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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第六部 公認鑑定士編

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第一四三話「不思議な城」

――浮遊感が無くなり目を開けると、石造りの建物の屋上らしき場所にいました。空はうっすらとした虹色に染まっていて、ここが尋常では無い場所であることが伺えます。


「セシィ……セシィ!」


わたくしは声を張り、セシィに呼び掛けます。周囲を見渡すと、下りの螺旋階段を見つけました。


「セシィ、何処にいますか?」


わたくしは下に向かって呼び掛けました……すると、悲鳴の様な声が聞こえます。


「セシィ!?」


わたくしは腰のベルトの首領の剣と、右手を確認します。人差し指に魔力発動体(アクチュエーター)の指輪が、中指に首領の指輪がちゃんとありました。


「身に着けたものはそのままですね……よし」


以前、転送装置(テレポーター)の調査中に獅子蟻(ミルメコレオ)が現れた件以来、わたくしは首領の剣と指輪をなるべく身に着ける様にしていましたが、功を奏した様です。


螺旋階段を急いで降りながら悲鳴のする方向を探ると……どうやらすぐ下の階から聞こえて来るようです。幅二メートル高さ三メートル程の石造りの通路の奥からセシィの声と悲鳴が聞こえてきます。わたくしは悲鳴のする方へと走ります。すると、不意に横の通路から甲冑を纏った騎士が現れました。


「きゃっ?!」


わたくしも驚いて短い悲鳴を上げてしましましたが、立ち止まり身構えます。魔力視眼鏡(グラムサイトグラス)越しに見ると鎧は魔力に包まれています。そして頭部、兜の中に魔力の塊が見えました。



(魔力が一か所にあるということは人では無い様です、恐らくあれは魔術結晶……(コア)?)



恐らくはゴーレムと思われる動く騎士甲冑は剣を振りかぶって縦に斬りつけてきました。


「駆けよ風の如く!」


風の靴(ウィンドシューズ)を発動させ後ろに跳躍して躱しました。


牢よ開け(お願いします)出でよ四〇人の盗賊(皆さん出て来て下さい)


わたくし言葉と共に、手のひら大の光る紋様が三つ浮かび、異なる形状の短剣が現れます。しかし、わたくしは短剣達にいつもと違う違和感を覚えました。短剣が現れた一瞬、それぞれに薄っすらと人影の様なものが憑いている様に見えたのです。


薄っすらとした人影はすぐに見えなくなりました。見間違いかも、と逡巡しますが今は緊急事態ですので取り敢えず後回しです。


「足止めしてください!」


わたくしが首領の剣で動く甲冑を指し示すと短剣達は甲冑を取り囲む様に飛び回り、前後左右から襲い掛かりました。甲冑は剣を振り回して短剣達を攻撃しますが、その動きに翻弄されています。


「ここをお願いしますね!」


わたくしは短剣達に頼み、通路の奥へと先を急ぎます。通路の先の大きな両開き扉が開いていて、中からセシィの声が聞こえました。


「た、助けて……やめて下さい!」


扉の中は幅五メートル、奥行き一〇メートルはある大広間です。奥には中央に玉座があり、その陰にセシィが隠れていて、三体の動く甲冑がセシィに向かって迫っています。


「皆さんセシィを助けて下さい!」


わたくしが首領の剣で前を指すと、床に直径一メートル程の光る紋様が三つ現れます。そこから現れたのは……。


「えぇっ?!」


偃月刀(シミター)を持つ坊主頭(スキンヘッド)に革製の眼帯を着けた隻眼の男性と、大身槍(ラージスピア)を持つ浅黒い肌で長い銀髪の若い男性、そして戦斧(バトルアックス)を持つ大柄な女性でした。それは何度か夢でお逢いしている人達、四〇人の盗賊フォーティバンディッツに封じられた盗賊の方々です。その身体は淡く光っていて透けて見えます。


御三方はそれぞれに動き始め、甲冑と一対一で戦い始めました。武器同士のぶつかる金属音が何度も鳴り響きます。



(ま、あいつ等ならあの程度の木偶の坊は目じゃねぇだろうよ)



わたくしの後ろから聞いたことのある男性の低い声がしました、それは頭の中に響く様な声です。驚き振り返ると、浅黒い肌に顎髭のある黒髪の不敵な表情の男性……夢で何度もお逢いしている、四〇人の盗賊フォーティバンディッツの首領が立っていました。そして、その姿はやはり淡く透けて見えます。


「え……あ、あの……」



(なんかここでは俺達の身体が見えるみてぇだな)



「あ、頭の中に声が?!」


確かに、わたくしの頭の中で首領の声がします。



(おう、(あるじ)。俺の声が聞こえるのか?)



「え……あ、あの……」



(なんか知らねえが主、ここでは俺達が見えるみてぇだな?)



「し、首領さん?」


そんなやり取りをしている間に、三振りの武器を持つ方々はその強烈な攻撃で動く甲冑をバラバラに分解していました。しかし、甲冑は、操り人形の様に再び元の全身甲冑の形に戻ります。


わたくしは近くで床に座り込んで動けずにいるセシィを、皆さんが甲冑を引き付けて下さっている間に連れて距離を置きます。


「れ、レティ? これはいったい……」


「セシィ、とにかく今は離れましょう!」


セシィは何かを言いたそうでしたが後回しにするように促して逃げることを優先しました。

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