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魔道具鑑定士レティの冒険  作者: せっつそうすけ
第五部 古代遺跡探索編

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第一〇八話「貪食な大イモリ」

貪食な大イモリ(グリーダーニュート)の襲撃を受けたわたくし達。足元が一面温水に浸っているここではファナさんの魔法、稲妻(ライトニング)火球(ファイアーボール)が適さない状況という事でしたが――どうやらファナさんは別の魔法を使ってみるということです。


凍結(フリージング)を使うから、あいつが出てきた時に足止めして!」


"凍結(フリージング)"は、任意の空間を瞬間的に凍結する程低温にする魔法です。稲妻(ライトニング)火球(ファイアーボール)より高位の魔法と聞いています。


放射型の稲妻(ライトニング)や投擲型の火球(ファイアーボール)と違い、指定した範囲を中心とした空間に効果がある魔法のようです。


「確かに。温水ごと凍結させるのも手だが、これだけ温水に満たされた場所だと効果が厳しい。ヤツがこちらを喰らいに来た時――水面から身体を出した瞬間が好機、直接その身体に喰らわせてやればいい」


ディロンさんが助言してくれました。


「よし、では俺がヤツをおびき寄せるから、アンかレティで足止めと牽制。ファナはそこに魔法を」


マーシウさん指示を出すと貪食な大イモリ(グリーダーニュート)の方を向きます。


「了解!」


ファナさんは長杖(スタッフ)を掲げて返事をしました。


「ディロンとシオリはその都度支援頼む」


マーシウさんは盾を剣の腹で打ち据えて「ガンガン」と音を鳴らしながら「こっちだデカブツ!」と大声を出しています。


すると、また水面が盛り上がり貪食な大イモリ(グリーダーニュート)がマーシウさんへと向かって行きます。


「よーし、こっちだこっち!」


音を立てるマーシウさんに大きな口を開けた貪食な大イモリ(グリーダーニュート)が身体をくねらせて突進します。


「アンさん、牽制お願いします。わたくしは止めを――」


わたくしの言葉にアンさんは「了解」と応えて矢を連続で放ちました。まず身体に刺さった矢で動きでが鈍った所に、続けて放った矢が頭部と目に刺さりました。


貪食な大イモリ(グリーダーニュート)は水気を含んだ気持ちの悪い咆哮を上げてのたうち回ります。


『……凍結(フリージング)!』


ファナさんが貪食な大イモリ(グリーダーニュート)長杖(スタッフ)を向けると、そこを中心にして瞬間的に周囲に冷気が満ちました。


貪食な大イモリ(グリーダーニュート)の体表や足元の水面は「パキパキ」という音を立てて白い霜や薄氷に覆われます。のたうち回っていた貪食な大イモリ(グリーダーニュート)も動きが極端に鈍くなりました。



(今です!)



わたくしは開いたままの貪食な大イモリ(グリーダーニュート)の口に向かって首領の剣で指し示しました。すると、召喚していた大身槍(ラージスピア)が「ぶぅん」という風切り音を上げて飛び、その大きな口の中を刺し貫きました。


貪食な大イモリ(グリーダーニュート)の喉に大身槍(ラージスピア)が刺さります。その巨体をビクリと痙攣させてから、ぐったりとして動かなくなりました。暫く見ていても動く様子はありません。


わたくしが貪食な大イモリ(グリーダーニュート)の動きが停止したのを確認してため息をつき「有難うございました」と大身槍(ラージスピア)に語りかけると、槍は煙のように消えました。


マーシウさんとアンさんも重ねて貪食な大イモリ(グリーダーニュート)の身体を突いたりして生死を確認します。


「ふう……よし、大丈夫だ」


「そりゃね、これで生きてたらびっくりするわ。外皮の凍傷エグいし口の中にあんなデカイ槍で刺されるし」


アンさんは苦笑いしています。確かにちょっと過剰な攻撃だったかもしれません。



大身槍(ラージスピア)はやはり消耗が激しいですね……)



私が疲労でため息をついていると、シオリさんが肩に手を乗せます。


「無茶は駄目よ? ……休息(レスト)


シオリさんは私に触れながら休息(レスト)の魔法を唱えます。すると、身体にある気怠さはスッと無くなりました。


「ありがとうございます」


シオリさんは微笑んで「うん」と頷くとファナさんの様子を見に行きました。



「おーい、こいつ何か吐き出してるよ……酷い匂いだし、これ獣の骨かな? げ、人骨もあるじゃん……金具とか溶けずにそのまんまだ」


アンさんが物騒な事を言っていますが、その言葉通りに貪食な大イモリ(グリーダーニュート)の大きな口から吐瀉した体液や未消化物が沢山出てきていました。


「うわぁ……武器もあるな。丸呑みにされたのか……」


マーシウさんは騎士礼を捧げて死者に祈りを捧げていました。


「金属の腐食から見て、そんなに古いもんじゃなさそうだね……あぁん、なんだこれ、宝石か? レティ、これ何かなあ?」


アンさんが吐瀉物の中から拳大の青い宝石の様なものを拾い上げて私の方に向けます。近寄って確認するとそれは魔術結晶でした。


「魔術結晶ですね、青いものは恐らく何かを制御するのに使われている事が多いですけど……」


私は陽の光にかざしてみました。結晶の中にキラキラと反射して輝く術式が見えます。ヒビも入っていないので壊れてはいない――ということを皆さんに説明しました。


「では、いつぞやの地下迷宮(ダンジョン)で嵐の原因となっていた古代装置の様なことが、この遺跡でも起こっている可能性がある、ということかもしれんな」


ディロンさんが顎に手を当てて考え込む様に呟きました。そうです、わたくしがまだ皆さんと出会って間もない頃、ギルド本部を目指している道中に立ち寄った岬の地下迷宮(ダンジョン)でそんな事がありました。その迷宮の装置は天候を操る古代装置が暴走したものだったと記憶しています。


「では、この温泉地帯の異変もこの魔術結晶が原因かもしれません。古代装置がどこかに――」


「なるほど、ではその魔術結晶が元あった場所を探す……というのが当面の目標という事でいいな?」


マーシウさんが方針を取りまとめると、皆さん同意します。


「じゃあ、ディロンは精霊探知(エレメンタルセンス)を。アンは周囲の警戒。レティは古代の仕掛けや文字とかそういうのを探してくれ。シオリとファナは何かあれば対応できるように俺の後を付いて来てくれ」



――わたくし達はマーシウさんの指示のもと、行動を開始しました。

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