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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
38/102

対面

仲間から連絡が来た、明日、皇帝と皇妃が謁見室で隣国エメルダ連邦の代表と会う。

執務室から謁見室に向かう警備が一番手薄になる時に実行だと。


こちらの仲間は15名、皆元貴族で剣の練習は幼い頃からしてきた腕の立つやつばかりだ、皇帝の警備は側近2名、警護4名、皇妃と侍女2名。


銀髪が揺れている、あれが皇妃か、目立つシンボルマークだ。

先頭の仲間が隠れていた部屋から躍り出た、俺も後に続く。

あの侍女だ、一瞬で見極めた、何故ここにいる。

この警護はなんだ、とんでもなく強い、俺達の方が数は多いのに、近寄れない。

側近と侍女も戦えるなんて聞いてない。


「何をしてる。」皇帝の声がした、それは俺達に話しかけるわけでなく。

「リヒト様の盾になっております。」

「私に守られておけ、前に出るな、おまえが死ぬ時は私の死ぬ時だ。先に行くことは許さん。」

あの侍女は皇妃だったのか、それであの警備か。


「金の亡者どもめ。」叫んで突進した仲間が一刀のもとに切られて倒れた。

皇妃がこちらを見た、俺を見とめたらしい、図書室でのことを覚えているのかもしれない。

一人、一人仲間が倒れて行く。


「父達の栄光は恥ずかしい行いの結果であると、何故にわからない。」

そこには行方不明になっている兄がいた。

「我々はマクレンジー私兵部隊の訓練を受けた中から警備兵に選ばれた者だ。幹部は当然であり、侍女もその中から選ばれたものがいる。お前達がどんなに人数を集めて束になっても敵うものではない。」

「兄さんこそ、そんなに金がいいのか、商人に(かしず)いて。」

「どこまでもわからないようだな、残念だ。」兄は剣を翻すと向かってきた。

弱い兄だと思っていた、昔の栄光にすがり徒党を組む俺の方が弱かったのか。

兄が家族を見限り、マクレンジーに向かったのは、弱いからではなく、強かったからかもしれないと、最後になって思う。兄は何度も俺に忠告していた、周りに流されないことの方が強いことなのに、俺はわからなかった。



「陛下こちらの処理をしますので、私はここに留まり、後で参ります。」

ポールがここに残るらしいと、シーリアはやっと理解したようだ。

目の前で乱闘が起こり、反政府組織の人間が血まみれで倒れている、震えが止まらない。

顔も真っ青になっている。

クーデター直後の宮殿には入ったが、人が切られるのを初めて見たのだろう。

「見ることはなかった、私に隠れていればよかったものを。」

リヒトールがシーリアを抱き上げながら言った。

「リヒト様の責の半分をください、と言いました。見る必要があると思いました。」

恐いだろうに、この娘は私から逃げない、その強さを愛しいと思う。



リヒトール達が去った廊下には人が集まって来た。

「マクスナー御苦労であった、つらい対面だったな。」

「いいえ、マニロウ長官。弟と道を違えた以上、これ以外の対面はありえませんでした。髪をひと房持ち去る許可をよろしいでしょうか、家族の墓に入れてやろうと思います。」

「それだけでいいのか?」

「それで全てです。」


マクスナーが髪を懐にいれたころ、ゴメス事務官が声をかけた。

「マクスナー警備に戻ってよいぞ、ここはしておくから。」

ダリルは、泳がされていたのだ、ポールの指示でゴメスが動いていた。

ダリルが自由に動くことで仲間をつる(おとり)となっていた、どこかで襲撃があるとわかっていたが、皇妃の目の前とは思わなかった。


もっと甘い警備の書類を運ばせていたのに、見なかったのかい、ポールは事切れてるダリルに話しかける。

どこも、あまそうに見えるだけで、そうじゃないけどね。

もしかしたら、皇妃を盾にしようとしたのかもしれないな、皇帝を魔王にするバカな計画だ。未だにリヒトール様の女遊びを信じて、皇妃を軽んじてるヤカラもいるってことか。


金の亡者とゲリラ達は言った、残念だなとポールは思う。

我等は信徒なのだよ、リヒトール様の。君達も立場が違ったら熱心な信徒になりえたかもしれない。

清廉潔白とは言えない偶像崇拝、きっと君達はこの魅力がわかったろう。



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