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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第八部 転移装置探索編

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第一六三話「丘陵地帯の遺跡」

――翌日、わたくし達は準備を終えて出立します。メンバーはわたくし、ウェルダさん、ファナさん、ハサラさんです。


街道を外れて大きな河を北上すると森を抜けたところに湖があり、ここで一泊。翌日、湖を迂回するように西へと進むと湿原があり、進むのに時間が掛かって途中で野営。


その翌日、湿原を抜けると小高い丘が幾つも連なる丘陵地帯に出ました。


「なんか懐かしいねえレティ」


ファナさんは額に手のひらをかざして景色を見渡しています。


「ですね、わたくしは一度来たきりでしたが……」


「まあ、何年か前まではイェンキャストの冒険者には定番の遺跡だったけれど、調査が行き詰ったのか最近はここ絡みの依頼(クエスト)もあまり見ないわね」


ウェルダさんがポツリと言いました。


この丘陵地帯の遺跡群は、幾つもの小高い丘の下に古代魔法帝国時代のものと思われる遺跡がそれぞれにあります。ただ、小規模な遺跡が幾つもある、という以外は分からず――それぞれは小規模故に既に探索されてしまっていて、もう目ぼしいものは残っていないと思われています。



――わたくし達はその中の小さな遺跡のひとつにある石室に古代の仕掛け扉らしきものを発見しました。古代文字の浮き彫りレリーフは「開」「閉」となっていて、よく見かけるものです。わたくしは見慣れているのですぐに気づきますが、これが仕掛けと思っていない人は気付くのは難しいでしょう。


(古代文字が読めなければただの模様にしか見えませんものね……)


わたくしがレリーフに触れても何も起こりません。


「壊れてるの?」


ファナさんが怪訝そうに言いって壁をコツコツとノックします。


「かもしれません。ですが周囲に何か他の装置がある可能性もあるのでもう少し調べてみましょう」



その時、遺跡の外からウェルダさんがわたくしを呼ぶ声が聞こえました。


「レティ、ここに縦穴があるんだけど……」


ウェルダさんとハサラさんが呼んでいる場所には、遺跡の周りの鬱蒼とした草を掻き分けた所に地面に亀裂のような縦穴が口を開けていました。人が二、三人通れる程度の幅です。


「ただの裂けめ(クレバス)かも――」


ウェルダさんと一緒にわたくしも縦穴を覗きます。地面から下数メートル程度は岩や土の層ですが、その下には人工の構造物の様なものが見えます。


ハサラさんが小石を拾って縦穴に落としました。その音から判断すると下は水が溜まっている様子は無く、石が硬いものに当たって跳ねる音が響きました。しかし暗くて目視で確認は難しいです。


「照明石を下に落としてみます?」


わたくしは拳で握り込める程の大きさの小石ポーチから取り出します。この小石は灯かり(ライト)の魔法に反応して光る"照明石(しょうめいせき)"という魔道具です。


「あ、それなら――レティちょっと貸して」


ファナさんが手を差し出すので照明石を渡しました、すると照明石に紐を括りつけます。


『……灯かり(ライト)……落下軽減(フェザーフォール)


ファナさんは長杖の先端を照明石に向けて魔法を唱えてから縦穴に落としました。すると、照明石は光を放ちながら明らかにゆっくりと縦穴を落ち、そのお陰で内部が照らされて観察できます。


「なるほど、ファナさん凄いです!」


「ふふーん!」


ファナさんは自慢げに胸を張ります。わたくし達は照明石に照らされる縦穴に目を凝らしました。上部の土や岩などの層が数メートル続いて、その下には石造りの人工的なものが見えます。


「やっぱり何かありますよね?」


ハサラさんは縦穴の中を見つめながら言います。


「構造物……地下迷宮(ダンジョン)かしら?」


ウェルダさんも顎に手を当ててジッと縦穴を見つめています。


「はい。どのくらいの規模かここからでは分かりませんが、その可能性が高いです」


わたくしが見解を述べると――。


「降りて確かめようよ!」


ファナさんが少し興奮気味に言いました。


「まあ、確かめるにはそれしか無いのだけれど……どうやって?」


ウェルダさんは難しい顔をしながら答えました。


「私が行くよ。降りるのは落下軽減(フェザーフォール)使うし、浮遊(レビテーション)も使えるから帰って来られるし」


確かにファナさんなら一人で降りて戻って来られるかもしれませんが、一人と言うのが危険だとわたくしも思います。


「では、わたくしもご一緒させて貰っていいですか?」


「レティが?」


ウェルダさんは少し驚いた表情をしました。


「もし、下が地下迷宮(ダンジョン)であれば古代遺物でしょうから、わたくしなら色々対処できるかと思いますので――」


わたくしの言葉をウェルダさんは頷きながら聞いていました。


「けれど、貴女たちだけでは危険よ? 魔法や魔道具では即座に対応できない事があるかもしれないし――私も行くわ」


ウェルダさんの言葉にファナさんに「うーん」と考え込みます。


「私の魔力で全員運べるかなって考えてた――まあ、行けると思うけど」


すでにファナさんは以前とは比べ物にならない程魔術師(メイジ)としての頭角を現している聞いています。


「では、全員で降りましょうか――お願いします」


わたくし達はファナさんの周りに集まります。


「ハサラ、表情硬いよ? さっきから黙ってるし……」


「あ、うん……大丈夫だよ」



ファナさんはハサラさんにそんな言葉をかけつつ、パーティー四人全員に落下軽減(フェザーフォール)の魔法を唱えました――。



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