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お妃さま誕生物語  作者: violet
番外編 マクレンジー帝国皇太子ジェラルド
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マクレンジー帝国領トーバ

皆さまのおかげで100万PVを超えました!

本編完結、番外編も完結となっても読みに来て下さり、感謝、感激、言葉になりません!

お礼と言ってはおこがましいですが、番外編追加いたします。

少し長いですが、読んでくださると嬉しいです。

「確かにおかしいですね。」

「誰を行かすか。」

リヒトールの執務室では官僚からだされた出納長や輸出管理台帳などの様々な台帳、書類が確認されていた。

「トーバの総領事は誰だ。」

リヒトールの問いに答えるのはケインズ。

「オースチン・アルマンド。」

ああ、とリヒトールは左手の人差し指をこめかみに指して執務室の机に肘をついた。

「あいつはマクレンジー私兵隊出身のはずだが。」

「2年ほど前にルクティリア帝国から王族につながる侯爵家の姫を妻に迎えてます。」

リッチモンドから輸出した砂糖の量と、売買などで管理されるトーバ総領事で受け入れた砂糖の量がこの1・2年大きく違いが続いている。

国境を越えただけで砂糖が減っている。


「僕が行きます。」

名をあげたのはジェラルドである。

視線だけをそちらに向けてリヒトールが言う。

「ある意味、戦場より危険な場所になるであろう。」


ポールの息子のアレンを視察官、随行官僚をシュバルツの息子オリバー、護衛官をオリバーの弟のベンジャミン、アレキサンダー。

現地でトーバ駐屯軍志願兵として、ジェラルド、ウィリアムの息子イライジャ。

リッチモンドの調査にダーレンの息子のリアム、ヘンリー。

8人の少数で潜り込む事となった。



潜伏任務だ、どれぐらい離れるかわからない。

ジェラルドは私室で新妻のレイラを見つめている。

離れたくない、ずっと側にいたい気持ちは否定できない。

「レイラ、さっきからドレスを出しているようだが、何しているの?」

まぁ、とレイラが笑いながらジェラルドに爆弾を落とした。

「荷造りです。置いて行くなんて言わないでね。」

「レイラ!」

「ジェラルド、思いつめた顔してますわ。

死ぬなら一緒です。」

レイラの思い切りの良さにジェラルドは想像もしなかった言葉を聞く。

「どこに行くか知っているのか?」

「いいえ。」

「何をするのか知っているのか?」

「いいえ。」

「危険だとわかっているのか?」

「たぶん。」

「絶対に連れて行かない。」

「荷馬車に潜り込むと言う手もいいかも。」

「女は不要だ。」

「遊び女を求められるの?」

「レイラ!」

「はい。」

レイラは立ちあがると出て行こうとする。

「お義母様に護衛の女官をお願いしてきます。」

母に知れると言う事は父に知れると言う事だ。

「待て!レイラ!」



そして全員の知れるところとなった。

大笑いをしているのはイライジャだ。

「すごいな。」

考え込んでいるのはアレン。

「いいかもしれませんね、女性がいる方が自然に見えるでしょう。」

「なるほど。」

同感しているのはオリバーだ。

「ジェラルドは仕えている家の姫と駆け落ちしてきた騎士だな。

トーバに逃げて来て職を探している。いいな。」

「おまえらな!遊びじゃないんだぞ!」

ジェラルドが怒っても誰もひるんだりはしない。

「ジェラルド、自分の顔見た事ありますか?

皇妃様の血を引き貴公子そのものですよ。

トーバ領の兵隊など無理です。平民兵は厳しいですよ。

だが、その顔で姫を垂らし込んだならいける。」

「おまえら、ちょっと待て!」

最低な事を言われているが、的を得ている。

レイラの護衛の女官の選出をせねばならない、とベンジャミンが部屋から出て行くのをアレンが声をかける。

「3人は必要ですからね。

傷一つ付ける事も許されませんから。」

「それは僕の言葉だ!」

大声を上げるのはジェラルドである。






晴れ渡った空が続く日のとこだ。

マクレンジー帝国領トーバ総領事邸に帝国国旗が(ひるがえ)った。

「どうしたんですか?」

イライジャが聞くと側にいた先輩兵士が答えた。

「お前達は、この間の募集で入ったばかりだから知らないだろうが、本国から視察官が来る。」

「何かあったんですか?」

「視察官は領地を周っているらしい。うちの順番がきたのさ。」

へぇ、とさも納得した振りでイライジャも口を閉じて剣の練習を再開する。


すでに文官として潜入している諜報員が帝国執務室の意を受けて、兵隊増員の募集をかけた。

そこに志願して入隊したのがジェラルド、イライジャである。

その文官が不正の疑あり、と書類を執務室に送ってきたのだが、安全の為にジェラルド達にも名前も地位も知らされていない。



「ただいま。」

「おかえりなさい。」

ジェラルドがトーバの町で借りている家に帰りつくと、部屋の奥からレイラが転がり出て来た、飛びつかんばかりだ。

「いい匂いがする。」

「でしょ!

今日はお魚上手に焼けたの!」

「焦がさずに?」

「ひどーい。」

ジェラルドとレイラが笑いあって食卓を囲む。

「レイラ、手が荒れた。」

ジェラルドはレイラの指を撫でる。

「町の人達はもっと荒れているわ。貴族ってなんだろう、って考えている。

手が荒れた分だけ、ジェラルドに美味しい料理が作れる様になった証拠よ。」

ふふふと笑うレイラはすっかり下街に溶け込んでいる。

コンコン、と玄関を叩く音がする。

レイラは待つように、と指示をして用心深くジェラルドが扉を開ける。

「あら、だんなさんお帰りだったのかい、これレイラちゃんに。」

向かいに住む奥さんが差し出したのは惣菜だ。

「ありがとうございます。」

ジェラルドが皿を受け取っていると、声を聞いてレイラが駆けだして来た。

「おばさんありがとう、また教えてね。」

「あいよ。」

ジェラルドとレイラがこの地に居を構えて2週間、先週からジェラルドは兵として総領邸に勤務している。

イライジャも町の様子や、不審人物の流入、闇ルートの情報を集めに入っている。




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