閑話 常連客のつぶやき7
とある貿易都市の、ある酒場。
ここは酒も料理も美味いと評判で、多くの人々が集まる。その中には冒険者の姿があれば、衛兵達の姿も。それだけに騒動も起こりやすいのだが。
『乾杯!!』
夜の酒場に3人の声が響いた。彼らの手には大きなジョッキ。それを打ちつけて、ぐびぐびと麦酒をあおった。口中に広がる麦酒の苦味。ピリピリとした刺激と後味のいい爽快感。一心不乱に飲み干して、各々がテーブルにカラのジョッキを置く。
『最高!!』
満足げにな表情でホッと一息。
「これがねぇと、日々やってらんない」
「そこについては同意」
「本当になぁ」
常連客である冒険者の男と女。今日はそこに、大工の男が加わった3人で飲み交わしている。普段と違う顔ぶれだが、マスターは何を言うでも無く、いつもと変わらぬ無表情で仕事に打ち込んでいた。
「にしても、職人共は難儀な奴らが多いな。お前さんもそうだが、鍛治師の若い兄ちゃんも苦労してたぜ?」
冒険者の男の言葉に、大工の男は大きくため息をつく。
「職人ってのは得てして、そういう奴らが多い。こだわりや我が強い奴ばかりさ」
「我が強い奴、ねぇ。そういえば前に超わがままな客もいたわね」
女の話に思い当たる節があったのか、冒険者の男が苦い顔をする。
「や、やめろ! あの時の事は思い出すな!」
「あの時?」
大工の男が疑問を呈すると、女はニヤニヤと笑みを浮かべて冒険者の男を指差す。
「大工のあなたは知らないだろうけど。こいつ、面白い事をしろ、ってその客に言われたのよ! 一体、何を言おうとしたのかしら?」
「うわぁぁぁぁ!! だからやめろっ! 思い出すだけで赤面モノだぁ!」
「ただ、酒精の影響じゃなくて?」
冒険者の男は、テーブルと叩き、断固拒否。
「違うわぁ!!」
こうして3人は、その日。
夜が明けるまで、飲み明かしたのだった。




