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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第六部 公認鑑定士編

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第一三七話「転送装置についての報告」

――わたくしは離宮に参上し、皇帝陛下と宰相閣下、そしてわたくしと共に呼ばれておられたバフェッジさんことグルマイレン侯爵もおいでです。


御三方の前でわたくしは転移装置(テレポーター)の件をご報告申し上げました。陛下の手元には事前に提出したわたくしの報告書があります。急いで書いたものなので失礼が無いか不安です。


「そうか、転移装置(テレポーター)が繋がったのか! 他には、何か古代遺物は見つかっていないか?」


陛下は報告書とわたくしを交互に観ながら前のめりで、失礼ながらまるで子供の様に目を輝かせてお聞きになっていました。


「いえ、魔獣の対処と転移装置(テレポーター)の操作で手一杯でしたので……」


わたくしが答えると陛下は「ううむ、それは残念だ」と仰って、手元にある報告書に再び目を通されながら笑みを浮かべ、何かを呟いておられました。


「陛下、研究者としての血が騒ぐのは分かりますが今はお控えください。相当お顔が緩んでいますよ?」


宰相閣下は表情を変えることなく仰ります。


「緩んでる? そんな事は無いと思うが……」


陛下はご自身のお顔を手で探られます。


「陛下の事は気にせず報告を続けてくれ、公認鑑定士殿」


「おいおい、皇帝を蔑ろにするでないわ」


皇帝陛下と宰相閣下は相変わらず仲がおよろしい様です。



「まあ、冗談はさておき。レティ・ロズヘッジ、転移装置(テレポーター)で人は行き来出来る様になったということかな?」


陛下は落ち着いた表情でわたくしにお尋ねになられます。


「恐らくは可能かと存じます。しかしながら、それらは今までの事例から導き出しているものです。転移装置(テレポーター)の根本的な仕組みを理解している訳ではありませんので、今後どの様な問題が見つかるのか分かりません」


陛下は「ふむ」と呟かれると俯いて思考を巡らせているご様子です。わたくしは言葉を続けます。


「今後新たに転移装置(テレポーター)を発見したとして、魔獣が転移されてくる可能性が常にあります。ただ、今回の件で無限に沸いて出る訳では無さそうだという事が分かりましたので、今の所は地道に対処してゆくしかありません」


陛下はわたくしの言葉に顔を上げ腕組みをされました。


「確かに、危険な古代の魔獣が出てくる様な物を国内で放置は出来ん。これは帝国として取り組まねばならんな」


「私めも左様に存じます」


陛下は宰相閣下に語りかけると、閣下も頷かれました。そしてお二人で話し合っておられます。


「差し当たりすべき事は、未発見の転移装置(テレポーター)を探し出すことか。それが魔獣などを転移させるものであるなら、対処すべきだな」


皇帝陛下は今後についての大まかな方針を述べられました。


「しかし、これ以上は陛下の当初の想定よりも事が大きくなりますので、政治的な議論や手続きが必要です」


陛下のお言葉を受けて、宰相閣下がお答えになります。すると陛下は立ち上がられました。


「よし、速やかに臨時の閣僚会議を招集せよ。グルマイレン侯爵、貴公の方面からも根回しを頼む」


「承知致しました」


バフェッジさんは恭しく頭を下げました。



(わたくしなんだか場違いな感じですよね……)



「ロズヘッジ公認鑑定士は下がってよい。しかし、この件に関して後日の議会等で説明してもらう事になるかもしれん、しばらくは帝都周辺に居てくれると助かる」


陛下はわたくしにそう仰いました。


「はい、承知いたしました」


わたくしはスカートの裾をつまみ膝を曲げる淑女礼をして部屋を後にします。



――ただの趣味だった鑑定がこんな事になるなんて、鑑定に興味を持った子供の頃には想像すらしませんでした。緊張による冷たい脇汗を感じながら離宮を離れ自宅に戻ります。



(帝都周辺に居てくれると助かる――それはいつでも召集に応じられる様にしておけ、という意味でしょうね……)



自宅へ戻る馬車の中で自分なりに今後について思索を巡らせます――イェンキャスト方面の怪物(モンスター)頻出の件で、おさんぽ日和(サニーストローラーズ)の仲間達が心配ですが……向こうまでは馬車や船などで、どんなに急いでも二〇日以上掛かりますから戻っている訳には参りません。



(せめて伝書精霊(テレメント)でお手紙を出さないといけませんね)



自宅へと戻ったわたくしに、ベルエイルがお手紙が届いていると知らせてくれました。


「あの、レティ様。お手紙なのですが……ラルケイギア子爵家からです」


ラルケイギア子爵家、つまりわたくしの実家です。この屋敷と同じく帝都貴族区にあり、ここからそう遠くない距離です。


しかし、わたくし……ネレスティ・ラルケイギアとしては公式には死亡した事になっていて、今のわたくしはレティ・ロズヘッジという平民です。公認魔道具鑑定士という事で准貴族扱いをして頂いていますが、気軽に子爵家に出入りは出来ません。


封筒の封蝋にはラルケイギア家の印が捺されていて、送り名はハスティアナ・ラルケイギアと書かれていました。


「……お母様?」


封を切ってお手紙を読みます。その内容は、所有している陶器や装飾品の鑑定依頼でした。そういえば、かつて旅の途中で偶然が重なりお会いした時以来ですね。あれ以来お会いすることが叶いませんでした。



(日にちが経つと忙しくなる可能性がありますから、なるべく早いほうが良さそうですね)



わたくしは依頼をお受けする返事を書き、ベルに託しました。


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