番外編「副社長編」3
マッスルとレイリンは、組織所有の魔動車(三台所有。一台はウィーナ専用。もう二台は隊ごとの予約制。予約取れなかった場合はドライブドラゴンか馬車を使うか歩く)の後部座席に座り、ネオリクの町にある理想研究所へ向かっていた。
この車を予約しているのはシュロン隊である。運転席でハンドルを握るのは、シュロン隊の中核従者・メクチェート。植物系種族の魔術士だ。青地の、襟を立てた袖と裾の長い民族衣装を身に着けている。
助手席には、同じくシュロン隊の管轄従者・ローリエ。髪や鎧、アクセサリー、果ては瞳の色に至るまで、何もかもが左右赤と緑、交互のコントラストに彩られた派手な装いの女騎士だ。
ローリエとメクチェートは、長期出張中のウィーナ達のために、転移用の魔方陣マットを理想研究所に運ぶのだが、それにマッスルやレイリンも同乗させてもらった形となる。
ランセツに会うためだ。
この前の幹部会議で、ランセツが病のラムドを無理矢理ポイズンオーガと戦わせたと、問題になったのである。
問題提起したのは副社長ダオルその人である。ランセツは体調の悪い部下を休ませないブラック上司だと主張したのだ。
代理で出席した副官のレイリンが、参謀ゴルシュに非があると訴えたが、副社長・ダオルの主張と真っ向から対立した。
結局お互いが口頭での証言に頼っている上、肝心のゴルシュが会議に参加しておらず、ダオルの口から出る言葉はゴルシュからのまた聞きであることもあり、話は平行線を辿った。
レイリンは、会議の前に予め、ランセツのサインが入ったラムドの休職届けを手に入れようとしたが、書庫にはなぜか保管されておらず、探し出せなかった。
もしかしたらまだ事務所のランセツのデスクに入っているもかもしれないが、肝心の引き出しには鍵がかかっており探せなかった。
流石に隊長の引き出しをこじ開けるわけにはいかなかった。
更に言うと、レイリンに不利な要素はまだあった。
会議の途中に、ランセツ隊所属の平従者達がぞろぞろと入ってきて、「ランセツがラムドを戦場に引きずり出そうとしているのを見たことがある」という趣旨の証言を揃ってしたのである。
証言は七人分出てきた。その場ではその証言を否定する材料もなく、相手が副社長という立場もあり、流れは一気にダオル側に傾いた。
しかし、会議に参加していた幹部従者・ヴィクトやニチカゲがランセツやウィーナの意見も聞く必要があると言い、とりあえずその場での話はそこまでとなった。
特にニチカゲはこの前の道場の一件で相当副社長に不信感を持っているらしく、全面的にレイリンの味方になってくれた。
会議後、レイリンとマッスルは証言した平従者達を問い詰めたが、全員「だって本当にそう言ってるのを見たんです」の一点張りだった。
中には「そうやって部下を脅迫するんですか? あなたもランセツ殿と一緒だ!」と、逆にこちらに喧嘩を売るような口を利く者までいる始末だった。
「迷惑かけてすまんのお」
マッスルが言った。
「私達は別に構わないわ。でも変な隊長持つと大変ね」
助手席のローリエが言う。
「いや、それはちゃうで」
「副社長達の言ってることがおかしいのよ!」
マッスルとレイリンが若干声を荒げた。
「そんなの、こっちに言われたって何が真実かは分かんないわよ」
ローリエが反論した。確かに当事者でなければそう思われても仕方がない。
そんな話をしていると、急に車がガクンと揺れ、車体が斜めに沈んだ。
「うおっ!?」
マッスルが窓を見ると、景色が動いていない。タイヤが回る音がするが、その場で止まっている。
「ちょっとメク、どうしたのよ!?」
ローリエが窓を見ながら言う。
「すみません、ぬかるみにはまりました」
