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小話③酒場の食材事情
今度は酒場でどんな騒動が!?
貿易都市にある、とある酒場。
ここでは酒も料理も美味いと評判で多くの人々が集まる。それだけに、この酒場では良くも悪くも騒動が起こるのだが……
「マスター」
「……何か」
早朝、酒場の開店準備をしていると彼を呼び止める、1人の男がいた。その男は、きっちりとした黒の正装服に身を包み、片眼鏡をかけた狐顔の男。服の胸元には金や赤、青の宝石で彩られた鳥のブローチ。片眼鏡のフチにも薔薇の細工がなされていた。
「朝早くで悪いが、店に入らせてもらってもいいかね?」
「どうぞ」
上から目線の話し方。普通の者であれば勘に触るが、このマスターには通じない。入り口扉にかけた札を裏返して、開店準備を終える。
「それでは遠慮なく」
言葉の通り、全く遠慮の無い足取りでその男は店内に入っていく。マスターもその背を追って、店に戻ったのだった。