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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
41/102

動乱

リヒトールは商人時代、各国の王に謁見してます。

それは売買、融資等大きな金額の相手であり、駆け引きが必要な相手でもありました。

商売は、お互い利益の取り合い。相手がわからないと大損をする可能性もあるので、各国の王や執政の情報収集の為、マクレンジー商会の諜報部隊は精鋭が揃えられていました。

ルクティリア帝国との開戦は、各国に衝撃を与えた。


マクレンジー帝国の使った砲弾はかつて各国を震撼させた爆薬に違いない。

あれはその後使用されたことはなかった、やはりマクレンジー帝国となった今でも相当数を保有しているのだ、と確信させた。


マクレンジー帝国の戴冠式がせまってきてる、各国が動き出す。



「すごすぎ宝石だらけ、重いです、このマント。」

「お嬢様も戴冠されるのですから、これくらい当然です。名実ともに皇妃様となるのですから。」

アンヌの意気込みがすごい、ウェディングドレスの時もお母様と一緒にすごかった。

「リヒト様もマントだよね、かっこいいだろうなぁ、鼻血でたらどうしよう。」

顔がゆるんでしまう。

「残念です、お嬢様、見かけは極上なのに。次はドレスの試着ですから顔を引き締めてください。」

周りで他の侍女達も頷いている、普通だと思うけどなぁ。


みんなの着せ替え人形となって、たっぷり疲れた私は庭園へ逃げだした、もちろん護衛は付いてくる。


突然、護衛のジョージが前に出た途端、刃物を持った女の子が突進してきた。

ジョージが私を守り、護衛のホフマンが女の子を切り捨てた、決して捕まえようとかしない。

たいした事も知ってないし、息があると私に聞かせたくない言葉を言う事もあるからと聞いた。

「下働きの女だな、背後を調べろ。」ホフマンがもう一人の護衛に言っているのを聞いていた。

決してなくならない恨み、それがいかに深いものであるか。

私の幸せは誰よりも欲張りなもの、リヒトール・マクレンジーを望んだ。

どうしたら、私は彼女達の命に答えられるだろう。空を仰ぎ見る、いつもと同じ青い空。



「好き、リヒト様大好き。」

リヒト様が抱きしめてくれる、温かい。

「報告が来た、これで3回目だ。」

「優秀な護衛がいるから、大丈夫。リヒト様がいればそれでいいの、誰に恨まれてもいいわ。」

この人は私のものよ、ここから逃げ出したりしない、それだけは答えがでている。


それからも考えてる、なんてことはない。

人間喉元過ぎればなんとやら、あの人達はよく恨みが続くと思うわ。

凡人の私には、答えなんてみつけられないとわかった。

答えがないかもしれないのだ、自分にできることをするので精いっぱい。

で、掃除に来てる、護衛を連れて。

やっぱこの見てくれ重宝するわ、へたくそな掃除なのにありがたがられる。



シーリアは狙われている、執拗な暗殺者というにはお粗末な手足れの女達だったが。

この王宮に暗殺者が入り込むのは難しいだろう、警備の規模が違う、今回のように力のない下働きを暗殺者に仕立てるぐらいしかできまい、成功率は低いがな。

報告書を見るリヒトールの瞳の緑色が深く深く染まっていく。

単純な恨みだとシーリアは思っているらしいが、裏がわかってきた。私のリアを狙った事、思い知らせてやる。


それにしてもシーリアはかわいい、ずいぶん悩んでいたらしいが、それもバレてる。


さあ、シーリアを狙った犯人はどうしてやろう、セルジオ王国のデュバル公爵家に教えるか、以前会ったギュバハルの王は賢王だった、どうでるか。




「フェルナンデス、至急の話とは。」

「アラン、結婚の話がでているのか?」

「まだ、確定ではないが、話はでてる。」

「ギュバハル王国の第1王女ときいた、ずいぶんアランに執心のようだ。」

「あちらからの申し入れで、私もいつまでも引きずってる訳にはいかないからな。有利な条約締結もついてくる。」