「もう、何やってんのよ! 鈍臭いわね!」
ローリエが顔をしかめた。
「すみません」
メクチェートが困惑してアクセルを踏み込むが、車輪は空転するばかりで蒸気を上げ、まともに走らない。
「ちょっとメク! どーすんのよ!」
ローリエがいらつき始めた。
「ワイに任しとき」
マッスルがドアを開けて外に出た。そして車体後部をがっしりとつかんで腰を深く落とす。
「筋肉は……裏切らああああんっ!」
マッスルは車体後部を思いっきり持ち上げると、車は勢い余って車の尻から前方に倒れ、ひっくり返った。
「うわああっ!」
「キャーッ!」
車から三人の悲鳴が響くと共に、車から真っ黒な蒸気が吹き上がった。
慌てて車から脱出する三人。
「マッスルあんた何やってんのよ! 馬鹿じゃないの!」
レイリンが四本の腕をそれぞれ二本ずつ組み、残った手の内の一本でマッスルを指差した。
「嘘でしょう!? もー信じられない!」
ローリエがヒステリックに言った。
「まあまあ。もう研究所はすぐですから」
メクチェートが女二人をなだめる。
「そういう問題じゃないでしょ! そもそもメクが溝にはまったりするからこんなことになったのよ!」
ローリエがメクチェートの頭部に生えた蓮の花のような器官をつかみ、ゆさゆさと頭をゆすった。
「迷惑かけてすまんのお」
マッスルが言った。
結局、ここより先は徒歩で向かうことになった。魔動車はマッスルが担いで歩いた。
◆
ネオリクの町は、王都から東の街道を一日ほど歩いた場所にある。
ウィーナが王都にある現在の屋敷に移る前に住んでいた町である。
ここにあるウィーナの旧邸は、一年程前、冥王軍の女科学者・リティカルを招いて大幅な改築が施されていた。
王都の新邸に居住と組織の本部機能を移転した後は、旧邸はときたま訪れるだけの別荘のような状態になっていたが、一年前の改築により、リティカルが管理する『理想研究所』として生まれ変わっていた。
リティカルには非常勤ながら準幹部従者として、他の幹部従者達とほぼ同格の地位が与えられた。
理想研究所は、リティカルを所長として独立した組織として運営がなされているが、創設には冥王軍の予算が投入されており、専ら軍の医療・研究機関としての役割を果たしているが、ワルキュリア・カンパニーの戦闘員や一般の患者も受け入れている。
リティカル自身は指揮系統上はウィーナ直属の独立部隊という位置付けになり、組織の任務も請け負うことがあった。
そんな理想研究所の地下深くに、強固な防音・防御機能が施された特殊な部屋がある。
改築後に軍の予算で作り出した施設で、ここで強化人間やバイオモンスターの性能テストをするのである。
表向きは軍の外部機関の形をとった医療施設の裏の顔であった。寧ろこの裏の顔が真の目的と言っていい。
今日もここで実戦テストが行われる。
テストと言っても、実質はデータを取り尽くして用済みとなったバイオモンスターの始末なのだが。
広大な殺風景な部屋の中、白衣に身を包む、角を生やした若い亜人系の青年が上階に通ずる階段に向けて歩みを進める。彼は理想研究所の副所長・クストである。
「所長、準備で来ましたのでお願いします」
クストは声を張り上げると、階段からコツコツとヒールの音が鳴り響き、この研究所の主・リティカルが降りてきた。
彼女自身が強化人間――。
クリオネを模した、体にぴっちりと密着する水色のバトルスーツを身に着け、その上から白衣を羽織っている。袖や裾から除くのは不定形モンスターと一体化した半透明な長い四肢。
そしてピンク色のショートヘアと、冥王より下された『最も強く美しい人工戦士』という命題に従って形成された美貌の顔立ち。
