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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
37/102

反乱分子

うまく王宮に入れた。俺はダリル・マクスナーと名乗っているが、元はマックスト侯爵の次男だ。

クーデターが起こり、全ての爵位は取り上げられ、新たな爵位がそれぞれ与えられた、領地もだ。

マックスト侯爵家は取りつぶされた。財務長官だった父は処刑され、兄は行方不明だ。気の弱い兄だった、嫡男という俺にはないものを持ちながら、父が不正をしてると怯えてた。


俺の上司になるのは、アルメット・ゴメス事務官、リヒトール・マクレンジーの側近ポール・マニロウ事務長官直属の部下とはついてる。

マクレンジーと会う機会にも恵まれるだろう、その時にこそ。


事務官補佐として、マニロウ事務長官の執務室勤務となった。

重要な書類は触らせてもらえないが、これからだ。

執務室は広い、6人の事務官とそれぞれの補佐がそこで仕事をしている。長官の机もあるが、ほとんど執務室にいることはないようだ、事務長次官が取り仕切ってる。

「何をしている。」ゴメス事務官が後ろに立っていた。

「部屋の配置から覚えようかと思ってます。」

「なるほどな、まずこの書類を財務室に持って行って決済印をもらってこい、場所はわかるな。」

いかにも重要ではなさそうな、ペラペラの書類、最初から新人にはこんなものだな。

「行ってまいります。」


仕事はすぐに終わりそうだが、この機会に王宮の中の確認だ。

王宮の中はヒステン王の頃と何もかわっていない、たかが商人のくせに貴族を弾圧して、すぐに思いしらせてやる。どうせ金で集めた集団なんてすぐに仲間割れする、そこを狙えば好機はあるはず。


あれは侍女か、ヒステン王宮だった頃には見かけない顔だから、マクレンジー商会から来たやつだな。

前から、侍女3人と護衛らしき数人が歩いてくる。

そのうちの一人はとんでもない美女だが、バケツと雑巾を持ってる、金があるとあんな侍女まで手に入るんだな。

護衛までいるとは、ただの侍女ではないかもしれない、調べて仲間に渡りをつけるか。

マクレンジーの女癖の悪さは有名だから、侍女の中にもいるかもしれない。姫様にも手をつけたくせに処刑するなんて許せない。

すれ違う時に警備の視線が気になった、ただの警備か、軍隊でも上官の視線だ。


「さっき、すごい美人の侍女とすれ違ったんだけど、警備を連れてたんだ。侍女にもつけるほど物騒なのか。」他の事務官補佐に聞いてみた。

「警備、もしかして銀の髪ではなかったか。」

人の良さそうな補佐官は確認をしてきた。

「髪はアップに束ねてたのでシルバーにもブロンドにも見えたが、バケツを持って侍女服だった、ちまたで有名な皇妃じゃないだろう。」

「侍女には警備はつかないよ、もうこの国は落ち着いてきたからね。」

ああ、そうだねと心の中で同意する、俺らのようなものが王宮内部に入れる程の穴が空き始めるぐらいにね。


戴冠式は4ヶ月後になるらしい、各国要人の招待と警備の準備が始まってる。王の名乗りをあげておしまいかと思ってたと言うと、別の事務官が言った、

「商売ってのは、まともにしないと続かないんですよ、一時的に暴利を貪っても、それは破綻への序曲に過ぎない。」

こいつは、商会からきた奴だな、要注意だ。


図書室は俺らの連絡拠点の一つだ、俺のように内部に入り込んでいるゲリラ組織のものがいる、薄暗い場所が多いのでちょうどいい。

今日は入り口に警備兵がいてものものしいから、組織のやつは来ないだろう、静かに本でも読んでるかと思っていたのに、バンバン、すげー埃が舞ってくる、静かになんて読めねーよ。

「誰だよ。こんなに埃まいてるやつ。」

書棚の裏側に回ったら、いつぞやの美人侍女がハタキで書棚を叩いていた、掃除をしているらしい。

近くの侍女がすごい勢いで寄ってきたのを手で制して、

「掃除の仕方もわかんないわけ?どこのお嬢様だよ、元貴族の御令嬢か。」

と聞くと、コクリと美女がうなづく。

このクーデターで取りつぶされた貴族の娘だろう。それにしてもこれほどの美貌であったなら、デビュー前でも噂になったろうに知らないな。

「あんた先輩侍女なら教えてやれよ。」と寄って来た侍女に言った、こっちも美人だが、比べるまでもないほどの美貌だ。

「貴官には関係のないことだ、埃が舞ったのは悪かった。」先輩侍女が言う。

「セシル待って、埃をたててごめんなさいって言うべきのは私なの。ごめんなさい。」

天は二物を与えずって言うが、この美貌に鈴の鳴るような声だ、男がほっちゃおかないだろう、掃除はダメみたいだが。もめごとを避けるために警備がいるのか、警備つけて掃除に来るなよな。

美貌侍女は先輩侍女に連れられて出て行った、これでゆっくり本が読める。



「姫様には掃除はむいてません、おわかりになりましたか。」

「セシル、人間努力すれば絶対いつかはできるって。」

この前向きポジティブは尊敬するが、皇妃が掃除にむけるものではない、と侍女のセシルは思う。

警護の者達は、姫様が図書室を掃除する間、警備とみせかけて反政府組織を探っている。

姫様の突然の行動力は、どこにでもフリーパスで理由をいらないから動きやすい、クーデターが成功しても残念ながら、反抗するものはいるのだ。

ただし、姫様の安全なくして、それはできない。


部屋への帰り道の廊下で姫様の視線の先をたどれば、宮殿の裏手から楽しそうな声がする。

姫様のような若い女性の複数の笑い声、洗濯をしている下働きの女達の声みたいだ。

「セシル、大丈夫よ、守られるのが仕事だってわかっているから。」

姫様には同年代の友達っているのか、いたとしても捨ててここに来たんだろうとは思う。

「私がリヒト様のアキレス腱だって知ってるから、安全第一。

それにね、ちゃんと守られていればリヒト様っていうご褒美があるのよ。」

ふふふと笑う姫様はとても美しい、けど、友達はいなかったに違いない。



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