「その結婚はよく考えた方がいい、成せばデュバル公爵家は宰相を降りる。」

「どういうことだ!」

「第1王女は、マクレンジー皇妃に3度暗殺者を向けているとマクレンジー皇帝から連絡がきた。報復をするので手を出さないようにと。」

「王女にそんな理由はないだろ。」

「おまえだよ、アラン。お前の心にあるものが許せないらしい。そして、気に入らなかったら殺す、という王妃になるということだ。陛下にも父が今話してる。」

アラン、女運悪すぎとフェルナンデスは思ったが、自分も他人事ではないので、口にだしたりはしない。


「この話、ギュバハル国王は知っているのか?」

「マクレンジー帝国が報復を始めたら知るだろう。」

リヒトールは、デュバル公爵家を大事にすると言った、それが今回の進言なのだろう。もし、アランが王女と婚約した後だったら、事態はもっと難しくなった。

第一、シーリアを狙ったことをデュバル公爵家は許さない。



「婚約の話がなくなったとは、どういうことです、お父様。この前は順調だと。」

ギュバハル王宮では、父王に呼ばれた第1王女が執務室に来ていた。

「それは、私が聞きたい、何故にマクレンジー皇妃を狙った。セルジオ国王から連絡を受けた。」

王女は、父の言葉にびくついた、

「殺すようになんて言ってません。」

暗殺を指示したわけではない、マクレンジーを恨む者と接触があったのだ、支援をしただけだ。

「支援だと!? 反抗組織を金銭支援したのか、なお悪い!

我が国がマクレンジー帝国に反意ありと思われてしまう。」

マクレンジー帝国はこの情報をきっと掴んでる、王は娘を見つめた。


アラン様の婚約者だった女、ずっと妬ましかった、マクレンジー皇妃の銀の髪を聞いた時にあの女とすぐにわかった。

アラン様の次は、リヒトール・マクレンジーだと、どこまでも忌々しい。しかも皇妃になるとは許せなかった。暗殺しようとするなんて思わなかった、ただ憎たらしいと言っただけだ。


「浅はかな娘を持ってしまった。マクレンジー皇帝は、決して許さないだろう。」

ルクティリア帝国の王子の失態であれほどになったのだ。暗殺を示唆したとなると、国がなくなってしまう。




「陛下、ギュバハル王からの書簡がと届いてます。」


「賢王であったな、娘と自分の首を差し出してきた。ギュバハルは属国となる、庇護下の国と戦争はできないからな。国民を守ったか。」

やはりな、とリヒトールは思う。

「戴冠式の前に、調印と処刑だ。王は統治者として残せ、娘と他の王族を処分しろ、銃の試し撃ちにちょうどいい。公開処刑にすれば、銃の存在を知らしめて抑制になるだろう。二度とシーリアを狙うものが出ないように。」

この書簡には、王の覚悟がある、賢王であるのはつらいことだな。




あわただしく調印式が行われ、ギュバハルはマクレンジー帝国の属国となった。

リヒトールはシーリアが3度狙われたので、王女の他に3人の王族を差し出すように言った。それは処刑を意味するものだった。

王と王太子、第2王子、王弟、王弟妃、王弟嫡男が自ら進み出たが、その6人以外全ての王族が処刑された。王女は最後に処刑された、王妃や妹王女達が自分のせいで処刑されるのを見せられ狂っているようだった。


処刑に使われた銃は、今までの銃と違い、飛距離が格段に伸びたことと、3連の連発銃になったことは大きな威力だと知らしめることとなった。


この処刑にリヒトールはデュバル公爵嫡男フェルナンデスの立会を許可した。これは密かに流れている、マクレンジー皇妃がデュバル公爵家の姫であるということを公認することとなった。



「これは?」

フェルナンデスは小さな包みをリヒトールに手渡した。

「母からシーリアの子供への靴下です。」

「まだ影も形もないが。」

「受け取ってください。」

「若年での出産はリスクが高い、出産はシーリアが20歳になったらだ。それまで預かろう。」

産声をあげない弟、出血が止まらない母、母の手を取り立ち尽くす父、思い出の中の情景。


6/9文字修正

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