彼女は元々は軍研究施設の強化人間プロジェクトの副研究長という要職にあったが、ある重大不祥事の責任を取らされる形で、無理矢理強化処理を施されたのだった。
クストにとってリティカルは研究の道に入ってからできた初めての先輩であり、一貫して彼女の助手を務めてきた。
強化人間に改造されたリティカルが理想研究所を開いた際も、クストは彼女に乞われ軍籍を抜け、独立機関・理想研究所の所属になった。
そして、その後、程なくしてこれまた彼女からの熱烈なアプローチを受け、クストは彼女と男女の交際をさせてもらっている。
だが一方で、彼は表向きは理想研究所の副所長だが、実は冥王軍から強化人間となったリティカルの監視も命じられているのだった。
リティカルがクストの顔を見て微笑み、羽織っている白衣を脱いで手渡す。
白衣を脱いだことにより、高いヒールと体に密着したスーツで強調された長い四肢が姿を現した。
「お気をつけて」
白衣を受け取ったクストがリティカルの胸元に顔を近づける。バトルスーツの胸部は黒地で、豊満な胸の谷間を見せつけるように、その部分だけが露出している。
するとその露出した胸の谷間が左右にぱっくりと割れ、六枚の花びらのような触手と共に、鋭い牙が生えた第二の口が露わになる。
セクシーは一瞬にしてグロテスクに変化したが、牙がむき出しとなったその口に、クストは軽くキスをした。
六枚の透き通った花びらが、クストの首筋や茶色い髪をふわりと撫でる。
「ふふ……」
第二の口から楽しそうな笑みが漏れた。
リティカルが広大な石造りの空間に、ヒールの音を響かせる。
そして、壁面に設えてある檻が厳かな音を立てて上昇した。
そこから現れたのは、部分的に禿げ上がった紫の体毛に包まれた、冥界人の二倍はあろうかという巨体のネズミのようなモンスター。
白目をむき、不揃いな鋭い牙からは熱い唾液が滴り落ちる。
散々実験をし尽くして、もう用済みになったので、リティカルの食事と運動がてらに殺処分するのである。
醜悪な巨大ネズミが大口を開けてリティカルに襲いかかる。
彼女は背中からクリオネの左右に広がる器官のような形状の、透き通った一対の翼を展開した。
そして素早く空中に浮き上がり、そのまま滞空する。翼は淡い光に包まれ、上下に羽ばたかずとも、その存在そのものが浮力を保証していた。
リティカルが腕を振り上げると、バトルスーツごと腕が巨大ネズミに向かって伸びていき、その背中をつかむ。
その途端、ネズミの全身に激しい電撃が走り、激しい光が明滅し弾ける音が鳴り響き、魔物の悲鳴も重なる。
電撃はしばらくの間リティカルの掌から流れ続け、徐々にネズミの体が真っ白な光に包まれる。
そのままボルテージが上がっていき、終いにはリティカルの掌を起点に大爆発が巻き起こった。
爆炎の中からリティカルの腕が収縮し、元の長さに納まった。
炎と黒煙の中から、真っ赤に燃え上がるネズミが現れた。熱く燃えるネズミは、さながら火ネズミとなり、空中のリティカルめがけて飛びかかった。
リティカルは長い脚を頭上まで振り上げると、そのまま先程の腕のようにみるみる内に天を突く如く伸びていき、そのまま火ネズミの脳天に振り降ろした。
圧倒的遠心力が備わった踵落としが決まり、ネズミが床に叩きつけられる。
端で見学するクストの足元が浮き上がるほどの震動が伝わってきた。
しかしネズミが起き上がり、その口からどす黒いブレス攻撃を行う。
「強化し過ぎたか?」
ネズミのしぶとさに、クストは首をかしげた。
リティカルは空中で両腕を左右に広げると、彼女を中心に球形の光の幕のバリアが現れ、攻撃をシャットアウトする。
バリアを解除したリティカルの半透明の四肢や胸の花弁は、赤く染まっていた。
