結婚式
結婚の言葉に飛びついたのは母だ。
母は自分が着たウェディングドレスを持ちだしてきた。
私のウェディングドレスの準備は始まっていたが、それは王太子妃としてのもので、クチュールにある。お店にあるので、ここに持ってこさせるとバレてしまう。
結婚式ができるなんて思ってなかったし、ましてや、短い期間で秘密裏にウェディングドレスを用意するなんて無理だとあきらめていた。
好きな人のためにウェディングドレスを着るなんて夢にも思わなかった、なんて幸せなんだろう。
母のウェディングドレスにかける情熱は、着る当人よりもスゴイと思う。
よく残ってたと、感心するが、さすが王家の姫君。
とんでもなく立派なドレスだった。
小さな真珠がちりばめられてるし、長いレーンのベールも健在だった。
お母様、こんなに細かったのね、がんばって腰を締めます私!
外からお針子さん達を呼ぶわけにはいかないから、
侍女達とお母様と私でチクチク調整縫いです。
これが以外に楽しい。
女性同士おしゃべりに花が咲く。お父様との馴れ初めをきいたり、街の美味しいカフェや流行りのドレス。なんて穏やかな時間。
「シーリアがどこにても孫の最初の靴下は作って送りますから」
私のこれからの生活は今までのようにはいかないと、母の覚悟を知る。
孫を見ることはできないかもしれないと、言葉のしたに隠しているのが悲しい。
我ままな王女そのものな美女だと思っていたが、今回ちょっと母を見直しました。
希有なピンクブロンド、この美貌で王女様で、いくつになっても女の子らしい性格、世間なんてわかってないと思ってました、この人もお妃教育受けたけど、身に付かなかったって聞いてましたから。
結婚式の前夜は一緒に寝ました、母が寂しいとすねるから、誰もこの人の我ままに逆らえないのよね。
公爵家代々が受け継いできたダイヤモンドのネックレスとティアラ、イヤリング何代か前に、嫁いできた花嫁のものらしい。
母は自分が王家から嫁いだ時のパールのティアラをさせたかったらしいが父が譲らなかった。
父にこれを持って出るように言われた、せめてもとの気持ちがうれしい。
結婚式の日はきれいな晴天だった。
私達家族は時間をずらして、こっそりグレネド伯爵邸に向かった。
さすがはマクレンジー商会、なんでも手に入る。
どこかから、神父様も用意していた。内密なはずなのに、すごい花の量、壁一面の花、こっそり運びきれたのかと、不思議に思う。
今日、私は花嫁になる、望まれて好きな人の元に嫁ぐ、家族にも祝福され、これ以上の幸せはない。
父がドレスルームに迎えに来た、父のエスコートは初めてかもしれない、
「お父様、ありがとうございました。」
「・・・」
顔が恐くなった、泣くまいとしてる?
厳しい人だと思ってたけど、大切にされていたと知った、あまり会話なかったからわからなかったです、お兄様は撃甘だったけどね。
父に手をひかれ、バージンロードをリヒトール様のもとへ向かう。いつも黒い服が多いリヒトール様が白を着てる、黒い髪が映えるかっこいい、どうしよ足下が震えてきそう。
デュバル公爵家族とリヒトール様の側近達だけが見守る結婚式。
厳かな静寂、誰もかれもが厳しい顔の中で、母だけがホロホロ泣いている。
リヒトール様の瞳に私が映る。
「とてもきれいだ。私の姫君。」
ベールをあげて唇にかすかにふれる誓いのキス。
自分でも赤くなってるのがわかる。
「だって、ファーストキスだったのよ。」
リヒトール様が驚いた眼をして、ふわりと笑んだ。
12歳からアランをさけて、そういう雰囲気にならないようにしたもの。
婚約10年なら、もっといろんなことしてると思われていても不思議じゃない。
「この人と幸せになることを誓います。」
披露宴はなく、父と兄はそのまま王宮に向かった。
グレネド伯爵の言っていたとおり、隣国ブリューダル王国で革命勃発との知らせが届いたからだ。
父も兄もそしらぬ顔で革命に対応するための会議に臨む。
リヒトール様を通じて得た情報以上の情報はないだろうけど、知らぬを通すしかない。
しかし、例え馬をぶっ通しで駆けたとしても、情報が届くのが早すぎる、ブリューダルの王宮からは何日もかかるはずなのに。
この結婚式の為に情報が操られてるとしか思えない、そして操ってるのはマクレンジー商会だ。
このタイミングで情報になるように革命が起こっているとさえ思ってしまう。
明日は早くに国境に向かうために 私達は夕方になる前に寝室にはいった。
ベッドに座ればいいの?ベッドの中に入っちゃうべき?今からあれよね、どんな顔すればいいの?
もちろん知識だけはあるけど、現実には役にたたない、どうすればいいかなんてわからない。
心臓が爆発しそう・・・・
もちろんリヒトール様にはばれてる。
「シーリア、リアと呼んでも?」
「もちろん、リヒトール様」
「リヒトと」
「リヒト様好き」
「リア、私のリア、愛してるよ、もう何年も。」
結婚式のキスとは違う深いくちずけ、リヒトール様の舌が口の中に入ってきた、翻弄される。
もう、何も考えていられない。