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お妃さま誕生物語  作者: violet
番外編 希望の地
96/102

タッセル内乱地の夜明け

これで完結となります。

3年の間、様々な作品を書いてこれたのも、スタートのこの作品があったからこそ。

たくさんの方が読みに来てくださり、感想や評価をいただいて、それがどれほどの励みになったことか!!

3年分の感謝をこめて。


お腹の子供なんて誰の子かわからいない、娼婦なんだから。

さすがは娼婦だな、男を誑かすのがうまい。

マクレンジ―帝国から、トーバ領に戻ったロザリンドに中傷は着いて回った。

アレンの耳にも届くほどだ。


「僕はリヒトール陛下の気持ちがよくわかるよ。

殺してしまうのが、一番効力があって、影響する」

「アレン様、ここは戦場ではないのですから」

「そうだな」

そういうアレンの目は笑ってない、ロザリンドに合わせただけだ。

ロザリンドは泣き言を言わない。

苦労した時代が長かったこともあるが、アレンと生きていく覚悟をしたのだ。


マクレンジー帝国に滞在する僅かな期間で、シーリアはアレンとロザリンドの結婚式を挙げさせた。

リヒトールの側近は、どんな嫁でも好きならいい、というのばかりだから、アレンの父親ポールもそうだ。

マクレンジー王家と側近だけの式であったが、シーリアがロザリンドの母替わりをした。

『とても綺麗な花嫁よ。貴女に幸多からんことを願っているわ』

ウィディングドレスで泣き止まない花嫁に、皆が涙した。

美しい花嫁に、アレンはもう一度恋をした。


そして、トーバ領に戻って辛い立場であろうロザリンドの、凛とした姿が綺麗で仕方ない。

まだ膨らんでないお腹をなでて微笑む姿に、癒される。




マクレンジ帝国軍も到着して、すぐにタッセル内乱地帯に鎮圧に向かうことになっている。

海からはルクティリア軍が進軍することになっている。

ジェラルドの考えは、制圧したら復興支援で人心を掌握し、隣国レルバンの統治下にすることだ。

レルバン政権は安定しており、同じく滅亡した王国をマクレンジー帝国の指導で新しく再興した経験があるからだ。

それを2年で成し遂げるのがアレンの任務。


軍と共に、イライジャやリアム、オリバー、ベンジャミンも到着した。

人払いした総領事室で最終確認をしていた時に、アレンがトーバ駐留軍の紙を広げた。

「この戦で殺したいのがいる」

アレンが次々と名前を挙げて、味方を殺してくれと言う。

その場にいたジェラルドの側近以外は、聞こえないを貫くようだ。

「ふーん、最初にやればいいの?」

オリバーが面白そうに聞くと、リアムも身体を乗り出して来た。

「それは任すよ。

誹謗(ひぼう)中傷するヤツは、能無しだからだ。

軍の士気がさがるし、ずっとお荷物でしかない」

ロザリンドを中傷した女達はすでに解雇してある。総領事の反感をかった人間を雇うところはトーバにはない。

それこそ、自分達が(ののし)った娼館ぐらいだろう。




朝陽とともにマクレンジー軍、ルクティリア軍の進行が始まった。

混在する独立軍は、数は多くともすでに諜報で本部基地を掴んであったので、叩き潰すのは時間がかからなかった。

内乱地帯全土を制圧するのに5日しかかからなかった。

掃討に時間をかけたが、肩透かしを感じるぐらい抵抗はなかった。

それだけ、疲労していたのだ。

新政権樹立を旗印に、寄せ集めの軍が生まれては潰れていく。

人は殺し合い、それでも平和を願い、敗れて、大地は荒れていった。


「アレン」

夕陽が沈もうとしている山を見ながら、荒野に立つアレンにベンジャミンが声をかけた。

「制圧した街で、凌辱(りょうじょく)しようとした兵士は、処理し終えた」

「恥さらしが!

首を街の外にさらしておけ。

街の人間に好きなだけ石でも投げさせろ」

「それは、リアムがした。

石も投げてたよ」

ははは、そういうヤツだよ、と二人の笑い声が響く。



アレンはトーバ・タッセル統治総領事となり、内乱で残った建物を臨時庁舎としてスタートした。

終戦後、すぐにマクレンジー帝国の研究員が入り、農地改革や医療が始まっており緑も増えてきていた。

4か月後、正式な庁舎が建ち、厳重に警備された馬車が前に停まった。

すでにたくさんの人々が迎えに出ており、その中にはアレンもいた。

扉が開き、アレンが手を差し出すとお腹の目立つロザリンドが降りて来た。

トーバ総領事館から、引っ越して来たのだ。

「ロザリンド、待っていた」

お腹に気を付けて、慎重にロザリンドを抱きしめるアレンは笑顔で、周りの者も滅多にみない表情に和んでいた。

アレンが、身重のロザリンドの身体が冷えないように建物に入ろうとした時に、ロザリンドの足が止まった。


ロザリンドは、そっと膝まついて、地面に手をはわした。

そのまま、ゆっくり、地面にキスをした。

「ただいま」

小さく言った言葉は、ロザリンドの奇行に息を止めて見ていた人々の耳に届いた。

「ロザリンド・ウィスバル、ただいま戻りました」

それは、攫われる前のロザリンドの名前なのだろう。

アレンも同じように、膝まつき手を地面についた。

「アレン・マロウは、ロザリンド・ウィスバルを生涯愛することを、この地に誓います」

タッセルの地に。


ロザリンドに恋している、愛しいと思う。

そして、マクレンジー帝国が潰し放置したタッセルとロザリンドを重ねて、助ける事で罪を許されたい自分もいる、いびつな愛。


自分達は、父達とは違う。

ジェラルドは主君であり、仲間だ。

ジェラルドが暴走した時に、止めれるのも自分達しかいない、命かけようとも。


「ああ、そうか、夫人はタッセルの人間だった」

誰かが呟けば、長く暗い歴史を思い出して涙を流す者もいる。


アレンがロザリンドを抱き上げると、行くぞと声をあげる。

「これからだ」


ロザリンドは、アレンを見上げて幸せをかみしめていた。

涙がでそうなぐらい幸せ。



占領下は、急激に回復してきて活気づき、農業、商業が復興しだした。

工場の建設も始まると、流出していた人々が戻り始めた。


総領事夫人が男の子を出産したニュースは、喜びと共に全土を駆け巡った。


マクレンジーとタッセルの血を引く子供が生まれた。


ぞれは両国の絆のように受け入れられ、復興は更に急速に進むのだった。


最後までお読みくださり、ありがとういございました。

新しいお妃様は誕生しませんでしたが、お妃様の覚悟は少しかけたかな、と思ってます。

思い入れのある初投稿作品、読み返してみると気になる点も多いですが、勢いはすごかったです。そしてジェラルドが父親とは違う道を歩むのが、この番外編になります。

最後まで、お読みくださり、ありがとうございました。

violet

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