彼女の胸元の口が開き、そこに赤く光り輝く魔方陣が現れる。その魔方陣から渦巻く業火が発せられ、ネズミを飲みこんだ。
「ギャアアアア!」
先程の爆発とは比べ物にならない熱気。ネズミが炎に巻かれ床を転げ回る。
リティカルが六枚の花弁のような触手を伸ばし、燃えるネズミの首根っこを捕える。そして、そのまま高度を下げてネズミに接近していき、胸の口で首筋に喰らいついた。
「ギャアアアア!」
ネズミの断末魔。火炎はリティカルにも燃え移るがお構いなしである。そのままネズミの生命エネルギーを吸収し尽くし、痩せ細った炭クズのようにしてしまった。
吸い終わった残りカスを花弁で乱暴に放り投げると、床に打たれてバラバラに砕け散った。
「所長ー! そんなに吸うだけエネルギー残ってましたかー!?」
クストが声を張り上げると、「残ってたけど超マズイ! こんな質の悪いエネルギーじゃどーしよーもねーし!」と返ってきた。
間髪入れずに次の処分品が檻から姿を現す。
二足歩行で歩く、太古の昔冥界に生息していた巨大な大あごの竜。
取引が禁止されている希少な古代の化石を裏ルートで密輸し、理想研究所の秘密地下ラボにある生命倫理の禁忌を犯した違法設備により、不正に蘇らせたのだ。
「やっぱり勿体ないですよ! せっかくここまで育てたのに!」
クストが言う。
「表に出せないものいつまでも抱えてたって意味ねーよ。それにもうすぐウィーナ様がこちらにお出でになるんだからね。お叱り受けそうなものは今の内に整理しとかないと」
「あ、なるほど」
クストが関心して言った。
やはりこういう場面での判断力は完璧である。リティカルは今までの実験体と比べてみても、比べ物にならない程に精神的には安定している。
これなら今度軍に提出するレポートも無難に済みそうで安心だ。クストは内心胸を撫で下ろす。
どこの世界に愛する彼女を『暴走の危険あり』などとレポートに記述することを望む彼氏がいるだろうか。ましてやリティカルはクストがこの世界に入ったときから憧れの先輩だった人である。
たとえ変わり果てた姿になってしまっても、軍から彼女の管理・監視を秘密裏に命ぜられていても、その憧憬に変わりはない。
リティカルが全く安定していると言えば、実はそうでもない。
戦闘への衝動が高まり過ぎたのか、暴走とも言えるトラブルを起こしたことは何度もあるし、検査のとき、脳波の数値も危険なレベルになってたりするが、クストはその事実を偽装して報告していた。
実は、クストは軍へのリティカルのレポートを、彼女に目を通させてから提出しているのだ。もしこんなことがばれたら、理想研究所は終わりだろう。
当初は、忠実に監視役の任務をこなしていた。しかし、リティカルに想いを打ち明けられ男女の関係になってからは、クストはリティカルと共同で監視レポートを作るようになり、報告するとまずい出来事や、検査の数値は、片っ端から隠蔽していた。
これは上司であるリティカルの命令ではない。
最初はクストが自分の意思でリティカルを守るために隠蔽を始めたのであり、監視役であることもクスト自ら打ち明けた。だが、彼女は最初からそのことは見抜いていた。
報告書を偽装する代わり、暴走や精神破綻の危険性を抑えるため、クストは何とかリティカルをなだめすかし、彼女がいつも嫌がるマインドコントロールを定期的に受けてもらい、脳波を安全圏内の数値に抑えてきた。
この、リティカルに自ら調整カプセルの中に入ってもらうよう説得する過程が一番大変なのだ。最近では、クスト以外の、他の研究員の言葉ではその気にさせるのは不可能と言っていい。
だが、心なしか、クストと恋仲になってからは、精神が高いレベルで安定しているように思える。この結果に『愛情』という外的要因が影響しているかは、まだ未実証の段階だ。
