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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第九部 帝国西方編

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第一九五話「地下迷宮突入」

――地下迷宮(ダンジョン)内部は外観の通り典型的な古代魔法帝国の建築様式でした。照明の仕掛けが生きているので中は灯り(ライト)の魔法が必要ない程の明るさがあります。


通路は幅三メートル高さ四メートル程度です。壁や床等は比較的傷んでいません。



(ずっと埋まっていたからでしょうか?)



暫く通路を進むと十字路に差し掛かり、ザリウ様が曲がり角の壁を灯り(ライト)で照らします。すると壁には記号の様な印が書かれているのが浮かび上がりました。



「左右は探索済でめぼしいものは無しか……直進した様だな」


「あの、それは?」


地下迷宮(ダンジョン)道標(みちしるべ)だ。灯り(ライト)の魔法に反応する石筆で書いてある」


「魔法に反応する石筆……魔蝋石(グラムスレート)ですね?」


古代魔法帝国崩壊後、世間から迫害されていた魔術師(メイジ)達が魔法を後世に残すために作った石筆だと文献で読みました。


「これを辿っていけば烈なる朱色(あいつら)の足取りが分かるからな」



わたくし達は道標を辿り奥へと進んで行きます。特に危険な事も無く似た構造の階層を二つほど降りると……通路の床や壁に傷や破損等、争った形跡が見られる様になりました。


「戦闘があったみたいだけど……死体や残骸が無いね」


クファーミンさんは壁や床を調べながら呟きます。それに続いて魔術師(メイジ)のカリティさんが魔法探知(マジックセンス)を唱えていました。


「時間が経ってるから詳しくは分からないけど、魔力の残滓があるわ。派手に攻撃魔法でも使ったのかも」


「魔獣でしょうか、古代魔法帝国由来の」


「キマイラだとかのアレか、確かにありゃあ倒したら黒いドロみたいに溶けてから霧になって消えるよな……なるほど」


烈なる朱色インテンスバーミリオンの方々が魔獣を倒したと考えるのが妥当でしょう。わたくし達も更に奥へと歩を進めます。


通路に点在する戦闘の痕を辿り通路を進んでゆくわたくし達でしたが、先頭で斥候をしながら進んでいたクファーミンさんが曲がり角で立ち止まり、片腕を横に伸ばして「待て」のジェスチャーをしました。


「居る……」


クファーミンさんは囁く様に言います。ザリウさんとわたくしはそっと角から覗くと……通路の一〇メートル程向こうには小さな人影の様なものが幾つも蠢いていました。


子供位の身長で大きな頭に髪は無く短い角が生え、大きく赤い目玉に背中には皮の翼が生えています。それは、かつて秘薬を発見した地下迷宮(ダンジョン)で遭遇した魔獣のインプです。



(やはり風の振鈴は屋内では効果がかなり限定されますね……)



「インプ程度なら何とかなるが……数が多いな。見えてるだけで五匹か、まだ居るかもしれん」


「取り敢えず、見えてる奴らだけでも始末する?」


ザリウ様とクファーミンさんがそんな言葉を交わします。


「待って下さい、今まで魔獣などに遭遇しなかったのは先の冒険者パーティーが既に排除した後だったからですよね? それなのにインプが徘徊しているのは……」


「何処かにまだ潜んでるってことか」


「はい……」



(それならばまだ良いのですが……)



魔獣が次々に沸き出てくる転移装置(テレポーター)が存在する可能性があります。


烈なる朱色(あいつら)でも手こずっているんだ、何かあるんだろうが。取り敢えず仕掛けてみるか……クフィ」


ザリウ様が声を掛けると、クファーミンさんが弓を構えますがその手には弓が五本握られていました。


「斉射するから、取りこぼしたらお願いね」


そう呟くとクファーミンさんは弓を引き絞り、続けざまに五本の矢を放ちました。


矢は三本がそれぞれインプに命中して昏倒させましたが、惜しくも外れたり掠っただけの二匹はこちらに気付いて向かってきました。


わたくしが首領の剣を構えるより早く、ザリウ様は前に出て腰の剣を抜き放つと刀身が鞭の様に伸びてしなり、二匹のインプをほぼ同時に切り裂きました。


そして、矢を受けても尚動こうとしていた一匹のインプにクファーミンさんは矢を放ち、眉間へと命中させ沈黙させます。瞬く間に五匹のインプは倒されてズブズブと黒い泥の様に溶けてゆきました。


「クファーミンさん、凄いです。矢を五本も連続で放つのは、わたくしのギルド仲間の遊撃兵(レンジャー)しか知りませんでしたから……」


「全部命中させたかったけどね。ていうか、レティさんの仲間にもいるんだ……」


クファーミンさんは少し不服そうな表情です。


「そりゃ世の中にゃ自分より強い奴なんざゴマンといるさ。悔しかったら、今のも最初の斉射で仕留めるこったな」


ザリウ様はクファーミンさんの頭にぽんと触れました。


「ザリウ様、その剣は先日の蛇腹剣(スネークソード)ですね?」


わたくしはザリウ様の剣が宴で使った物と気付きます。


「ああ、玩具(おもちゃ)でもああいう細かい奴ら相手には重宝するからな」


「そんな変な武器使いこなしてるの従兄(にい)様くらいだよ」


クファーミンさんは呆れ顔で言います。


「そうか? 練習すりゃいけるって」



――そんなやり取りをザリウ様とクファーミンさんがしているのを眺めていると、ウェルダさんが耳元で囁きました。


「これ、私達出る幕無いかもしれないわね……」


「かなりお強いですよね。でも、これから厄介な魔獣が出てくる可能性もありますから……」


「それは――今までの経験から?」


わたくしの言葉がウェルダさんには気になった様子です。


「はい、古代遺跡でインプ等の魔獣に遭遇した場合、それを呼び出している転送装置(テレポーター)がありました」


「魔獣を呼び出す装置……とんでもない(トラップ)ね」


ウェルダさんは半ば呆れたように呟きました。


「皆さん魔獣が潜んでいる可能性も十分にあります、気を付けて下さい」


わたくしはパーティー全員に向けて注意喚起をします。


「おう、了解だ。皆、警戒して進むぞ」


ザリウ様は片手を上げてから前方を指し示してパーティーの前進を促しました。


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