エメルダ外交団
巡り巡ってアランとランドルフ(第15話)の会話になりました。
どちらもシーリアの事を言っているのに、腹の探りあいをしているかのようです。
セルジオ王国のアラン王太子にその一報が届いたのは、エメルダ連邦国の外交使節団を招いての会議の最中であった。
渡された紙には一言だけ。
『ヒステン王国にクーデター勃発、ヒステン王国倒れる。』
ブリューダル王国の革命に続いて、王国が消えていく。
驚きを顔にだしてはいけない、エメルダ連邦国こそブリューダル王国の革命で誕生した国なのだから。
「何かありましたか?」
外交団のランドルフ・クレイガーから声がかかる、こいつはきっと知っているんだろうと思うがそれを口にするほど甘くない。年若いこの男がこの使節団の責任者のようだ。
「いえ、なんでもありません。」
「我が国はまだ新しく、これから整備することばかりです。
しばらくは国内に力を入れたい、来年には穀物を始め、輸出を開始する手はずになっております。
だからこそ、今のうちに友好通商条約の締結の必要があると思っております。」
私と同じぐらいの年齢だろうに、たいした度胸だ、セルジオ王国と対等にしようと言ってくる。
「失礼だが、1年そこらで、国の回復が間に合うだろうか?」
革命になるほど、疲弊しきった国民の生活はどうなると、含ませて言ってみた、さてどうでてくるか。
「言いたいことはわかっております、だが我が国は新しい国だといいましたよ。現在の国力では貴国の足元にもおよびません。
率直に言いましょう、我が国は貴国に比べて、子供の数が圧倒的に多いのですよ。
高齢者が多いと経済は、安定するが、発展期になりにくい。
子供が多いと爆発的に伸びるんですよ、我が国は子供が多いだけでなく、高齢者が少ない。
なぜなら弱い者は淘汰されましたから、革命前に。
革命前に生き残っていたのは、強い個体の大人と子供です。1年でできますよ、もうすでに復活してきています、我々は希望の下に走っているのです、2年後はどうなるでしょう?5年後は?」
若いということは、人口も生活が安定すれば急激に増えてくる、兵士が増える。
革命後数か月で、隣国に外交団を出せる政治機構ができていること自体がすでに脅威なのだ。
「すぐに回答できる事案ではありませんが、早急に検討する価値のあるものと認識しております。
陛下に進言いたします、それはお約束できます。」
「ありがとうございます、王太子殿下。」
このランドルフ・クレイガーという男は平民出身で革命で武勲をあげてのし上がってきたと聞くが、この知識、思考力に話力、ただの平民が持てるものでない。
「この後、懇親会を用意しております、国王と宰相も顔出すことになっております。
ささやかですが、食事も用意しております。」
「宰相のデュバル公爵閣下には、是非お話したいと思っておりました。」
「それはどうしてと、お聞きしても?」
「聖女様を訪ねて、公爵家の一団が来られたのです。聖女様はもういらっしゃらなかったのですが、支援物資を置いていかれたお礼を述べようと思っております。」
「聖女の話は、こちらにも伝わってきたからね。」
アランは、何かきけないかと話にのった。
「美しい姫君であらせました。そしてお優しい。」
「貴殿は聖女を見たのですか?」
「7日程一緒に過ごさせていただきました、私も教会に手伝いと警備に行きましたので。
とても賢い姫君で努力家であらせました。
教会の机を動かすことが非力過ぎてできないのですが、最初は私達に頼らず、動かす方法を考えてらっしゃいましたよ。結局、姫の警護の者が手伝っておりました。」
「警護の者がついていたのか!?」
「はい、恥ずかしながら、当時の街の治安は良いとは言えなかったので、警護がないと姫にはとても危険な地帯でしたから。」
彼女が安全であったことにほっとする。
「どうして、そんな危険なところに。」
「何を知らないか、知りたいとおっしゃってました。」
婚約破棄でシーリアの今までの生活は壊れた、私がシーリアを追い詰めたんだ。
「今はどこに?」
「誰にも言われず姿を消されました。」
やはり、何の手がかりもなかった、話を聞けただけでも進歩だが、違和感がある、
「貴殿は、聖女が消えて心配はしてないように見える。」
アランの言葉に、王太子は心配してるのかと聞きたくなる、自分が婚約破棄して貶めたんだろうと。
「お元気でいらっしゃると信じているからです。とても屈強な警護が付いてましたから。」
それはリヒトール・マクレンジーだとは言えないが、とランドルフは主を思い起こした。
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