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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第五部 古代遺跡探索編

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第一一五話「辺境の浮島」

わたくしとアンさんは朝日が登るのを見届けていました。すると、ファナさんとシオリさんが、起きてきて伸びや欠伸をしています。


「おはようございます」


わたくしが石柱の上から挨拶するとファナさんは驚き、キョロキョロと周囲を探してから上にいるわたくしとアンさんに気が付きました。


「びっくりしたぁ~ 二人共そんなとこで何やってんの?」


「高い所から周りを見てたんだよ、全員起きたら今後の事を話そっか」


わたくし達はそれぞれに朝食を摂ります。



(――と言っても保存食ですけど)



そうしているうちにマーシウさんとディロンさんも目を覚まされます。全員目を覚ましたところでマーシウさんとディロンさんは食事を摂りながら、アンさんの報告と今後の方針を話し合い、今日はアンさんが見つけた照明の灯されていた場所を目指そうということになりました。




――目的地に向かって歩いて行く道中に改めてこの遺跡を眺めていると、二階或いは三階建て程度の高さの建物が立ち並んでいます。しかしそれは無味乾燥というか、人が暮らしていたようには見えませんでした。人が暮らしていれば生活の跡というのは必ず何かしらあるはずなのですが、寝食をしていた様にみえません。住居とは思えない用途の分からない建物ばかりです。その建物の配置は規則正しく整備されたように建築されていて、道に迷うようなことはありませんでした。



(時間があればそういうのもゆっくり調べたいですが、帰る手段も分かっていないのにそれどころではありませんね……)



転移追放刑を執行されるときも転移装置(テレポーター)が気になって興味津々で見てしまい「厚顔無恥」と言われましたし、地下迷宮(ダンジョン)に飛ばされた後もゴーレムとか気になってしまいましたし、わたくしの性分なのでしょうか?



わたくしたちは休憩を挟みながら歩き、太陽が真上に来る頃にはアンさんが見つけたという照明が点いていた建物付近までやってきました。しかし昼間は照明は点いていないようです。


その建物は円筒形。周りのものよりもしっかりした造りで、この浮島のほぼ中心に位置しています。高さも近づくまでは他の建物と変わらない、三階建て程度に見えていましたが――。


近くまで来ると、大きな穴の中に建てられた塔でした。建物へは幅一〇メートル、長さ五〇メートルくらいの大きな橋が架けられていました。


「うわ、この穴……下はどれくらいまであるんだろ?」


ファナさんは恐る恐る橋の欄干にもたれて穴の下を覗いています。わたくしも覗いてみましたが、下の方は暗くて底が見えません。


ふと欄干の材質が気になりました。手触り、色、軽く叩いた時の感触には覚えがあります。


「これ、ミリス銀です」


橋の欄干がミリス銀で造られている様でした。


「ミリス銀って、古代の武器とかに使われてるやつか?」


マーシウさんは欄干をコンコンと軽く拳で叩きます。


「はい。欄干に使われているということは橋の主要な材質はミリス銀という事ですね……」



(確かに、ミリス銀は軽量で剛性柔軟性に優れて腐食や錆にも強いですから建造物には向いているとは思いますが……こんなにも当たり前に大きな建材として鋳造出来ていたのですね)



などと感心しつつ橋を渡り、建物の前に来ました。周囲を調べると壁にはめ込まれた魔術結晶と浮き彫りされた文字盤の様な物がありました。わたくしが指先で軽く触れると、再び楽器を鳴らした様な音色が聞こえて魔術結晶が淡く光り、壁が左右にスライドして幅四メートル、高さ五メートル程の入り口が現れました、やはり扉だった様です。


「やっぱこういう古代遺跡じゃレティは頼れるねえ……」


アンさんは口元はニヤリとしつつ鋭い目つきで中の様子を伺いながら、建物へ慎重に入って行きます。


扉の中は扉と同じ広さの短い通路がありました。その先は、何十人も入れそうな広い玄関の様な空間です。部屋の中央には金属板が埋め込まれた大きな台座の様な物があり、恐らく古代の装置か何かと思われます。


「またか……レティお願い」


アンさんに促されてわたくしは台座に近づきます。仲間達もすぐ後ろについてきていました。


「では触れますね――」


断りを入れてから台座の上面の文字盤に触れると、何処からか楽器を鳴らした様な音が聞こえて金属板に光る古代文字が浮かびます。


「大丈夫かレティ?」


マーシウさんが不安げな表情で言います。


「罠とかでは無いと思います……」



(そういえば、一応古代語で話しかけてみましようか?)



『すみません、どなたか居られますか?』


わたくしが古代語で台座に話しかけましたが、返答がありません。


「レティどうしたの?」


シオリさんが不安げな表情で言いました。


「あ、いえ。前みたいに古代語で会話出来ないかなと……」


独り言みたいになってしまったのでちょっと恥ずかしかったです。気を取り直して再び台座を見ると、金属板に先程は無かった文字が浮かんでいました。



【転移、稼働、開始】



「どうやら転送装置(テレポーター)の様ですけど……」


その時、急に身体が浮遊感に見舞われました。


「えっ?」


突然、眩暈(めまい)がしたかと思うと目の前が眩しくて目が開けていられません。



(これは一体!?)



程なく眩暈が治まってきたので目を開けると、周囲は真っ暗になっていました。


「マーシウさん? シオリさん? アンさん? 皆さん居られますか?」


わたくしの声が反響していますが仲間達の返事は返ってきません。一歩踏み出すと、また例の楽器を鳴らしたような音が何処からか響き、周囲は明るくなりました。


わたくしの居る場所は通路でした。幅と高さが三メートルくらいの窓の無い通路です。壁には地下迷宮(ダンジョン)で見られる照明の仕掛けが設置されていて一定間隔で通路を照らしていました。通路の先は一〇メートル程度で、少し広い空間があり、台座が見えます。



(そういえば、直前に古代装置の金属板に転送とか開始とか表示されていました……わたくしだけが転送されてしまったのでしょうか?)


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