表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第六部 公認鑑定士編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/214

第一四五話「剣歯虎と流星錘」

――わたくし達はまず城の出口を探しに下階へと向かいます。幸いなことに、動く鎧などのゴーレムは配置されていませんでした。


「出口……単純にこの城の正門でしょうか?」


セシィの言葉を聞いて思考を巡らせました。


「……そうかも知れませんし、なにか別のものかも知れません」


古代で普段から利用していた魔道具であれば変な仕掛けは無いとは思いますけれども。



わたくし達が螺旋階段を最下階まで降りてゆくと、左右対象に扉が並ぶ、幅三メートルくらいの廊下が伸びており、その先にはエントランスホールの様な場所が見えました。


「多分あれが正面玄関ですね」


わたくしはホール奥の正面に見える、高さ二メートル以上ある両開きの扉を指差します。


「レティ、何か仕掛けや罠は無いでしょうか?」


セシィの言葉を受けてわたくしはエントランスホールや玄関扉を魔力視眼鏡(グラムサイトグラス)で調べましたが特に反応はありません。わたくし達は慎重に扉へ近づき、片側の扉を開けて外の様子を伺いました。


扉の外は地面に芝生が養生されていて扉から正面に向かって真っすぐに石畳が敷かれています。その石畳の一〇メートル程先には塀と門扉が見えます。


「恐らく出口でしょうけれど……」


わたくしが先導して扉からセシィと共に外に出ました。


「レティ、これ……」


セシィが指差したのは、玄関のすぐ横に設置されていた台座に乗った像でした。それは獅子の如き大きさの四足獣が座っている造型の青銅像です。獅子とは違うのは、たてがみが無く口から短剣程の大きな牙が伸びています。


「これは、剣歯虎(スミロドン)という怪物(モンスター)ですね、その昔中央大陸に棲息したと言われる大型の肉食獣です」


「ええ、存じています。魔法帝国時代の装飾品として剣歯虎(スミロドン)の牙に細工されたものや、頭骨が壁掛けにされていたり、毛皮の敷物にされていたり、そういう記録を文献で読みました」


セシィは興味津々に剣歯虎(スミロドン)の青銅像に触れます。


「見た目の力強さや美しさからこういう美術品のモチーフにされることも多いですよね。これは見事な造詣です、細部まで作り込まれていて今にも動きそうな……」


セシィはため息混じりに剣歯虎(スミロドン)の青銅像を軽く撫でています。


「セシィ、念の為に魔力視眼鏡(グラムサイトグラス)で調べますから少し待って下さい……」


わたくしがそう言いかけた時、剣歯虎(スミロドン)の青銅像が「メキメキ」と音を立てて動き始めました。


「ぞ、像が?!」


セシィは身体が竦んで固まっています。わたくしはセシィを庇うように肩を抱きながら距離を取り、首領の剣を抜きました。


「……牢よ開け(出て来て下さい)


わたくしが首領の剣を構えると目の前に淡く光る人影が浮び、それは四〇人の盗賊フォーティバンディッツ首領の姿になりました。



(あるじ)、気を付けな……こいつぁ動く像(リビングスタチュー)だぜ?)



動く像(リビングスタチュー)――魔力により像を動かして使役する魔道具の一種で言わば簡易的なゴーレムと言えます。像の材質は石、木、青銅など様々です。



(青銅か、ありゃ硬そうだ……おい、そろそろオメェも主に手を貸してやれや)



首領さんがそう言うと、わたくしの前に直径一メートル程の光る紋様が浮び上がり……そこから鎖に繋がった鉄球を持った人物が現れます。


薄っすら光を放ち透けて見えるその人物は――わたくしよりも少し背は高いものの、小柄な女性に見えます。しかし目つきは鋭く、拳より一回り大きな鉄球の付いた鎖を軽々と振り回していました。



四〇人の盗賊フォーティバンディッツ十傑の一人、流星錘(メテオハンマー)のファ・フォンだ)



首領はそう言うとスッと剣の中に姿を消しました。


流星錘(メテオハンマー)……確か東方大陸の特殊な武器で、鎖や縄に鉄球や刃を着けて振り回すものだったと記憶しています)


――そして、これを扱うには高い技量が必要という事も。


ファ・フォンさんは振り回していた流星錘(メテオハンマー)の鉄球を剣歯虎(スミロドン)に向けて投げつけましたが、ひらりと躱されます。鎖を手繰り寄せて鉄球を戻し二度、三度と鉄球を繰り出しますが、剣歯虎(スミロドン)は素早い動きで躱しました。


「元は青銅像なのに素早い?!」


わたくしは大きな身体の剣歯虎(スミロドン)がまるで猫の様な俊敏な動きで鉄球を躱す様に驚きました。ファ・フォンさんは鉄球の付いた鎖を振り回しながら腕や首、胴などに引っ掛けて軌道を変則的に変えて剣歯虎(スミロドン)に向けて次々と鉄球を繰り出します。


剣歯虎(スミロドン)は変則的な方向から次々と襲い掛かる鉄球を躱しきれず、その身体に命中して金属音と共に火花が散りました。青銅像とはいえ、怯んで一瞬動きが鈍りました。


ファ・フォンさんは鉄球を再び振り回して鉄球の速度を上げ、剣歯虎(スミロドン)を鉄球で何度も打ち据えました。回転により威力の増した鉄球は火花と金属音を発します。


衝撃により怯んでいる剣歯虎(スミロドン)ですが、やはり生物では無いからでしょうか――痛み等は無さそうで、直ぐにこちらに向かって来ました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