11.光と影
「…お……い…だ………か…」
(ここは…どこだろう…真っ暗で何も見えない…体が重くて動けない…死んじゃったんだろうな…やっと死ねたんだ…もう…起きたくないな…)
「おい…だ…じょう…か…」
(何か聞こえる気がする…そんなことありえない…はずなのに…見えないはず…見えてるとしたら…こんな醜い姿見せたくないな…早くどっかいって…)
「おい、おい、大丈夫か?」
『ん…』
(なんで私を起こすの…静かに死なせてよ…)
目の前には、星羅と同じぐらいの年の青年がいた。
「起きたか?」
『なぜ…我が…見える…なぜ…我を…起こした…このまま死にたいんだが…それとも…お前が我を…殺すのか…』
(それともまだ、私には救わなければならない世界があるの?)
「見えるってお前がか?当たり前だろ。
助けた理由は、助けたかったからだ」
(醜い私を助けたいだと?頭がおかしいんじゃないか?)
『なぜだ?』
「理由なんて必要か?」
『…ああ』
「何かに呼ばれた気がしたんだ。
だからここに居る。」
青年は笑った。
(笑うな。私の前で笑うな。何かにってなんだ…私は早く死にたいんだ。泣きたいんだ…って…なんで泣きたいんだ…?もう…静かに眠りたい…)
『貴様、何かに呼ばれたといったな。
人違いじゃないのか?
我はお前など呼んでない。すぐにここから立ち去れ。』
(また心臓が…いろいろなところが痛い…早くどっかに行け。見ず知らずの人に弱いところを見せたくはない。)
「それはできない。」
(早くこの痛みから解放させて。)
『なぜだ。』
「お前が辛そうな顔をしているからだ。」
『我は辛くなどない。さっさと立ち去れ。』
(痛いから、早く行けって言ってるんだ。こうなったらすきを見て逃げないとな…)
「…嘘をつくな。俺は陽光 亜樹都だ。陽光家のものだ。
俺が嘘も見破れないとでも思うのか?しかも、こんなにもの瘴気を抱えてる。
辛くないわけがないだろう。」
『我は…辛くなどない…ここで朽ち果てるのが我の宿命…我は…罪深き世界の生まれ…全ての罪を背負いし者…』
星羅の声がノイズがかかったような声になった。
「えっ…」
『我は…貴様の我の記憶を奪い去るものなり…癒しと浄化の力を持つ龍、ユインの代理、星羅…我との会話全てを奪い去れ…回ってきたすべての世界、この世界もすべてから、我との…記憶を奪い去れ…
我は求める…暗黒の世界…暗黒の世界にいざないたまえ…世界の扉よ開きたまえ…』
声が低くなりノイズが大きくなった。
光は散らばっていき消え去った。
禍々しいどす黒いオーラを発した世界の扉が出てきた。
『またな…陽光家のものよ…癒月家は、闇を抱えし家だ…我には…お前の光が眩しすぎるのだ…』