表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/26

そして……

 とうとう授業が始まった。

 授業……なんかしっくりしない。

 俺が思っていたのは数人の生徒がいる小さな塾を思い浮かべていた。

 だけど思ったよりも子どもの数が多い。

 30人以上いる。

 しかも葵までいる。


「はい先生質問!」


「トイレ行ってきていいぞ」


「ちげえよ! いきなりセクハラかよ! この淫行教師!」


「はいはい。さっさと質問しろや」


「せんせー、子どもはどうやって作るんですかー!?」


 絶対言うと思った。


「いきなりセクハラか、このボケッ!」


 俺は問答無用でチョークを投げる。


「げびゃー!」


 なぜか葵は雷のエフェクトとともに閃光に包まれる。


「ぎゃああああああああああッ! 待て……ちょっと待って! なぜにダメージ入る!?」


「それについては運営の映像で説明しよう」


 俺はあらかじめ渡されたリモコンのスイッチを入れる。

 するとプロジェクターのスクリーンが降りてきて映像が投射される。


「やあ、ナターシャ。運営だぽん」


 例のたぬきがしゃべる。


「今までぼくたちは君に甘かったと思うのぽん。だからぼくたちはチョークに電撃効果を入れたぽん」


「なんたる理不尽!」


「ちゃんと勉強をして真人間になるぽん! あとちゃんと夜は寝るぽん。それとおやつ食べ過ぎぽん」


「……ちょっと待てコラ! お前セリナだな? 中身セリナだろ!?」


 なぜかプライベートを知っているたぬきである。

 中の人は永遠の小学生女子……。


「はいはい。というわけでナターシャはおとなしくしてください。はい、サクサク始めますよ。みなさんは手元の端末で今日の課題を確認してください」


「スルー! なんたるスルー!」


「はい、ナターシャだけは数学は大学レベル。ほかの科目は大学受験レベルで行きますね。みなさんはそれぞれのペースでいきます」


「ちょ、そこは俺TUEEEさせてくれるところじゃないの? それに私は学校に戻る気なんてないっての!」


「はい、ナターシャさん。先生、君の成績見ました。お前完璧超人か? っていう成績でしたね。そりゃ嫉妬もされるわ」


「個人情報保護は? ねえ、私のプライバシーは?」


「はい、みなさん始めましょう」


「無視すんなてめえ!」


 クスクスとあちこちから笑いが漏れる。

 学年別にするほどの教師はいない。

 教師の数が足りないので最初は個人レッスンになる。

 中学生くらいまでは楽だけど、高校生になると少し難しい。

 オンラインスタディやっておいてよかった。

 俺はなんとか最初の授業をこなした。


 最初の授業が終わる。

 俺は他の先生の授業を見学する。

 プロの教師なら俺も学ぶことがあるだろう。


「はじめまして。女子小学生のOZA先生です。もう一度言いますが女子小学生です」


 はい終わった。

 一言目で終わった。

 プロジェクト終了のお知らせ。

 俺は葵が引っかき回してくれないかなと期待した。

 だが横目で見ると葵は真面目に課題をこなしている。

 てめえ、俺の時だけ妨害するんか!

 俺は軽く絶望していたが、なぜか子どもたちはスルーしている。

 誰も女子小学生発言にツッコミを入れない。

 なにこの優しい空間。

 学習アプリと教師を併用しての超省力空間。

 だが、子どもたちは黙々と課題をこなしていた。

 俺が首を傾げていると、セリナからメッセージが入る。


『第一陣は学校に行けなくなった子がメインです。学習意欲が高いので問題は起こりにくいです。……むしろ先生方が暴走しないように注意してください』


 遅えよ。

 もう暴走してるよ!

 開幕スタートダッシュで暴走してるよ!

 だが俺の心配は杞憂だった。

 子どもたちは問題を起こすことなく、授業を終える。

 先生はアホだったけど、子どもたちが賢かった。


「先生は魔法少女なの!」


「魔法少女じゃあああ!」


「魔法少女の体育教師です」


 全員一列に並べて一発ずつ殴ろうかな。

 積極的に殴りたい。

 せっかくの職場が一日で崩壊するとか悪夢そのものだわ!

 ……だが、俺の心配をよそに苦情は出ない。

 親の方もここがダメならデッドエンドと思っているのか、それとも単に変な先生で済まされたのか。

 それは俺にはわからない。

 とにかく苦情も出ず、俺も含めて変な先生たちの授業は続いたのだ。

 恐ろしいことに事故もなく。無事に。

 なぜだろう。

 自分は悪くないのに胃が痛い。

 そんなある日。事態は急変した。

 それは一通のメールから始まった。

 今どきメールで問い合わせなんて……と思いつつも未だに電話もFAXも滅んでない昨今。

 問い合わせしてくるのは官公庁か老人か。

 それは動画投稿サイトにシェアを奪われ、それでも生き残っていた前時代の遺物。

 なんとなく見ちゃう不思議なサービス。

 そう、それは地上波のテレビ局だった。

 取材させてほしいとのこと。

 一応セリナを通して本社の意向を確認する。

 すると「出演しろ」と言われる。

 顔を出したくないと返信すると、「ゲーム内でやれ」との命令が来る。

 俺は社畜。会社の命令には逆らえない。

 そしてインタビューの日がやってきた。

 仮想空間でいつものアバターで待つ。

 すると前時代に流行した、ひと目でイラッとする意識高そうなサラリーマン風アバターの男がやってくる。

 顔に自信が溢れている。

 なんだろうか。意味もなく殴りたい。

 100%コンプレックスからの理不尽な暴力を見せつけたい。

 人権を踏みにじってやりたい。

 ……だめだ。葵の悪い影響が出ている。

 男はテカテカした日焼けで黒くなった顔で言った。


「こんにちは。はじめまして。中村です。今日は急成長を遂げるメタリックゲームスの新事業の中核メンバーにして、社長令嬢の婚約者。熱血スーパーティーチャーケイさんにお話を聞きたく参上しました!」


 ……はい?

 誰だそいつ?

 俺は思わず後ろを見た。

 俺の後ろにスーパーティーチャーがいるかも!

 だけどそこはいつもの白い部屋。

 セリナが悪巧みした形跡もない。


 いったいどういうことだ?

 なぜ葵の話が外部に漏れてる?

 いやその前に婚約者って話は冗談じゃ!?


 俺は困惑した。

 葵が外堀から埋めてくるとは考えにくい。

 会社も俺の逮捕コースは考えてないだろう。

 つまりどういうことよ?

 そしてここから話は予想もしない方向へ突き進んでいくのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