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お妃さま誕生物語  作者: violet
番外編 帝妃レイラ
97/102

別れの時

PV200万突破!

ありがとうございます!

初めて書いた小説が、ここまで読んでいただけて、嬉しいです!


もう何度も完結としたのに、すみません。

再度、お礼として番外編を追加いたします。

リヒトールは、いつジェラルドが王位を取りに来るかと楽しみにしていた。

リヒトールとって王位は、シーリアを王妃にする為のものだった。

帝国は大きくなり、娘も息子も政略結婚のような恋愛結婚をした。

シーリアに似ている二人の娘は嫁にいって離れていき、リヒトールに似た息子は、シーリアの姪を娶った。



「父上は母上に血塗られた王冠を与えられましたが、僕はレイラに祝福の王冠を捧げたいのです」

そう言ってジェラルドは、王位簒奪に乗り気ではない。

その代わりに、王位継承の複雑で形式ばった戴冠式の計画書を出して来た。


仕方ない、リヒトールは計画書を手に取った。

波乱の時代は終わり、帝国は安定期になったのだ。大きくするばかりではないことを知っている。


それよりも問題なのは、ジェラルドだ。

ジェラルドが妃のレイラを大事なのは変わりないが、他の女の噂がある。

それでレイラに愛想をつかされるなら、それまでの男という事だ。自業自得だろう。

リヒトールが面白そうに口角をあげるのを、側近のケインズが見ていた。



ジェラルドは女性政務官の起用を推し進めていた。

能力があれば、男性だけだった部署にも配置するようになった。

オルコット・シシリー。

ジェラルドが下級政務官から取り立てて、王太子執務室の政務官になった女性政務官である。


イライジャやベンジャミン達から、ジェラルドが忠告を受けたのは1度や2度ではない。

『シシリー政務官との距離が近すぎる』

『シシリー政務官に期待させるような事をするべきではない』

『レイラの気持ちを考えろ』

『シシリー政務官には王太子の執務官の能力はない、これは贔屓(ひいき)だ』

『戴冠式の前に、トラブルは致命傷になる』

『シシリー政務官に係わるようになってから、お前は変わった』

『お前はバカか。シシリー政務官は可愛いだけの女じゃないぞ』

『シシリー政務官がレイラより執務能力が優れいると本気で思っているのか?

お前達マクレンジーの男は、妻を外に出すのが嫌いではないか。執務させないようにしているのは、マクレンジーの男だ』



美人過ぎる姉妹と妻に見慣れているジェラルドにとって、若いオルコットは適度に可愛く庇護欲を掻き立てるのだ。

執務能力が抜き出ているわけではないが、頑張っている姿に援助してしまう。

興味を持っていると自覚しているし、皇太子なのだから側妃や愛人がいてもいい、とさえ思っている。

1番はレイラだ、それは永遠に変わらない。

子供もいて、レイラと自分の絆は強いのだ。

レイラは帝妃となり、オルコットはそれを脅かす者ではないと、分かってくれるはずだ。

12年の結婚生活で、ジェラルドはレイラが全てを受け入れてくれると思っていた。



皇太子の動向は注目される、それが噂になるのは当然のことだった。

ジェラルドがオルコットの部屋から朝方出て来た、という噂まで流れている。

当然、レイラの耳にも入っていた。



その日、ジェラルドは、レイラがそこにいるとは思っていなかった。

オルコットに強請(ねだ)られ、王宮の庭園を案内しようと、執務中にもかかわらず手を引き中庭に出ていた。


そこには侍女や護衛を連れたレイラと子供達がいた。

レイラの視線が、ジェラルドとオルコットの繋がれた手に止まる。


「噂は本当だったのですね」

一言、レイラは言うと皆を連れてジェラルドに背を向けた。

レイラは、ジェラルドとオルコットの噂の信憑性を調べさせていた。その結果の正当性を、目の当たりにしたのだ。


レイラから背を向けられたという衝撃に、ジェラルドは動けないでいた。

いつも笑って欲しいと願い、誰よりも何よりも大切にしてきたレイラの声は低く、視線は冷たかった。

ジェラルドは慌ててオルコットと繋いだ手を離したが、すでにレイラの姿はなかった。


「殿下、申し訳ありません。妃殿下がお気を悪くされたようで」

いつもは可愛いく聞こえるオルコットの声が、うるさく聞こえる。

もう一度、ジェラルドの手を握ってくるオルコットの手を振り払う。

「殿下?」

オルコットの声が、甘くねっとりと聞こえ耳障(みみざわ)りでしかない。


レイラの好きな花を用意して、子供達と一緒に別邸に休養に行こうと誘おう。

湖のある北の別邸がいいか、きっとレイラも気に入るだろう。

ジェラルドの頭の中はレイラでいっぱいだ。そこにいるオルコットは風景の一部でしかない。

ジェラルドが執務室に戻る後を、オルコットが追いかける。ジェラルドは手を繫ぐどころか、オルコットを置いていく勢いで速足で歩く。




部屋に戻ったレイラの行動は早かった。

噂を耳にした時から、覚悟と準備をしていたからだ。

ジェラルドの愛だけを信じて、生まれ育ったセルジオ王国を出奔した。その愛が壊されたら、意地が残った、(みじ)めに(すが)りついたりしない。

レイラは、夫を他の女と共有するつもりなどない。

ジェラルドとレイラには二人の子供、5歳の王子ローゼスと3歳の王女モアナがいて、シーリアが可愛がっている。

レイラはジェラルドに手紙を書く。


『もう、2度とお会いするつもりはありません』

さよなら、とも書かない。

レイラはまだ27歳、やり直しができる年だ。


ローゼスとモアナの手を引き、訪れたのはシーリアの部屋だ。

「お義母様、しばらくの間、子供達をお願いします」

その言葉だけで、シーリアは全てを察した。


「レイラ、デュバルの娘である私達は、愛ゆえに国を捨て、身一つでここにいるのです。

ジェラルドがレイラは何も出来ない、と思っているのなら見返してやりなさい。

ここを出れば危険が多く、子供を連れていけないのは理解できます。

ローゼスもモアナも私が大事に育てます。

ジェラルドと他の女には触らせませんから、安心してちょうだい」

シーリアとレイラは叔母と姪である。

「侍女と護衛は連れて行きなさい。

ジェラルドと別れるつもりでしょうが、これは私からのお願いよ」


「お母様」

泣いて(すが)りつくモアナはまだ幼く、連れて行けば危険がさらに増す

それを幼くともローゼスは理解している。

「母上、僕がモアナを守ります」

泣くまい、と思っても止めどなく涙があふれだす。

幼い我が子二人を抱きしめて、レイラは泣いた。

帝位の為に置いていくのではない、帝国を出ればレイラを狙う者が出て来るだろう。

ローゼスはジェラルドの次の帝王だ。

帝国を出たレイラでは守り切れない。

子供の為に帝国に留まる事を何度も考えたが、ジェラルドと政務官を公認するような事は出来ない。


あんなにレイラ一筋のジェラルドでしたが、魔が差しました。

浮気されて、苦しまない女性はいないのです。

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