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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第七部 鑑定令嬢の日常編その二

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第一五七話「ファナと薬師の弟子3」

引き続きファナ視点です。

――動く岩石(アニメイトロック)の攻撃からハサラを庇って、私は破片を左腕に受けてしまった。


『……鎮痛(ペインリリーフ)


ハサラは私の左腕に触れながら治癒魔法を唱える。


「痛みが……?」


あんなに痛かった左腕から痛みが消えた。流石、治癒魔術の鎮痛(ペインリリーフ)だね。


「動かしちゃだめだよ? 痛みを感じにくくしてるだけだから」


確かに、腕が思うように動かせ無いし関節じゃないところから曲がってる。


「うわぁ……」


私はそれを見るのは嫌だったけど、何故か見たいという気持ちもあってチラチラと横目で見てしまう。



「すみません、何か添え木になるものを……」


ハサラの指示でアン姐が太めの枝を探してきてくれた。


「縛るもの有るかい?」


「はい、布は持ち歩いているので……」


ハサラは手際よく私の折れた左腕に枝を添えて布でしっかり巻いて首から吊り下げる形で固定してくれた。


大いなる癒し(ラージヒール)を唱えられるんですけど、僕の魔力では一度唱えるとかなり消耗するので何処か落ち着いた場所まで移動したいのですが……」


大いなる癒し(ラージヒール)!? 凄いわね、シオリ並の治癒魔術師(ヒーラー)じゃない……」


ウェルダは驚き、感心してる。


大いなる癒し(ラージヒール)は、魔力の強さや練度にもよるけど、骨折や四肢切断みたいな致命傷以外の重傷や病気、毒も治癒できる治癒魔術の中では高位の魔法だ。それだけに消耗する魔力量は相当多い。


だから、潜在魔力がかなり多い術者じゃないと消耗に耐え切れず気を失うから、正直言って大いなる癒し(ラージヒール)を唱えられるかどうかって生まれ持っての資質によるところも大きい。



(まあ、攻撃魔法でも高位のやつは同じ様なものだけどさ――)



「では、村まで戻りましょう」


ウェルダはリーダーとして指示を出す。私はアン姐に背負われて帰ることになった。



――村に戻ると、ウェルダ達が村長に報告しにいってる間に宿でハサラに大いなる癒し(ラージヒール)しで治療して貰った。


「うわ凄い、ホントに治った……って、ハサラ大丈夫?」


大いなる癒し(ラージヒール)を唱えたハサラは酷く疲れた様子だ。魔力を一度に使った時はそうなる。



(シオりんも同じ様になってたよね、確か)



「あ、うん。ちょっと休憩すれば……」


そうしていると、丁度皆が酒場に帰ってきたから食事がてらハサラに話を聞く事になった。



「私は初対面ね、神官戦士(テンプルウォリアー)のウェルダ・ウェウェルよ。彼らと同じおさんぽ日和(サニーストローラーズ)に所属しているわ、宜しく」


「ハサラ・スヴォウといいます。治癒魔術師(ヒーラー)薬師(くすし)です」



(ハサラの苗字ってスヴォウだったんだ。でも確か私と同じ孤児だよね、スヴォウさんに貰ったのかな?)



ウェルダとハサラは握手を交わした。改めてハサラを久々に見るとやっぱり出会った三年前とは印象が変わってた。ハサラの暗緑色の髪は結構伸びていて後頭部で括っている。解くと多分肩甲骨くらいまでありそう。


戦士とかじゃないから華奢な体つきで女っぽくも見える。でも、すっかり背も伸びてあたしより頭二つくらい高いし声も低くなってるし、よく見たらやっぱり肩幅とか私とは全然違う。


三年前、秘薬を探す旅の途中で出会った頃はまだお互いに子供だったけど――ハサラは薬師見習いで、私は魔術師(メイジ)のすでに冒険者として二年も活動してたからちょっと先輩ぶってたのに……。


(なによ、おっきくなっちゃって……)


なんとなくプライドが刺激されて「負けたくない」と思ってしまう自分が居る事に気付く。私だって子供の頃から大人に負けない様に、師匠で育ての親のセレス婆ちゃんに負けないくらいの魔術師(メイジ)になる、そう思って冒険者として頑張って来たからね。



まあ、それはそれとして。ハサラはこの三年間にあったことをかいつまんで説明してくれた。


「三年ちょっと前、スヴォウ師匠が完成させた古の秘薬の効果でご友人が回復されているというお手紙をレティさんから頂き、師匠と共に大変喜びました――」


そしてその少し後、スヴォウさんは病気で亡くなったみたい。秘薬をもう一度作ってみたけど、大いなる癒し(ラージヒール)が使えないのもあって、レティの時と同じ物は再現出来なかったって――。


でもスヴォウさん曰く「寿命はどうにもならない、これでいい」と。それで今から一年半前に亡くなったという事だった。


「最後に古の秘薬を作ることが出来て、そのキッカケをくれたレティさんや皆さんにはとても感謝していました。それを伝えたかったのと――師匠の最後の言いつけで、ご友人という鑑定士のガヒネアさんを訪ねてイェンキャストまで来ました」



ハサラの語った事に皆しんみりして、なんかお葬式みたいになった。



「いや、あの……皆さん、もう時間も経っていますので気にしないでください」


そう言ってハサラはフォローしてたけど、私たちは今さっき聞かされた所だからね。




――そんなこんなで別ギルドのパーティーに村の警備を引き継いで、私たちはイェンキャストに戻る事にした。

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