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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第三部 幻の秘薬編

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第七五話「三人の冒険者」

――ミノタウロスを倒したわたくし達パーティーは更に奥に進みました。そして、人の争う音が聞こえたので向かった先にあったのは、転送装置(テレポーター)と思しき施設でした。そこでわたくし達よりも前にインプの群れと戦闘を行う人たちが居ました。


(この方達は三人でここまで来たのでしょうか? それとも三人だけに……)


そんなことを考えている間にもインプを一匹、また一匹と倒して行きます。


一人は片手半剣(バスタードソード)を持ち、板金胸当て(ブレストプレート)を着ている背の高い男性の戦士(ファイター)。もう一人は更に筋骨隆々とした男性で、褐色の肌に入れ墨をしていて硬質皮鎧(ハードレザーアーマー)を着て、大きな棍棒の様なものを持っている男性です。最後の一人は黒い軟質皮鎧(ソフトレザーアーマー)を着ている女性です。手には長い棒か杖のようなものを持っていました。


三人とも接近戦でほぼ一撃でインプを倒しています。



「凄いな……」


マーシウさんは彼らの戦いを見ながら呟きました。アンさんも目を見張っています。


ふと部屋の中央を見ると、度々青白い火花が走っていて、その都度そこからインプが現れているように見えました。


「え? インプが……転送装置(テレポーター)で?!」


わたくしの言葉で仲間たちはわたくしに注目しました。



「君達、見ているなら手伝って貰えないか?」


黒い軟質皮鎧(ソフトレザーアーマー)の女性が戦いながらわたくし達に話しかけてきました。


「見つかってた?」


アンさんは舌打ちして呟きました。


「君らは冒険者だろう? こいつらこの装置からどんどん湧き出てくるのでね、手数が足りんのだ。手伝って貰えるなら礼もしよう」


わたくしは「どうする?」と顔を見合わせます。


「確かに、あの転送装置(テレポーター)のようなものからインプが湧き出だしているのは本当です」


わたくしは部屋の中央を指さしました。その際も青白い火花と共にインプが次々と出現していました。


「冒険者は助け合いが基本……いいかみんな?」


マーシウさんの言葉にわたくしも含め皆さん頷きます。


「それに、あんなやつあったら危なくて仕方ないしね」


アンさんはニヤリと笑って言いました。そして、ディロンさんとシオリさんが支援魔法(エンチャント)を唱えると、マーシウさんは盾を剣で打ち鳴らしインプを引き寄せます。アンさんはマーシウさんに気を取られたインプをカタナで仕留めて行きました。


わたくしも魔剣を召喚しようと首領の剣を構えましたが、ディロンさんに呼び止められました。


「レティ嬢、あの装置を止められないか?」


「え……と、やってみないと分かりませんけれど?」


「あれからインプが湧き出しているのだろう? ならばあれを止めない事にはいずれ我らは消耗しきってしまうからな」



(確かにそうです。あの方達はとてもお強いようですけれど無限に戦い続けられるとは……)



「分かりました、ですがあの台座で操作しないといけませんから、インプをお願いします」


転送装置(テレポーター)を操作する台座は部屋の中央に並んだ石柱と同じ並びにあります。わたくしは魔剣・四〇人の盗賊フォーティバンディッツの短剣を四本召喚して守りに就かせました。


そして、ディロンさんシオリさんファナさんと共に台座に近付きます。



(これは、確かにわたくしが知る転送装置(テレポーター)とほぼ同じですね……)



「レティ、分かりそう?」


シオリさんが不安そうに尋ねます。


「以前より古代文字は多少解るようにはなりましたから、やってみます」


わたくしは独自にまとめた古代遺跡関連の手記を懐から取り出して読みながら装置と見比べます。


「うわ、来るよ!」


ファナさんが叫ぶと、長杖(スタッフ)を構えて光の矢(エナジーボルト)を放ちました。ディロンさんも鬼火(ウィルオウィスプ)を召喚してインプを迎撃してくれます。しかし数が多いので撃ち漏れるものもいました。それをわたくしの魔剣たちが宙を舞いながら防いでくれています。


シオリさんは周りの状況に変化があると逐一報告してくれますので、わたくしは集中して台座に浮き彫りされている古代文字盤と光る文字が映る金属板を見比べながら操作方法探ります。



(ええっと……転移……稼働……これが強く光っています。止める、静まる、そういったものは……)



「おい、あんたの仲間……ありゃ何してんだ?」


「うちのパーティーの鑑定士だ。古代文字が読めるんでこの装置を止められないか試してるんだ」


「古代文字が? マジか?」


マーシウさんと片手半剣(バスタードソード)の戦士のそんなやり取りが聞こえてきます。



(兎に角、止まるとかそういう意味合いの文字に触れてみましょう……)



わたくしはひときわ目立つ「止まる」の意味の文字に触れてみます。すると金属板には肯定と否定の文字が浮かび上がりました。そして台座の文字盤にある肯定と否定の文字が光り、ゆっくり明滅を繰り返していました。わたくしは肯定の文字に触れます。


「ぶぅぅん……」


音が鳴り響き、部屋自体が細かく振動します。やがて音も振動も小さくなって行き、部屋の中央の床で光っている魔法陣もすうっと消えました。その為でしょうか、辺りの光量が減って薄暗く感じます。




――マーシウさん達はインプを全て倒し、とりあえず戦闘は終わった様ですので皆さんがわたくしの元へと集まって来ました。


「レティやったね!」


ファナさんがわたくしに抱きついてきました。多少は馴れましたけど、こういうスキンシップはまだ少し戸惑います。すると三人の冒険者と思われる方々もやってきました。わたくし達の近くまで来ると黒い軟質皮鎧(ソフトレザーアーマー)の女性が一歩前に出ます。



「――助かった、まずは礼を言う。私は、ペラー……ルーテシア・ペラーだ。この装置の調査をしていた。まあ君らと同じ冒険者、ということになるか」


ルーテシア・ペラーと名乗った女性は背が高くアンさんと同じくらいで髪は長い黒髪を後頭部で結っています。


「俺はゲイル、このペラーに雇われた、まあ戦士(ファイター)だ」


片手半剣(バスタードソード)戦士(ファイター)はゲイルと名乗りました。背が高くがっしりした体格です。あまり手入れをしていない金髪を無造作に後頭部で括っていて無精ひげを生やしている、顔にも所々に傷跡があり歴戦の傭兵といった風貌でしょうか?


「ヤイ・ヲチャ。精霊の司祭であり戦士(ファイター)だ」


ヤイ・ヲチャと名乗った方はゲイルさんよりも更に大柄で、今までお会いした人々の中でも一番大きな体格です。複雑に編み込んだ赤銅色の髪と褐色の肌に所々入れ墨を施している、ということはこの方もウゥマさんのような辺境出身なのでしょうか? 帝国共通語の発音が上手な方です。


「俺はこのパーティーのリーダーで戦士(ファイター)のマーシウ・マシュリーだ。俺たちは冒険者ギルドのおさんぽ日和(サニーストローラーズ)に所属している」


マーシウさんは代表して名乗り出てルーテシアさんと握手を交わしています。そしてわたくし達もそれぞれ自己紹介をしました。



「あの、すみません……この装置の調査を依頼されたと仰いましたけど、どういう事でしょう?」


わたくしはおずおずと伺ってみました。


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