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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第四部 鑑定令嬢の日常編

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第九六話「謎の置物」

――わたくしは出張鑑定の依頼でわたくし達のギルドを同じく、イェンキャストに拠点を置く冒険者ギルドの花咲く食堂(ブルーミングキッチン)本部である酒場へ来ました。ギルドマスターで小柄な女性の斥候兵(スカウト)リウィルナさんと巨漢の戦士ガイエイさんに案内されて酒場裏手に置かれた珍しい竜舎利(ドラグリブ)の置物を調べています。


依頼品を調べていると、他のギルドメンバーの方も集まってきました。



「おやレティ・ロズヘッジさんですね、こんにちは。鑑定依頼したとは聞いていましたが、今日でしたか」


この口の周りに整えられたお髭が特徴的な中年の男性は花咲く食堂(ブルーミングキッチン)治癒魔術師(ヒーラー)、マークルウさんです。治癒魔術師(ヒーラー)としてはシオリさんと同じかそれ以上の実力だと聞いています。


「――久しぶりだな、鑑定令嬢」


もう一人はザッキラインさんという魔術師(メイジ)の男性で、銀髪に褐色の肌という帝国では珍しい風貌の方です。西方大陸の民族に見られる特徴だそうです。整った容姿で女性にも好意を寄せられることが多いらしいですが、失礼ながら私見では無口で神秘的なちょっととらえどころの無い印象の方です。


リウィルナさん、ガイエイさんを加えてこの四人の冒険者が中心のギルド、それが花咲く食堂(ブルーミングキッチン)です。



(気が反れてしまいましたね、鑑定を続けましょう――)



「まさか、本物のドラゴンの骨じゃないよね?」


花咲く食堂(ブルーミングキッチン)のギルドマスターのリウィルナさんはわたくしの鑑定の様子を見ながら気に掛かる様子です。


「本物もなにも、竜舎利(ドラグリブ)というのは(ドラゴン)の骨が長い歳月をかけて結晶化したものですので……」



蘊蓄(うんちく)は控えめと思いましたが、やはり少しは解説していくべきでしょうか?)



「なあなあお嬢、どんな感じだ?」


ガイエイさんは普段の強面からは想像し難いほどのにこやかな笑みを浮かべながらわたくしの横にしゃがんで竜舎利(ドラグリブ)の置物を観察しています。


「ガイエイ、レティ嬢の邪魔だろう……退いていろ」


「うるせえなザッキライン。横で見てるだけだろ、邪魔なんかしねえよ」


魔術師(メイジ)のザッキラインさんは表情を変えずに淡々を仰っているので怒っておられるのでしょうか? でもガイエイさんは特に気にしておられないようなので、そういう気安い関係なのかもしれません。



「ガイエイ、あんたのその強面がお嬢の集中力の邪魔なんじゃない?」


(あね)さんまで酷えな……お嬢、別に見ててもいいよな?」



(皆さんの仲の良さそうなやりとりが楽しくて流石に気が散りますね……)



「皆さん、少し……その、お静かに願えますか?」


わたくしは心苦しくはありましたが、ひと言言わせて頂きました。


「ほら、お嬢困ってるでしょ? 静かにしなよガイエイ」


「ああん? それ俺だけに言ってんじゃねえだろ姐さん、なあお嬢?」



(ああ、なんか意図が伝わっていない気がします……)



「すみませんレティさん。皆の言葉は小鳥のさえずりや木の葉の揺らめきと思って気にしないでください」


マークルウさんがわたくしに優しく微笑みかけながら仰いました。


「は、はあ……わかりました」


わたくしはマークルウさんの助言に従ってなるべく気にしないように目の前の鑑定品に集中しました。



(おや、あれは? よく見ると中心になにかありますね。赤い……宝石でしょうか?)



「あれ? 中に宝石入ってる!」


「おおすげぇ、こいつはひょっとして高価なもんじゃねえのか?」


リウィルナさんとガイエイさんは少し興奮気味に喜んでいます。


「いやあ……うちのギルドは万年金欠だからさあ、これが高額で売れればちょっとは余裕ができるんじゃない?」


リウィルナさんは置物に顔を近づけて隙間からなんとか中の宝石のようなものを見ようとしています。


「年代的にはかなり古い……少なくとも古代魔法帝国時代のものですね。中の宝石のようなものはわたくしの経験則から思うに魔術結晶ではないでしょうか?」


「そりゃいい、ありゃあ確か結構いい値で売れたよな?」


ガイエイさんは拳と手のひらを打ち合わせて喜びを露わにしていました。


「しかし、このままではこれ以上はちょっとわかりませんけれど、中の魔術結晶を改めて魔法探知(センスマジック)で調べればもう少し詳しく分かるかもしれません、ですが……」


わたくしは、魔法探知(センスマジック)の魔力によって魔術結晶に魔力が供給されて何かが起きてしまうかもしれない事をお伝えしました。


「わたくし程度の魔力ではそこまでは影響ないかもしれませんが……」


このまま用途不明の謎の置物としても買い手は付くでしょう、とても珍しいものですから。ですが、ある程度用途が分かれば更に価値を上乗せすることも可能だということもお伝えしました。花咲く食堂(ブルーミングキッチン)の四人のメンバーは暫く話し合ってから、更なる魔法探知(センスマジック)を希望されました。


「承知しました、では魔法探知(センスマジック)で魔術結晶を調べてみますね――」


わたくしは魔術結晶に向けて魔法探知(センスマジック)を唱えます。



(えっと、これは内包された強い魔力……あと操作系の力? まさか……)



「これ、ゴーレムに使われている魔術結晶ですね。なぜ――」


わたくしが思索を巡らせようとした時、魔術結晶が赤く光り始めて置物がカタカタという音を立てて震えだしました。



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