
「そうだな、私は疲れてるようだ。」
「はは、そうだろうな。アルセイヌ嬢ちゃんは俺が医務室に運んでおくから、ライナリア嬢ちゃんを慰めてやりな。ずーっと不安げにお前見てるぞ。」