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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
53/102

メイプ連合

各国の間に激震が走った。

タッセル王国とキーリエ王国が滅亡したのだ。


戴冠式の後、使者がマクレンジー帝国でバサールの視察や各国間での外交などの為、まだ逗留している国も少なくはなかった。

マクレンジー帝国軍が動かなかったのは確認されている、軍隊の代わりに何を動かしたのか。


皇妃の部屋に侵入しようとした両国の王子の事件を知らぬ者はいないが、帝国による報復の宣戦布告からまだ数日しかたっていない。


軍隊が動けば隠しようもない、キーリエ王宮は爆弾で破壊され、タッセル王宮は毒でやられたらしい。

どうやって王宮を壊滅させるほどの爆弾や毒を仕込んだのだ、搬送だけでもリスクが大きい、新しい兵器があるのかもしれない。

マクレンジー帝国に逗留している国は情報を集めようと画策していたが、マクレンジー私兵隊だった者達が動いたのであろうとの憶測しか得られなかった。

千人の私兵隊のうち100人が動けばわかるが、軍に入り込み1万人の軍の中の100人の私兵隊が動いてもわからない。

ましてや警備で毎日たくさんの軍人が駆り出され動いてる。



「明日、セルジオ王国に帰国する。」

兄のフェルナンデスがお茶の席でシーリアに言った。

王子二人の侵入事件の事もあり帰国を延ばしてきたが、これ以上は無理だった。

「寂しくなるわ、お父様とお母様に元気でいると伝えてね。」

フェルナンデスもアランもリヒトールがシーリアに何も教えてないとわかってる、自分ならそうするからだ。


それをわかっていない国もいるらしい、シーリアに取り入って情報や優遇を受けたい国々だ。王子達の件があるので強くにでないだけである。


メイプ連合の国々は、次は自分達の番かと怖れていた。やがて借財の返済期限がくる、メイプ連合で大きくなった軍隊を使って債務放棄させようとしていたのに、そのうちの2国は潰されてしまった。


メイプ連合はこの衝撃で分裂していた。

マクレンジー皇帝を殺してしまえばいい、やられる前にやるのだ、爆弾なら自分達にもあるではないか、今ならできる。来賓もまだ残っている事もあって警備が手薄な所があるに違いない、と主張する強硬派と皇妃を懐柔してマクレンジー帝国にすり寄ろうとする穏健派だ。



リヒトールの執務室には諜報部員が集められ、報告を受けていた。

「ご苦労だった、面白いことになりそうだな。」

マクレンジー帝国にあるブレスコ王国大使館に爆薬が運び込まれている。どんなに隠密に動こうとメイプ連合に加盟している国には多くの諜報員を忍ばせてあり、動きはリヒトールに筒抜けである。

さぁ、どうしてやろうか、リヒトールは含み笑いをしながらシュバルツを呼んだ。

借金をしないと成り立たない国などいらない、利益を生まないからな。

利益は生まなくても貸した金は返してもらわねばならない、金がないなら代価で。それは何がいいかな。

「どこかに警備の穴は作れるか、誘導しろ。」



「皇妃が兄のセルジオ王国宰相補佐官と王太子の帰国の見送りに出てくる。侍女が多くつくため、警備が遠回りでしかつけないようだ。警備は多いが人質は取りやすい。」

「その情報は信じられるのか、宮殿内の侍女達からだろ?」

「宰相補佐官も王太子も独身で婚約者はいない、容貌もいい。特に宰相補佐官は皇妃の兄だけあって美貌の主だ、一気一動侍女達の注目の的になっている。帰国は大問題だろう。」

ブレスコ大使館では、トーバ王国との密談が行われていた。

「爆弾で皇帝も王宮も壊してやる。」



早朝にフェルナンデスとアランはシーリアに見送られマクレンジー帝国を発った、それは人目を忍ぶようにひっそりとした旅立ちであった。




シーリアは大きな音で窓を見た、午後は絶対に部屋から出ないように言われてる。

兄にもアランにも侍女の側を離れないように厳しく言われた、あのグーパンチ以来信用がない。普通にしていても猫を被っていると思われているらしい、理不尽だ。



王宮前の広間には馬車が2台と数多くの女性達がいる。

ここは戴冠式の時、民衆であふれた場所だ。あの時、王宮前広場から広大な城門前広場を抜けても群衆が埋め尽くしていた。


銀色の髪を目指して男達は剣を手に突進した。

女性達の中央先頭に銀の髪が見える、あれを人質に取ればと近づいて気付く。遠くからではわからなかったが、女性達の体格がいいと思った時は遅かった。ドレスを纏った男達が剣を取る、邪魔なドレスを引き裂いているものもいる。

豪奢なドレスを着た銀の髪の騎士が剣を振りかざすと、髪に挿した花飾りが乱れ散った。

「罠か!」叫んだ時には斬られていた。銀の髪が皇妃だと思い込まされていた、銀の髪の人間は他にもいるのだ。

城門の外で爆音が響いて地面が一瞬揺れると煙が立ち昇った。

「爆弾を使えなかったね、運ぶ途中で襲撃されては。」

残念だねと誰かが言う。

「国を守るんだ、お前達に壊されてたまるか!」

ブレスコの騎士もトーバの騎士も思いは一つだ、国を守る、この空の続く故郷には家族がいる。国を守りたい、家族を守りたい。

誰もがこんなところで終わっていい命ではないのだ。

けれども、力の差は明白である。爆弾という援護射撃のなくなった連合の騎士達は、次々と倒れていく。

広間に潜ませていたマクレンジー帝国兵士達も駆けつけ、雌雄は決した。




バサールに来ていた市民達も突然に響いた爆音に騒然としたが、わかっていたかのような警備の誘導に大きな騒ぎにはならなかった。

爆弾に火をかけるところも国民に被害の少ない城門前広場と決められていた。出入り禁止の人払いをしていたので、城門や城壁に多大な被害がでたが、それだけだった。



血に染まった広場を眺めながら、

「誰をブレスコとトーバに派遣しようか、開戦だな。」

リヒトールが呟く、それは死刑判決であった。

マクレンジー帝国襲撃に対する報復が両国に通達された。




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