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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第三部 幻の秘薬編

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第六八話「レティ、荒野を行く」

――砂嵐が治まるのを村で待っていたわたくしは、結局七日程滞在することになってしまいました。ですが、その間に辺境の言葉で日常会話は結構出来るようになりました。何故か古代魔法帝国の言葉にも共通の部分が多かったのでそのお陰もあるでしょう。


私の出発の朝、村の方々はわたくしを見送ってくれました。


『レティもう行っちゃうの?』


『ミィミインごめんなさい、行かなくてはならないの……』



(長老様の孫娘、ミィミインとはすっかり仲良くなれて良かったのですが、そうなると別れが辛いですね……)



『レティや、気をつけてお行き……』


『長老様、お世話になりました……失礼とは思いましたが、今のわたくしにはこれしかありません。ここでは役に立たないかもしれませんが』


わたくしは銀貨の入った革袋をお渡ししました。長老様は固辞されたのですが、お世話になりましたのでそこはわたくしの考えも聞いていただきました。


『この地にもわたくし達の様な外の人間が入ってきているので、いつか必要になる時が来るかもしれません。その時にでも足しにしてください』


わたくしのその言葉に長老は『わかった』と革袋を受け取って下さいました。



「レティ・ロズヘッジ。お前の言う村への道は教えた通りだ、十分気を付けて行くがいい。俺はあまり長く村から離れるわけにはいかんので付いては行けんが……」


「はい、ありがとうございますダルァグさん。そこまで甘えるわけにはいきませんから」


村の皆さんから水と食料を頂きました。そしてダルァグさんのお話を聞いて書き上げた地図を頼りに、皆さんと合流する手はずになっている村を目指して出発しました。



(水と食料の配分、休憩するタイミング等……色々教わりました。普段ならそこまで厳しい道のりではないみたいですから、一人で辿り着けなければ辺境での探索など無理ということですからね)



――わたくしは辺境の荒野を歩きます。日中の暑い時間は日陰で休み、夕暮れから夜にかけて歩きました。このルート、歩き始めて二日ほどはいわゆる砂漠というよりは多少草木のある茂みが続きました。ここにはそれなりに獣も居て、中には大きな肉食の獣も見かけました。魔剣"四〇人の盗賊フォーティバンディッツ"があれば倒せない事もないでしょうけど、無駄に体力や時間を消耗する必要は無いので隠れてやり過ごしました。


わたくしの履いている、移動速度が速くなる魔法の靴"風の靴(ウィンドシューズ)"は、常時使うと魔力や精神力を必要以上に消耗してしまうので、障害物の少ない開けた場所で限定的に使用していました。


三日目辺りから徐々に草木も減り、岩と砂が目立つ荒野へと変わって行きました。一人で歩いていると「皆さん待たせ過ぎてしまってもう帰ってしまったのでは?」など嫌な事ばかりが頭をよぎります。この辺もダルァグさんが――


『孤独になるとロクなことを考えない、慎重に用心深く歩くことは大前提だが細かく目標を立ててそれを達成することで前向きになれる様に自分で自分の気持ちを保て』と言っていましたので、休憩ごとに「今日はこれだけ進んだ」などと自分で自分を褒めていました。


ダルァグさんの見立て通り砂嵐には巻き込まれず、風の靴(ウィンドシューズ)の効果もあって四日目の明け方に目標の村に到着しました。村人に冒険者が来ていないか聞きましたが、ここ最近は砂嵐のせいで殆ど人の往来が無くて、わたくしが久々の来訪者だと言っていました。



(ひょっとして、わたくしの方が早く着いたのでしょうか? でもそれなら皆さんは無事でしょうか……)



とりあえず村にある大きな岩に登って休憩がてら地平線から登る朝日と景色を眺めていると、遠くから歩いてくる複数の人影が見えました。それをジッと見つめると……先頭を歩く赤毛の女性や大きな盾を担いだ戦士を確認できます。


「アンさん?! マーシウさん?! 皆さん無事で……」



わたくしは岩を滑り降りて皆さんの元へと駆け寄りました。アンさんが一番にわたくしに気付いて両手を大きく振って「レティだ! おおーい!」と声を上げています。アンさんの声で皆さん走って来るわたくしを認識されたのか、手を振ってくれていました。


「レティ!」


シオリさんとファナさんがわたくしに駆け寄って来て抱きつきます。


「シ、シオリさん、ファナさんも……」


「無事だったのね……良かった、本当に――」


「心配したんだからね!」


お二人とも涙を流していました。わたくしももらい泣きして涙を流しました。



――合流したわたくし達は改めてお互いに無事の喜びを分かち合いました。シオリさんとファナさんはちょっとやつれた様に見えました。アンさん曰くシオリさんとファナさんはわたくしの身を案じて随分落ち込まれたとか……。


その後、お互いの経緯をそれぞれ語りました。皆さんはわたくしとはぐれた事に気付いてから暫く近くにあった洞穴で砂嵐をやり過ごして、少し収まって来てから周囲を探してくださったそうですが砂嵐の後なので足跡などは完全に消えていたそうです。そしてわたくしが一人でファッゾ=ファグに戻っているか、はぐれた時の合流地点のこの村に向かうかを話し合った結果こちらに来た、との事でした。



「皆さん大変だったのですね、まさかわたくしの方が早く着くとは思いませんでした」


「いやあ、あれから砂嵐に何回か見舞われたんだよ。それで時間がかかってな」


マーシウさんは頭を掻き、苦笑いしながら言いました。そして頭を掻いた指を見て「うわ、本当に砂だらけだな……ジャリジャリだ」と顔をしかめていました。


「わたくしを助けて下さった村の方も、今年の砂嵐は特に酷いと言ってましたから、わたくし達は間が悪かったということでしょうね……」


わたくしのその言葉を聞いたディロンさんとアンさんがこちらを少し驚いた表情をして見ました。


「レティ、村の人に聞いたって……言葉通じたの?」


「あ……ええ。おひとり帝国公用語が通じる方がいらして……わたくしも辺境の言葉を少し教えて頂きましたので多少は通訳できるかと……」


わたくしのその言葉にアンさんは口笛を「ヒュウ」と鳴らします。他の皆さんも感心して褒めてくださいましたのでちょっと照れてしまいました。


村長さんと交渉して使っていない小屋を貸していただき、そこで休憩しつつ食料を交渉して譲ってもらうなど準備をし、翌日わたくし達は目標の地下迷宮(ダンジョン)へ向けて出発しました。

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