「それに、元々コイツを蘇らせたのは、アタシが古代の生命エネルギーを味わってみたいからだ!」
燃えるような赤に染まっていたリティカルの四肢や花弁が、今度は茶色に染まる。
「ハアアアアッ!」
リティカルが胸の口から声を張り上げ両手を前方に突き出す。
すると、太古の竜の足元から魔力によって形成された土が盛り上がり、それは竜の両足を包んで岩のように固まった。
「グガアアアッ!」
しかし竜は足を振り上げ、強大な魔力を帯びているはずの重い岩の拘束を打ち破った。大量の瓦礫がリティカルやクストに向かって飛来する。
その瞬間、リティカルが背中の翼を光らせて目にもとまらぬスピードでクストの眼前にやってきた。
そして、瓦礫が到達する前に彼を抱きかかえて上昇する。間一髪でクストは瓦礫の直撃を免れた。
「あ、ありがとうございます!」
「効果薄いんだ……」
リティカルがつぶやいた。
クストはたまには茶色になったリティカルも見たいと思って地属性を事前にリクエストしていたのだが、裏目に出て助けられる格好となってしまった。
「ほーらクストが見たいって言うからー! だから言ったじゃん、化石から蘇ったから土系は駄目っぽいって!」
「すみません」
リティカルは選択する属性に偏りがある。大抵先程披露した、体が赤く変色する火属性や、光属性(淡い黄色)や闇属性(黒)を採用する。
他にも毒属性(紫)になって、相手をじわじわ苦しめるのも好きなようだ。反面、地属性は「地味」「ダサい」「噛ませ犬っぽい」とのことで、滅多に使わない。
「やっぱ滅びた理由を考えるとこれかな? ちょっと寒いから離れてな」
クストを抱えたままリティカルの両手が腕から分離した。その両手は浮遊したままクストを運び離れていき、リティカルと距離を置く。
一方、リティカル本体。手が分離した後の腕の断面が縦に割け、左右それぞれ三本の触手が姿を現す。
そして茶色い半透明の体色は、普段以上の濃い青に染まり、胸の口元に現れた真っ青な魔方陣からは極寒の冷気が噴射された。
「グガアアアッ!」
「逃がさない!」
竜が走って上空より襲いかかる冷気から逃れようとすると、リティカルは腕の断面から生えた六本の触手を伸ばし竜の体のいたるところに巻きつけて動きを封じた。
そして竜に冷気を浴びせ、全身を氷漬けにする。
そして、リティカルは滞空したまま、斜め下にいる竜向かって右脚を伸ばしつま先を向けた。
するとブーツの先端が自動的にめくれ上がり、腕等と同じように青く透明な足先が現れる。その足の指に備わった真っ赤な五本の足の爪(原色はオレンジだが、ペディキュアで赤く塗っている)が伸び、竜の頭部めがけて襲いかかる。
伸びた鋭い足の爪はうねりながら竜を覆う氷に突き刺さり、そこからひびを入れて頭部の氷を粉砕した。周囲に氷のつぶてが舞い散る。
「所長! それ行儀悪い! 一応女の子なんだから!」
クストが言う。
「うっせーよ! 今手ぇ塞がってんだからしょうがねーだろ! そのか弱い可憐な女の子に男守らせてんじゃねーよ!」
「すみません!」
『女の子』はともかく、『か弱い』『可憐な』は言った覚えはなかったが、クストは上司兼恋人兼憧れの先輩兼監視対象に謝罪した。
リティカルは、クストを抱えて空中を飛んでいる両手をゆっくりと下降させ彼を床に下ろす。
すると手は本体まで飛び去っていき、腕の断面に元通りくっついた。真っ青に透き通った体色は普段の無色に戻る。
リティカルは嗜虐的な笑みを浮かべ、頭部の口で舌なめずりをした。一瞬見える舌に刻まれた強化人間のナンバー。
花びらが再び開花し、竜の喉元に侵食していく。
彼女は世にも珍しい『古代の生命エネルギー』とやらを存分に味わったのだった――。