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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第八部 転移装置探索編

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第一六八話「転移装置の発見」

――ハサラさんは乾燥した植物やキノコを手のひら大の陶器製の鉢に入れて陶器の棒でゴリゴリと砕いてゆきます。そして飲み水とは別の水袋を取り出して湧水(クリエイトウォーター)を唱え、湧き出たその水を鉢に注ぎまた擦り始めました。


「確かに、ポーションならば病気の類の大元に直接作用するものも調合できるのですよね?」


セシィの重い病気を治したのも古代の秘薬――つまりポーションでした。


「ハサラ、大いなる癒し(ラージヒール)では駄目なの?」


ウェルダさんは質問します。わたくしも、以前ファナさんの骨折をハサラさんが大いなる癒し(ラージヒール)で治療したという話は聞いていました。


大いなる癒し(ラージヒール)は最後の手段です。残念ながら今の僕では一度唱えると暫くは他の魔法が使えないほど魔力切れしてしまいますし、病気によってはやはり一時凌ぎでしかない事もあります」


その通り、大いなる癒し(ラージヒール)は治癒魔術でもかなり高度な魔法です。術者の練度や魔力量にもよりますが、骨折や病気も治療できるそうです。しかし必要とされる魔力も大きく、日に何度も唱えられるものではない様でした。


かつて、セシィの為に秘薬イリクシアを作った時にシオリさんが秘薬に大いなる癒し(ラージヒール)を施しましたが、一度唱える度に消耗し、時には気を失っている事もありました。



(魔力を消耗しすぎると眠る様に気を失いますからね――)



わたくしも魔剣の使い過ぎでその経験はあります。確かにああなると何もできなくなりますから――。


「……出来ました」


ハサラさんは薬を作っていた鉢をファナさんに差し出します。


「うえ……凄い匂い」


「苦いけど飲める?」


ファナさんは鉢を受け取ると躊躇していましたが、鼻をつまんで一気に飲み干しました。


「……ごほ……のどにしみる……」


「ほら、水も飲んで……」


ファナさんは渡された水袋を咥えて飲み干しました。


「ファナさん、大丈夫ですか?」


わたくしは心配でファナさんに声を掛けました。


「うん、大丈夫……なんか眠い」


「休んでいいわよ、どうせ貴女が治らないと動けないしね」


ウェルダさんも少し安堵した表情でファナさんに声を掛けます。そのままファナさんは寝息を立て始めました。



「少し眠くなる効果を付与しました、眠ると治癒の力が高まるので……」


確かに何よりの休息は眠る事ですね。


「レティ、どうする? ファナが目覚めるまでこのまま待つ?」


ウェルダさんがわたくしに判断を仰ぎます。依頼主はわたくしですので当然でしょう。


「本格的な移動はそうなりますが、周囲の探索はしましょうか」


食料にも限りがありますし時間も無限ではありません。並行してやれることはやっていかないといけません。



「僕がファナを見てますのでレティさんとウェルダさんでお願いします」


こうして、わたくしはウェルダさんと二人で周囲を探索します。



(まだ転移装置(テレポーター)そのものは発見してませんから、見つけておきたいものです)



通路を隈なく探索していると苔むした壁に転移装置(テレポーター)を示す古代文字の浮き彫りを見つけました。


「これです、向こうに転移装置(テレポーター)がありそうです」


わたくしが指差した方向は比較的に崩落などは少なく、照明の仕掛けも所々生きていました。


「どうやら近そうですね、ここから見えます」


三〇メートル程先に閉じられた両開きの扉が見えます。恐らくあれがそうでしょう。


「何も無ければ良いけれど……」


ウェルダさんと顔を見合わせて頷きあってから転移装置(テレポーター)に向かいました。両開き扉は高さが三メートル弱、幅は二枚合わせて同じくらい、正方形の入口です。扉に浮き彫りで「転移」と書かれています。


「えっと、開けますね?」


わたくしの言葉にウェルダさんはメイスを構えました。


入口脇に「開」「閉」という浮き彫りがあるので「開」に触れると、楽器を打ち鳴らした様な音色が何処からともなく聞こえてきて、扉が開きました。


わたくしとウェルダさんは扉の脇から中をそっと覗きますが、中には何も居ませんでした。


二人で顔を見合わせてホッと溜息をついて中に入ります。部屋は直径二〇メートル程の半球形で中央に直径1メートル、高さ二メートル程度の円柱が円形に配置されています。そのうちの一つが腰くらいの高さの金属板が埋め込まれた台座で、金属板には光る文字が表示されていました。


そうです、これは今までに見た典型的な転移装置(テレポーター)です。


「レティ、これは……」


「これが転移装置(テレポーター)です。ウェルダさんは初めてでしたか?」


「ええ、マーシウ達は何度も見ているそうだけど、私は初めてだわ……」


ウェルダさん目を丸くして部屋の中を見渡していました。わたくしは金属板の古代文字に目を遣ります。



(点検……終了……物体……検知……受ける?)



すると、扉がひとりでに閉じてゆき、石柱が青白く光り始めました。


「しまった、罠なの!?」


「いえ、恐らく遺跡が稼働したことで転移装置(テレポーター)が動き始めました」



(といいますか、途中で止まってしまったものが再び動き始めたのかもしれません……)



「何処かに飛ばされるの?!」


ウェルダさんはわたくしの手を引いて扉の方まで後退ります。


「いえ、恐らくこちらへ何かが転送されてくるみたいです……」


「転移されて……何が?」


転移装置(テレポーター)が青白く眩しい光の渦を発し、目が眩みます。


「来ます!」


ウェルダさんはわたくしの前に盾を構えて立ちはだかりました。陰になったために視界が効いたので転移装置(テレポーター)の方を見ると、四足の獣の様な物が複数確認できます。



(四足獣……いえ、大蜥蜴(ジャイアントリザード)?)



光の渦が治まり、仔馬程もあろう大蜥蜴(ジャイアントリザード)がニ体出現したのを確認しました。それらは、まるで鱗鎧(スケイルメイル)のような金属の鱗でびっしりと覆われています。


以前の転移装置(テレポーター)探索で遭遇した甲冑亜竜(アーマードレイク)を小型化したような容姿でした。


「あれは何なの?」


「分かりませんが、さしずめ甲冑蜥蜴(アーマーリザード)と言った所でしょうか……」



(と、呑気に蘊蓄を垂れている場合では無いですね……)

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