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お妃さま誕生物語  作者: violet
本編
35/102

再生

王宮の裏手がシーリアは苦手だ。

クーデターで亡くなった戦士達の共同墓地があるから。

どんな顔をして行けばいいかわからない、自分のせいで亡くなった。


リヒトールの言葉一つで世界は変わる、たくさんの命を犠牲にして。

犠牲があるとわかっているのに指示をする、それが必要なことだとしても恐い。犠牲なんて言うけど、結局はたくさんの人を殺す指示だ。その指示を出す要因の一つが私だってことぐらいわかってる。

私が殺させた、何百という人間を。それが敵だったとしても、私は背負っていかなければならない。

王宮の中でこの数、この国全体でみると、いかほどの数か。リヒトールは同時に地方の制圧もしている、マクレンジー商会の流通網を使えば難しい事ではなかった。


自分はリヒトールのように戦場に身を置いたわけでもなく、安全なところで守られていた。


「ううん。後ろ向きにならない、って覚悟したじゃない、頑張れシーリア。」

自分で自分に叱咤しながら、立ち上がった。

「姫様どうかされましたか?」侍女のセシルが駆け寄ってきた。

正式な戴冠式になるまで、姫様と呼びたいらしい、奥様でもお妃さまでもお嬢様でも何でもいいわ、中身は同じ私だもの。

「共同墓地に行きます。お花を用意して欲しいの。」


黒衣に身を包み、花の絶えない共同墓地に行く。女性の姿が多い、残された家族なんだろう。

リヒト様にもしものことがあったら、私もこの一人だった、きっと何もすることができず、嘆き悲しんでいた。

「石碑がほしいわ、この意味を風化しないように。」


「夫を返せ!!」大きな声が届いた、警備に取り押さえられた女性が叫んでいる。

あの姿は私だったかもしれない、

下級兵士にとって、王とマクレンジー商会が決裂したことなど知らないままにクーデターが起こったのだろう。彼らに選ぶ術などない、命じられるままに戦闘に入って亡くなった。

戦力の優勢がどちらかなんて知らされることなく、無謀な命令だったのかもしれない。

リヒトールは負ける土俵に立たない、負けないように準備をしたはず。


「時を戻すことはできないわ、だから貴女の御主人の命に恥じない皇妃になります。」

別に答える必要はなかったけど、自分自身に言いたかった。

警備兵に向かう「あなた達にも、イヤな役をさせてしまっているわ。あなた達が誇れる皇妃になります、それが何かはわからないけど、生きてる私の責任だわ。」

元ヒステン国兵士にとって、取り押さえてる女性は仲間の家族かもしれない。


この国が私の国、リヒト様と生きて行く地。

持ってきた花を墓碑に供える、私にしかできないことなんてない、私は特別な人間ではない。でも私にはリヒト様しかいない、私のために、ここにいる。

命をうばったことへの罪悪感を持ってしまうのは当然かもしれない、けれど止まってられないんだ、これがこの国の始まりなんだから。


胸をはって前を見つめる、たくさんの女性が見てる。

「それでも私達は生きて行くの、貴方達もよ。この国の国民だからよ。」

冷静になれ、私、今何が必要なのか。

「救護棟では、まだまだ人出がたりないわ、包帯を洗ったり、症状にあった食事を作ったり、手伝って欲しいの。話をしておくので、手伝ってくれる人は直接救護棟を訪ねてほしい。」

侍女のセシルを見ると、救護棟に送る手紙を用意すると言ってくれた。


私は歩いて行く、その先にリヒト様がいるから、私の後にいくたの人々が続くから。




腐敗と汚職と献金の帳簿がゴロゴロしている、商人なら倒産してる。

リヒトールはマクレンジー商会の仕事をこなしながら、国内機関の改革にのりだしていた。

商会の流通網がそのまま政府機関となり、動き出している、地方で指導者となる人間は十分に育ててあった。

他にもやることはたくさんある、不穏分子の貴族達や、水利開発、直属領土となった土地の活用。



まだまだ、処分が必要らしい、首を刎ねるから、宮殿に参上せよと言っても来る者などいないだろう。さっさと国から逃亡して欲しいぐらいだ、とリヒトールは思っていた。

どこかに逃亡ルートを作るか、わざと穴のあいた、逃亡先はどこの国にしようか。セルジオ王国はこの間の第3王子の一件があるから、しばらくはやめておこう。

復活を夢見ながら他国で野垂れ死にしてくれるのが、一番手間がかかからない、警備の増員をする程度ですむ。旗印になる王族はもういない、たっぷり踊ってくれ。


北のアルハン元伯爵領の道を拡大補強すれば、さらに北へと繋げられる。アルハンが使えないやつでよかった、すでに処分したから、すぐにできるな。

北の山脈は一大水源地だ。この山から流れる水の一つはヤムズ大河となって、各国に支流が別れていき、大きな利権を狙える。管理構造と人が問題だな、現地で使える奴はいるのか。腐敗しなかったやつが必要だ、腐敗する人間は能力のないやつが多い。


「ウィリアム、アルハンの地図と系図はあるか?」

「すぐに出せます、処刑の時に調べましたから。」

「ケインズ、軍ですぐにアルハンに出せる隊はいるか?」

「地域調査と不要人物の判断、処理を兼ねるなら、要人警護2部隊がすぐにまわせます。」

「ポール、それとは別で、西のローラン王国への穴のあいた逃走ルートを作れ、それを元貴族達に密かに流れるようにしろ。ルートの要所には間諜部隊を待機させておけ。」

「ダーレン、ローラン王国に潜むものと繋げろ、陽動が必要だ」


側近それぞれも必要な人員の確保と指示に動き出す、新しい国が機動する。


国は破壊された、再生は破壊を上回る規模で行われようとしている。


6/3文字修正

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