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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第四部 鑑定令嬢の日常編

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第九八話「鑑定結果」

――竜舎利(ドラグリブ)ゴーレムの一撃をまともに受けてしまいガイエイさんは気絶してしまいましたが、マークルウさんの障壁(バリア)の魔法を連発することでなんとかゴーレムを足止めしています。しかし、そう長くは持ちそうにない状況です。



「マークルウの障壁(バリア)でヤツを壁に押し付けて、効果が切れるのを狙ってザッキラインが光の矢(エナジーボルト)でさらに壁に弾き飛ばして。そしたらアタシがヤツの頭蓋の中の(コア)を狙うわ」


リウィルナさんが策を提案されました。議論の余地はないのでそれで行くしか無さそうです。


「わたくしもお手伝いを――」


「いや、アタシらだけのがタイミング合わせやすいから大丈夫だ……よ!」


お三方は目配せをしたと思うとそれぞれが動き始めました。マークルウさんが障壁(バリア)で弾き飛ばしたあとザッキラインさんは光の矢(エナジーボルト)で追撃しました。


しかし、竜舎利(ドラグリブ)ゴーレムは不意に腕を振り回したので光の矢(エナジーボルト)がゴーレムの左腕に命中して左腕の肘から先が弾け飛びました。そのせいで体勢は崩れず、ゴーレムがこちらへ向かってきます。



(いけません!)



突進したゴーレムの正面にいたリウィルナさんは咄嗟に姿勢を低くして飛び込む様にゴーレムの股の間を抜けて背後に回りました。わたくしはなんとか這いずりながらも勝手口に飛び込んで難を逃れましたが、ゴーレムはわたくしに狙いを定めたのか、勝手口から強引に中に入ってこようとしています。入り口が狭いので引っ掛かっていますが、今にも壁などを壊してしまいそうです。



『――四〇人の盗賊フォーティバンディッツ!』


わたくしが必死で念じながら首領の剣をゴーレムに向けると目の前に直径一メートル程の光る紋様が浮かび上がり次の瞬間ゴーレムが後方へ倒れました。倒れたゴーレムの腹部には人間の胴程もある丸太から粗く削り出した様な棍棒が突き立っていました。


「――今だ」


リウィルナさんは素早く倒れたゴーレムに駆け寄って頭蓋の頬辺りの隙間から十字型の鋭い短剣――鎧通し(スティレット)を突き立てました。すると「バシッ」と砕ける様な音がしてゴーレムは糸の切れた操り人形の様に動かなくなりました。


皆さん「ふうう」と深いため息をつきました。わたくしもほっと一息ついてから立ち上がり、四〇人の盗賊フォーティバンディッツの大棍棒に「ありがとうございます」と伝えると霧の様に消えました。


「助かったよお嬢! アンに聞いてた通りだ」


「アンさんに?」


「ただの鑑定士じゃなくて、修羅場潜り抜けた一人前の冒険者だってね」



(アンさんそんな事を――でも嬉しいです。自分が信頼する人に認められているというのは)



「オイ、どうなった!?」


ガイエイさんはマークルウさんに癒し(ヒール)を受けて意識が回復し、飛び起きたのですが「痛てて」と脇腹を手で押えています。


「まだ無理はしないように。肋骨が何本か折れているからな」


「なんでぇ、治してくれよ?」


「魔力をかなり消耗したんでね、暫くはそれで我慢してくれ」


わたくし達が怪我の有無を確認しているといつの間にかゴーレムは元の置物の形に戻っています。そしてその近くには砕け散った魔術結晶が散らばっていました。


「どうやら魔術結晶を失って元の形状に戻ったようです」


わたくしは竜舎利(ドラグリブ)の置物状態のそれを詳しく調べましたが、元の置物の様な形のまま変化することはありませんでした。魔法探知(センスマジック)でももう魔力は殆ど感じられません。



「これはわたくしの仮説なんですけれども……」


魔術結晶には竜牙兵ドラゴントゥースウォリアーの魔法とそれを制御する魔法が組み込まれていたのでは? と。つまり、ゴーレムの素材に竜舎利(ドラグリブ)を用いてゴーレムにすることで、コンパクトに設置でき、さらに竜牙兵ドラゴントゥースウォリアーの形態に変化することで戦闘力を持たせられる――


「つまり、こいつは置物じゃなくてゴーレムだったってこと?」


リウィルナさんは苦笑いしながら竜舎利(ドラグリブ)の置物をぺしぺしと叩きました。


「しかし、何故今目覚めたのだろう?」


マークルウさんは顎髭を撫でながら小首を傾げました。


「わたくしが魔術結晶に施した魔法探知(センスマジック)の魔力で刺激されて起動の鍵になってしまった可能性があります……申し訳ありません」


わたくしは頭を下げました。


「いや、俺達がそう頼んだからな。君は指示通りに行っただけだ」


ザッキラインさんの言葉に他の皆さんも頷いておられました。


「ありがとうございます……」


「お嬢、こいつ二束三文てことはないんでしょ?」


リウィルナさんはまた置物をぺしぺししながら言います。


「そうですね、竜牙兵ドラゴントゥースウォリアー用の竜舎利(ドラグリブ)ですから素材として転用は難しいですが、竜舎利(ドラグリブ)ゴーレムという珍しい物ですから、コレクションや研究用に欲しいという人は居られるかと……その場合はもう時価としか言えませんね」


「じゃあお嬢、いつでもいいから欲しい人がいたら教えてよ、交渉するからさ。取り敢えずこいつはしばらく置いとくよ。まあ財産みたいなもんだねぇ」


リウィルナさんは満足気な笑みを浮かべて言いました。


「確かに、魔術結晶が無くなった事で特に危険は無くなりましたので、置いておく分には問題ないですね……わかりました」


わたくしの出張鑑定はそんな感じで予想外の事態が有りましたが、なんとか依頼主の方に満足頂けたので取り敢えず終わりました。



――と、まあこういう感じの出来事が度々起こるのは魔道具鑑定士としての日常茶飯事なのか、わたくしが未熟だからなのか……それはなんとも言えませんが。なんとか出張鑑定が終わり、わたくしは取り敢えず報告の為に薔薇の垣根(ロズヘッジ)へと戻ります。



(なんだか色々ガヒネアさんにお小言言われそうですが、まあ仕方ありませんよね?)






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