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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第八部 転移装置探索編

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第一七七話「揃う魔剣たち」

――わたくし、いつの間にか気を失っていたようです。ギルド本部の部屋に居たはずですが、周囲は濃い霧に包まれていました。霧の向こうにはぼおっと灯りが見えますのでそちらへ向かいます。


急に視界が開けると、そこには異国風の姿を身に纏ったいわゆる荒くれ者と呼ばれるような人達が焚き火を囲んで宴のような事をしていました。


その人達をわたくしは知っています。


四〇人の盗賊フォーティバンディッツの皆さん……」


わたくしの呟きに皆さん一斉にこちらを向きました。


(あるじ)、主じゃねえか!」


「なんだいシケた面して、こっちに来てくだせえよ!」


盗賊の皆さんはそれぞれにわたくしを手招していました。


「い、いえ……わたくしは……その……」


躊躇(ためら)っていると、背後から肩を組まれたので驚いて身体を強張らせ「ひゃあ」と悲鳴を上げました。


「まあまあ、ちょっと気晴らしして行きなよ主」


特徴的な形の戦斧を担いだ、赤銅色の長い髪を複雑に編んだ褐色肌の大柄な女性……四〇人の盗賊フォーティバンディッツ十傑の一人、戦斧(バトルアックス)のリディンさんです。


促されて焚き火の近くに行くと、見知った方々が迎えてくれました。


「主、来たかい。まあ座りな」


焚き火の近くに座っていた四〇人の盗賊フォーティバンディッツの首領が敷物広げて下さったので座りました。


「あの……」


「主に会わせろってせっつかれてな、おい――」


わたくしは背後に気配を感じて振り向くと、そこに居たのは褐色肌に獅子のたてがみのような黄金(こがね)色の長くふさふさした髪を大きめに編んでいる筋骨隆々とした長身の男性でした。


その手にはこの前助けられた石の大剣が握られていました。


「貴方は……」


「こいつは断頭石大剣エグゼキューションソードのマルドゥ、俺の義弟だ」


「アタイの弟さ。この盗賊団じゃ一番腕が立つよ」



戦斧(リディン)さんは首領の奥様でしたね……)



「この前、甲冑蜥蜴(アーマーリザード)人型蜥蜴(マンリザード)の時に助けてくれた方ですね、ありがとうございました」


わたくしは立ち上がって淑女礼をする。


義兄者(あにじゃ)や姉貴がえらくご執心だから、どんな主かと思っていた。なるほど、今までの主とは全く違うな……」


「そうなのですか?」


「俺たちの精神が封じられている、この幻燈空間(ファンタズマゴリア)まで入ってきたのはアンタが初めてなんだよ。魔剣にされた俺達をあくまで人として扱ってくれている……そんな主は今まで居なかった」


「そうじゃな」


霧の中からまた一人男性が現れました。かなりお年を召していますが――この方も筋骨隆々としていて、白髪で口と顎に立派なお髭を蓄え、顎鬚を三つ編みにしています。背中には背丈程もある大きく太い弓と、投槍(ジャベリン)の如き矢が入った矢筒を背負っていました。


「ジジイまで……アンタはまだ主の呼び出しに応じたことねえだろ」


首領は少し呆れた様な表情をしています。


「儂が必要な場面無かったしのう、あればこんな可愛い嬢ちゃんに手を貸さんわけ無いわい」


ご老人は顎鬚を撫でながらわたくしに優しい笑みを浮かべています。


「あの、貴方は……」


「儂はムシュフーン。大弓(グレートボウ)のムシュフーンじゃ。こやつの親父、先代首領とは幼馴染みでな、こやつが小便漏らしてる頃から知っておる」


「ジジイ余計なこと言ってんじゃねえよ……ったく。まあこのジジイで十傑勢揃いだ」


そう言われてわたくしは宴をしている皆さんを見渡します。するといつの間にか盗賊の皆さんがわたくしの前に並んで片膝をついて短剣を胸に当てながらわたくしを見つめていました。


そしてその間、所々に……戦斧(バトルアックス)偃月刀(シミター)大身槍(ラージスピア)屠殺包丁(ブッチャーナイブス)丸太棍棒(グレートクラブ)戦輪(チャクラム)棘付盾(スパイクシールド)流星錘(メテオハンマー)断頭石大剣エグゼキューションソード、そして大弓(グレートボウ)、それぞれの武器を携えた十傑の方々が立って並んでいます。


――様々な姿の屈強な方たちがわたくしの目の前にずらりと揃っていました。


「これが”四〇人の盗賊フォーティバンディッツ”だ……改めて宜しく頼むぜ主」


真横で声がして振り向くと、首領が腰に手を当てて不敵な笑みを浮かべていました。


「随分落ち込んでる様だが、アンタにゃ俺達の主をやって貰わんと困るんでな」


「困る……どういう事でしょうか?」


「美味い酒や美味い飯にありつけなくなる――」


首領のその言葉が何故か可笑しくて思わず笑ってしまいました。



「分かりました。でも、ひとつだけお願いが……わたくしにその都度お酒を呑ませないで下さい、大変苦手なので……」


すると、皆さんはキョトンとした後に大笑いしました。


「わかった、主の命なら仕方ねえな……」


首領は大きく頷きました。すると、再び霧が濃くなってきて意識が遠のきます……。




――気がつくとわたくしはベッドの縁にもたれ掛かって眠っていた様で、窓から朝日が射し込んでいました。


「葬儀が終わって、そのまま寝てしまったんですね……」


不意にお腹が「くぅ」と鳴り、わたくしは桶の水で顔を洗って髪を整え一階の酒場(パブ)へ降りました。


「……あ、レティ」


ファナさんがいち早くわたくし気付きました。ファナさんの声で朝食の準備をしていたメイダさんとシオリさんもこちらを見つめています。


「おはようございます」


「お、おはよう……眠れた?」


ファナさんがとても不安げな表情でわたくしのもとへ来ました。



(昨日泣いていたのを皆さんに気付かれ……て、いますよね)



あれだけ泣いていれば当然でしょう。心配を掛けてしまったと申し訳なさで落ち込みそうになります。



(いけません、それでは余計に皆さんに心配させてしまいます……)



「はい、お蔭様で。皆さん改めてガヒネアさんの葬儀ありがとうございました、わたくしはもう平気ですから」


わたくしは笑顔でお礼を言うと、皆さん表情が和らいで見えます。



(ガヒネアさん、まだまだ拙いわたくしですが精一杯やってみますね……)



第八部「転移装置探索編」 終

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