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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第八部 転移装置探索編

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第一六一話「ギルドメンバーとの再会」

――翌日から、早速イェンキャストの冒険者ギルド連合(ユニオン)本部へ出向いて情報収集します。魔獣の目撃情報、古代魔法帝国の遺跡や地下迷宮(ダンジョン)等々……情報料は安くはありませんが、お金で時間と手間が省ける所は省いておきます。


そして、日に一度は薔薇の垣根(ロズヘッジ)に顔を出します。ガヒネアさんは「いちいち来なくていい」と仰いますが、シオリさんが「レティの話題が多いわ」と笑って言っていました。


そんな日々が幾日か続き……わたくしがギルド本部の酒場(パブ)である"小さな友の家(プチフレンズ)"で客足も落ち着いた時間にメイダさんと一緒に遅めの昼食を摂っていました。


「メイダさん、じっとしていなくていいのですか?」


「……ええ。なんかお腹の子が落ち着いてきたから、暫くは少しくらい動いた方がいいらしくてね。無理が無い程度には働かせて貰うわ」


メイダさんは普段の黒髪が、毛先半分が黒い銀髪になっていました。彼女は元々褐色の肌に銀髪なのですが、普段は虹彩の雫(プリズムドロップ)という髪色を変える魔道具を身に着けて黒髪に変えていたはずですけれど――。


「メイダさん、その髪色は……」


虹彩の雫(プリズムドロップ)は僅かだけど魔力を消耗するから、お腹の子にもし影響があるといけないと思って外してるの。染料で黒く染めてみたけどもう、吐き気とか凄くて……面倒になってそのままよ」


メイダさんはそう言いながらも、お腹をさすりつつ優しい眼をしていました。以前から神秘的な雰囲気の女性だと思っていましたが、今は慈しみ深い――そうです、長姉のナーラ姉様が子供を抱いている時の眼差しを思い出しました。


「あの、マーシウさんとはずっとそういうご関係だったのですか? わたくし全く分からなくて……」


「ううん。昔、命を助けられた事があったからずっと感謝する気持ちはあったけれど……こういう事になったのは、そうねぇ……一年半ほど前かしら?」


メイダさんはすこし気恥ずかしそうに窓の外を眺めながら言葉を続けます。


「マスターに命を救われて冒険者になるまでは、人に言えないような仕事をしてきたわ。だから、こんな人並みの事は縁が無いって思ってた……」


メイダさんは憂いのある瞳でわたくしから目線を外しながら言葉を続けます。


「でも彼――マーシウは特に何をするでもなく、たまに愚痴を言い合ったり夜にお酒を酌み交わしたり……何気なくただ寄り添ってくれていたの。ま、それでいつの間にかこうなったってわけ」


メイダさんは照れ隠しの様に小さく舌を出しておどけた様に笑い、お腹をひと撫でしました。


「確かに、マーシウさんて責任感強いですし真面目ですしパーティー組んでいても安心してリーダーを任せられる方ですよね」


わたくしは自分の思っているマーシウさんについての評価を述べました。


「なんか、第三者が手放しで褒めてるの聞くとムズムズするわね――」


少し頬を赤らめるメイダさんが珍しく、そして可愛らしく見えます。



――そんな話をしていると、酒場(パブ)の扉が大きく開きました。


「たっだいまー! やっと帰ってきたよ」


明るくて大きな声で入って来たのはギルドメンバーの一人、薄紅色の長い髪を編んで纏めた若い女性の魔術師(メイジ)、ファナさんでした。


「うえ?! レ、レティ! もう帰ってたんだ!!」


思わず立ち上がったわたくしにファナさんは飛び付いてきました。


「ファ、ファナさん?!」


ファナさんは前にお会いした時はわたくしと同じくらいの背丈と体格でしたが、もう背は頭半分位は追い越されていました。わたくしはふらついて倒れそうになります。



「あ、とっと……ごめんレティ」


「い、いえ……ファナさんすっかり背が伸びましたね」


ファナさんはわたくしと向かい合って頭頂部に手のひらを乗せて自分の背と比べました。


「そだね、背丈が出会った頃と逆になったかな?」


出会った頃はファナさんがわたくしよりも背が低かったので今では逆転しています。



(……時が経つのは早いですね)



ファナさんとそんなやりとりをしていると、再び扉が開きました。


「もう、帰るなり何を騒いでるの――あら、レティ? もう到着していたのね」


硬質の皮鎧(ハードレザーアーマー)の下に青みある光沢の細かなミリス銀の鎖で編まれた鎖帷子(チェーンメイル)を着て、騎士盾(ナイトシールド)を持った女性の戦士――ウェルダさんは金色の美しい髪を肩の辺りまで切り、以前より短くされています。


「ウェルダさん御髪(おぐし)が……」


「ああこれ? 長い髪はやはり手間でね、切っちゃったわ」



そんなふうに、わたくし達が挨拶を交わしていると遠慮がちに様子を伺いながら入ってくる方がいました――。

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